3-10
ガッハッハッ!やってやったぜ!
『我魔王なり作戦』大っ成功だ!
パンイチ状態の元赤鎧どもはスタコラと敗走していく。
ふぃー!不殺達成っ!
ちゃぁーんと心の逆刃刀は機能したようだな!重畳重畳っ!
一人心配なやつ(アゴパンしてすっとんだ奴)いたけどアレも生きてて良かった!白目剥いて泡吹いてるとこ無慈悲にひん剥いたけどな!ブワッハッハッ!
ちゃあんと、俺にヘイトが向くようにも言ったし……。
魔族達を守るって宣言もしたし……。
……これでしばらくは魔族の被害は減るかな?
流石に減るよな。続けるようなら指折るって言ったし。ヴォルなんとかだってそんなにバカじゃねえだろうし。
それにしても……
「……これが、魔晶石、……なんだよな?」
赤鎧どもから奪った魔晶石。その数は三個。
どれも、赤が強い紫色。親指くらいの大きさで細長い十面体。五角錐の底面を合わせたような形で、上下の頂点は結構鋭利だ。……30度くらい?
削って整えた?もとからこんな形?
そこんとこよくわからんけど、魔物から採れる魔石は、こんな綺麗な形してねえんだよな。同じ魔物でも同じ形の魔石なんて出てこねえし、川辺の石ころみてえに丸みを帯びた変な形で、大きさもまちまち。
「こんなもんが、心臓の横にできるとか……痛くねえのかな?」
上体を反らす運動でもしたらあちこちに刺さりそう。
うへっ、想像しただけで痛えや。
……とにかくこれは、誰かの命そのもの。
その辺にポイ、は言語道断だし、……どこかで供養してやりてえな。
「とりあえずここで、我慢してくれ」
三個の魔晶石を袋に入れ、ポケットに突っ込む。
「さ、あいつらに合流しなきゃ」
ジュークとジャランにはヨグのところに行けと伝えてある。
つまりそこまでの道中で合流できるってこった。
◇
日が傾く頃、ヨグ達の集落近くまで到着した。
そこで見知った人影を見つけた俺は、ちょっと脅かしてやろうとしずーかに近づき——ポンと肩を叩く。
「ウはっ!?」
驚きの声を出し、拾っていた薪を落としてしまうゴブリンの少女——ナム。
一つに結んだ腰まである黄色い髪をブルンっと揺らして振り返った。少女っつっても見た目の話で、年は俺とおんなじ18。ってとこがいまいち信じられん。どう見ても小4くらいだろ。
「——モガッチ!?」
「いよう。ゴブ子」
「ゴブ子じゃナいよ?ナムだヨ?」
「おう、知ってる。でも呼んでやんない」
「エ!?なんデ!?」
「それは、俺がモガトシだからだ。——モガッチじゃねえ」
「エー!?愛称ってヤつだよう」
「へっへ。じゃあ俺の「ゴブ子」も愛称だ」
「エエー!?
未来の妻ダから!?そういウこと!?」
「あ、すんません。……俺、既婚者なんで」
「ウチは第二夫人でイいのにー!」
「あ、……じゃあ、ナムさん。ヨグさんはどこですか?」
「モガッチが急に他人行儀!それ嫌!
ゴブ子でいいかラー!」
「アッハッハ!
じゃあゴブ子、ヨグんところに案内してくれよ。……あと、ジューク達来てねえ?」
ナムの落とした薪を拾ってやりながら聞く。
「ジューク?来てナい。来るの?
お父さんはコっちだよー。あっちで薪割ってルの」
「あれ?追い抜いちまったかな?
まあ、俺道とか無視してたしな」
まあ、上忍ジュークがいるし、手負だけどセルゲじいちゃんもいる。ブロンもアレでなかなかやるみたいだし……。大丈夫か。BGMもいるしな。
「こっチ!あと、薪はナムが持つネっ!」とポクポク歩くナムに付いていく。
ゴブリン達と一旦別れて10日ちょっとか?さてさて、ちゃんと暮らせてるんだろうな?なんて、考えてる間に木々の合間に建物が見えてくる。煙突からは煙が上がり、確かに生活を感じる。
「おオ、魔王様!」「ほんとダ!魔王様だ!」「魔王様!ついさっき、角ウサギが獲れたんでス!食って行ってクださい!」
おお、おお。元気になっちまってまあ。
「オ父さんっ!モガッチ帰って来た!」
ナムがててっと走り出す。小脇からポロッと落ちる薪。
「おおっ!魔王様がっ!?」
野太い声。——あれ?ヨグってもっと死にかけのジイさんみたいな声じゃなかったっけ?
