⑫ 初デート
日曜日が来た。
当然のように、前日の夜は、全く眠れなかった。
大好きな雪子さんと、デートできるなんて、夢の様だった。
初めての出会いから、3日やそこらで、願いが実現するとか。
……ボクはもうすぐ死ぬんじゃなかろうか?
思わず、ヘンな心配をしてしまう。
ともあれ、朝9時の正門前での待ち合わせに、遅刻しないように到着出来た。
予定の15分前だったが、彼女はもうそこに来て、待っていた。
彼女のいで立ちは、白いノースリーブのブラウスに、ブルーのAラインのフレアスカート。清楚なお嬢様って感じだ。
「……ああ、綺麗だ。」ボクは、彼女に近づくなり、思わず呟いた。
「アナタ、そういう事を、シレっと言えるのね?純情そうに見えたのに、意外だわ。」
雪子さんは、そう言いながら、満更でも無い様子だった。
良かった。うっかり呟いちゃったけど、キモっ、とか思われなくて済んだみたいだ。
「有難く拝みなさいね。私のセーラー服以外の着用姿は、超が付く程の、レアなモノなんだからね!」
雪子さんは、ツンデレっぽくそう言った。
因みに、誰も興味無いだろうけど、ボクは白いTシャツに、デニムのジャケットを羽織り、下も、少し太めのジーンズのボトムスだった。
そして、首には、ペンタックスの一眼レフに、マニュアルフォーカスの、50mmのレンズを着けたモノを、ぶら下げていた。もちろん、ボクが写真部だからである……決してやましい動機は無いのだ(?)
「じゃあ、行きましょうか?」
彼女がそう言って、先に正門に向かう。
「あの……チケットは?」
ボクが、慌てて尋ねると、彼女はニッコリ笑った。
「もうここに、二人分有るわよ。さっき買っておいたの。」
「……代金は?」
「私が誘ったんだもの。奢るわよ。安価なんだから気にしないで。」
「でも……。」
「どうしても気になるなら、ランチでもご馳走してね。それで構わないわ。」
「ああ……なるほど。」
デートに不慣れなボクは、やっと納得した。
正門をくぐり抜けると直ぐ右手に、水鳥の池がある。鴨や白鳥などが泳いでいるが、彼等がどうして逃げないのか、いつも疑問に思う。
「多分、風切り羽根が、切られているのよ。ニンゲンの都合で、酷い事をするわよね?」
ボクがついつい、疑問を口にすると、彼女がそんな事を言った。なかなかの事情通だ。
酷い事と言えば、そもそも動物園という施設そのものが、ニンゲンの都合で出来ている訳だから、言い出したらキリが無いのだが……。




