3ー8
「しかしよ、全くとんでもない威力だったよな」
ジャランに水をもらった俺はすっかり元気になった。
ジャランはというと、「痛えよー」と言いながら俺が齧った指をさすってる。
元気になったものの、全身にはものすごい疲労感がある。きっと、明日辺りには俺にとってご褒美と言っても過言ではないひっさびさの筋肉痛がやってくる予感にワクワクしながら周囲を見渡すと、墓穴をよじ登るブロンと目が合う。
「おう、無事だったか?
セルゲじいちゃんと青鎧達は?」
「……勇者達は心配ない。無事だ。セルゲニコフも魔王殿の部下の治療のおかげでな。もちろん、余も無事だ」
「へえ、すげえなジューク。……っていうかよ、部下とかじゃねえから。班員だから」
「……班?
であるから、……部下なのでは?」
「ちげえって、班ってのは集団の下から2番めの単位だ。
……まあ、家族みたいなもんさ。俺がお父さん役ってだけ」
「では、彼らは魔王殿の子供ということか?」
「いや、あいつらの方が年上だけど。
……って、そんなことはいいんだよ。さっきのヤバいやつ、あれ何?」
「……あれは、超導兵器だ。
魔晶石が内包する膨大な魔力を転換し、指向性を持たせた上で放射するための兵器。首都イスキを守る要……だ。
まさか、あれの照射に耐えるとは……。と、いうより、まさか、ここに照射してくるとは、か……」
「……へえ?
なんか、とてもすげえもんが撃たれたってことはわかった。でもよ、……勝手に飛び出るもんじゃねえよな?結構偉い人じゃねえと撃てねえんじゃねえの?……しかも、わざと撃ったってんならもう一発撃ってくるかもな」
「……その通りだ。かなりの権限を持つ者ではないと撃てない仕組みになっている……はずだ。……それこそ、大臣クラスの権限が必要だ。
……もう一つの疑問だが、それはない。あれの照射はしばらくないと思っていい」
「へえ、なんで?
第二撃が撃てねえなんて兵器として微妙じゃね?」
「はは、魔王殿にはそう見えるか。
……第二撃など……本来不要なのだ。照射地点に何も残らないはずなのだから。……もう一つの理由は、一回の照射の度に兵器自体の冷却が必要なこと。——さらに、……単純に魔晶石の消費量が多いことが挙げられる」
「ふうん、そうなのか。
……まあ、もう一発来ても、次は弾き返してやるけどな!ガッハッハ!
……でよ、誰が撃ったんだ?」
「確証はない。……が、余の大臣のひとりであるヴォルフガルドが撃ったのだと思う」
「……根拠は?」
いつの間に俺の隣にいるジューク。……すっげえビックリした。さ、流石上忍だぜ……。っていうか何でここに!?治療はどうした!?と言おうとしたら「今できることは終わりました」ときたもんだ。……心まで読むのかよ……。
「……ヴォルフガルドは余の方針に反して魔晶石の効率的な収集のために魔族を痛めつけることを許容しているようだ。この、『施設』が最たる証拠だな。……ここを見た余を消そうとするのも納得できる。セルゲニコフも同時に消し、帝位を簒奪する、というところだろう」
「……どうします班長。思ってたよりまっ黒です」
「……だな」
「バッハッハッハッハ!ここで儂、復っっかぁーつ!」
「うわっ!セルゲじいちゃん!
……もう元気なのか!?」
「うむ!破れた肺ももう元通りよっ!……ゲフ!」
「ちょ、突然無理されては……、あくまで私がしたのは応急処置のみですから……!」
「……無理すんなって。ちゃんと治してさっきの奥義みたいなの教えてくれよ?」
「セルゲニコフ、魔王殿の言うとおりだ。少し休んでおれ」
ブロンの声を聞いてセルゲじいちゃんは大人しく下がっていく。……素直。
「……もしかしてさ、ブロンもセルゲじいちゃんも青鎧も簡単に帰れないんじゃね?……だって、そのヴォルなんとかはお前らのこと死んだと思ってんだもんな」
「……」
「でよ、俺があれ撃ったやつなら、なるべく早くにここを見にくると思うんだよ。来るのが本人じゃなくても、誰かここに向かわせるよな?訓練でも映画でも、攻撃後の確認って大事だもんな!……生きてたらブスリ!まで命令されたやつが来ると思うな」
「……」
「で、……だ。
どうするよ?これから」
「余、……は、魔晶石を発見したものとして、魔族からの簒奪を止めたい。……そのために簒奪を繰り返す帝国……、王国も何とかせねば、なるまい」
「……それはそうだけどよ。……あのさ、話聞いてた?たぶんもうすぐ帝国クソボケのカス斥候辺りが来るっつってんだろ?俺が言いてえのは、まずはそいつをどうするか、だよ?
魔晶石云々は止めるに決まってんだろ。とりあえず今は今の脅威を考えなきゃならんだろ?……こっちは怪我人もいっぱいいるんだしよ。……無力化するか、逃げるかしかねえ」
「……逃げる、にしても、怪我人の移動に難がある。……が、戦うにも、怪我人の安否が問題だな」
「そうそう。……だからよ、俺のオススメは、両方、だ」
「……逃げるが、戦う、と?」
「おう。
俺ひとりでケツを守る。他の全員で怪我人を連れて逃げる。……で、どうだ?」
「だが……」
「つべこべうるせーんだよ。俺なら槍に刺されたくらいじゃ死なねえから。さっさと行け」
ブロンの肩を掴み、くるっと反転させ、軽く押す。
「……班長……」
「ああ、すまねえな。
……ジュークはジャランと撤退支援。とりあえずヨグのところに向かえ。……俺もすぐに追いつく」
「……承知」
「……頼りにしてるぜ。
まあ、何も来ねえかも知れねえんだけどな!ガッハッハ!」
「……はい」
「まあよ、1日待っても何もなかったら俺もお前達を追っかけるから。……心配いらねえよ」