でも、ナムの声に明らかに反応したのは片手に石斧を持って、やたら元気そうな若ゴブリン。背はちっちぇえんだけども、見事な僧帽筋!頼れる胸板!板チョコみてえな腹筋!
若ゴブリンにナムが抱きつく。もちろん薪は途中で手放しバランバランと音を立てる。
そんなナムをひょいと肩に乗せ、歯を見せ笑う……ヨグ?
「魔王様っ!このヨグ!このとおりシっかり里を守っておりますぞぅっ!」
「え、マジでヨグ?
……えっと、おっきくなったねぇ……って!
一体何したらそんな元気になるんだよ!?」
「ブッフフフ!気づかれましタか!?このヨグの肉体美に!
朝昼晩とちゃんと食べ、力仕事をしてイたら、健康になりましたぞっ!」
ナムを肩に乗せたままのヨグはサイドチェストを披露してくれる。
「うっはー!その肩、何詰まってるんだいっ!?
……にしても変わりすぎだろっ!?……まあ、元気そうでなによりっちゃ、なによりなんだけどよ」
「ブッフフフ。
……して、魔王様、お早いお帰りでしたな?
……なにか、起きたのでは?」
「おお、流石はヨグだぜ。話が早くっていいや。
どっかの弦楽器にも爪の垢を飲ませてやんなきゃ」
「……?はあ……?弦楽器、でスか?」
「今から、結構大事なこと言うんだからよ。あんまおふざけは感心しねえぞ?ヨグ」
「……はア」
ムキッ
「うぉぉー!アブドミナル・アンド・サイっ!サイコロステーキお腹に飼ってるのかいっ!?」
「ブッフフフ!
さア、魔王様っ!——本題をっ!」
「おおっ!そうだった!
あのな、早速で悪いんだけど、ここに8人ほど住ませてくれ。行き場を無くしちまった奴が——」
「——承知っ!」
「お、おお?
まだ全部言ってねえのに……ほんとにわかってる?」
「魔王様はわれらに役目をお与エになった!
ワれらは、それを全うするためにコこにいるのですっ!
——おマえたちっ!」
「——話は聞こエてたぜ、里長」
「ブッフフフ!我らの出番ダっ!
……家を建てルぞっ!」
物陰からわらわらと集まる筋骨ムッキムキのゴブリン達は元気に「おおー!」と叫び、ヨグを先頭に忙しげに動き出す。
……ムキムキなのヨグだけじゃないのね。一体何食ったんだよ……?
「エへへ、……モガッチ」
ヨグの肩から飛び降りたナムがテトテトやって来る。
「すっげえな、オヤジさん達元気になったじゃねえか」
「ウん!
……モガッチが助けてくれたからダね!」
「いや、俺はそんな大したことしてねえ。
単純にあいつらがすげえだけだろ」
「……この里ネ、名前決まったんだヨ」
「へえ?」
「……我ラの里。
我らノ里はね、モガッチがこレから助ける人も、ゼーんぶ、我らなんだって」
「……マジかよ……」
「そうダよ?モガッチが言ったんダからね?
ここにいるミーんなで、『我々』だっテ」
「……ズビ」
「……モガッチ?……ドしたの?上見て?」
「……あ、雨がよぉ、……ズビ……
降ってる……ズビ」
「……降っテないヨ?」
「うっせぇぇ……ズビ……
なんだお前ら……ズビ……
だ、大好きだぁぁぁー!!
オロロローン!」
「エ!?……結婚っ!?」
「ちげえけどー!!
大好きだぁぁぁー!
オロローン!」
「ブ、ブヒィィィィ!ま、魔王様ぁー!」
すげえ速さで走って来るヨグ。そのまま俺とホールドっ!
「オロロローン!」「ブッヒィィィィ!」
「ワッ、お父サんまで……。
……あっちでもミんな泣いてるシ……!
……っもう、男って、しょウがないのよねっ!
ほらほラ、動いて動いて!
……ウ、ウチは、薪、集めて来るカらっ!」
◇
ヤだもう、雨、降って来たミたい。




