3ー5
「魔装の、もう一つの使い方だって……?
おっもしれえ!早く見せろ!ジジイ!」
「バァッハッハッハッ!是非もないわぁっ!
……ぬぅん!……魔装撃……!」
「う、うおお……!魔装撃……か、カッケェェェ!」
ジジイの構えた右手に紫色がかったモヤみてえのが集まる。俺を倒すと轟き叫ぶっ!
「……準備はよいか、魔王……。
……滅せよっ!」
ジジイの繰り出すモヤ付きの右拳が、俺の顔面を捉え——アッパー気味の衝撃に俺は、一瞬のうちにきりもみ宙を舞う。——その高さ、10メートル。
「はっ、ハンチョー!!」「待てっ!ジャランっ!」
「ハンチョーがぁぁー!」
俺の身体は、受け身も取らずに地面に落下する。
「ハンチョーが死んじまったぁぁー!離せよっ!ジュークっ!」
ううーん。やべえ。
……超マジでカッケェ!何あの爺さん!
しっかし、なんだありゃ?
拳の衝撃だけじゃあなかったな。むしろ、その後が本番って感じだ。……やっぱあの紫モヤだよなぁ。
ま、考えたところでわからんし、寝たままってのも、休んでるって勘違いされちゃかなわんからな!とりあえず起きるかっ!
足で反動をつけて、勢いよく立ち上がる。
「バァッハッハッハッ!流石に仕留めきれぬか!……普通の人間なら肉片になってしまうところをっ!」
「ヌァッハッハッ!このとおり無事よぉっ!
……しっかし、皆目見当つかん。魔装を右手に集中させただけじゃねえな?」
「その通りよっ!
……この技はな……」
「おっと待ったァァ!種明かしは、俺が勝った後にしてもらおう!」
「んなんとっ!?」
「よっしゃぁ!次は俺の番!」
ズカズカと距離を詰める。本気で殴れる位置まで。
……とりあえず爺さんにゃ、俺の本気を見せてやらねえと。
「ほう……。
すでに入り口にまで達しておる……」
俺の右腕には爺さんのそれと比べると薄いが、紫のモヤ。
「へっ。……マックスモガトシ超弩級ドストレェェートアンド、見よう見まね魔装撃だっ!
行くぜっ!……歯ァ!食いしばりやがれェェッ!」
ズゴン!
大きく振りかぶった拳はモロにジジイの顔面を捉えた。
そのまま、押し込む。
ジジイの巨大な身体が浮き、後方にすっ飛び——一回、二回地面の上で跳ねる。
「うわぁー!閣下がぁー!」「む、チャンス到来……」「……逃げる?逃げちゃう!?」「お、俺……!」
「……あっちゃー……
……死んじまった、かな……」
ジジイは200メートルはすっ飛んでいってしまった。
……ヤバそうだったら介錯してやろう。うん。
生きてたらいいな。生きててほしいな。うん。
しっかし、右腕のモヤはまだモヤモヤしている。なんかやっぱりジジイの魔装撃とは違うんだよな。
これ、ちゃんと覚えるまではジジイに付き合ってもらいたい。
……ああ、大丈夫そうだ。ジジイのやつ、立ち上がりやがった。しかも猛ダッシュで戻ってくる。いやあ、ホントすっげえジジイ!
「ブワァッハッハッハッハー!……ゴブっ!
……凄まじいな!魔王よっ!……ブフッ、
しかぁーし、儂はまだ、倒れんぞォォォ!」
血を吐きながら、腕を元気に振って、満面の笑みで、猛ダッシュジジイ。
「うわぁー!っっすっっげぇぇっジジイ!俺の全力でも死なねぇし、やべえ!超強い!大好きっ!もう、サイッコー!」
「おぉぉお……魔王よ……。
儂も、ここまで胸が高鳴るのは幼馴染のあの子と、独立戦争以来よぉっ!」
「うっはぁぁぁっ!ジジイの3番目っ!超嬉しいっ!」
「ぐぶっ、ハハァ……、
そろそろ、か……。
良し!魔王よぉっ!……続きを、するとしようかの」
「……へっへ。……え?……マジで?
そろそろやべえんじゃねえか?」
「なぁにを、……たわけたことを。
コレは、死合いぞ」
「……そうだな?試合だろ?」
「……そのとおりぞ。
さあ、……ごふ、……死合おう」
「は?……だから、死んじまうって」
「……あったりまえよ、死ぬまでが死合いぞ……」
「え、……じゃあ、魔装撃は?……教えてくれるって言ったじゃんっ!嘘つきジジイは良くないぞっ!?」
「え、儂は、嘘なんてついとらんけど……?」
「そこまでにせよっ!」
「んあ?」「……ぬぁっ!?」
「よ、余の名において、この場での争いを即刻やめよっ!」
「よ?」「……なぜだ……!?陛下……!」
「え、へいか?」「……儂の……死に場所を……」
「あ!お前が帝王!?」「陛下にお前とか言うな、……ブホっ!」
「俺お前に話があって来たんだよね!」「……!ブホっ!?」
「余に……話、と?」「おう!……これ!このジジイくれ!」「!……っぶ、ぶほぉ!?」膝から崩れ、突っ伏すジジイ。
「……班長!」
「あ」
声に振り返ると『メッ』のポーズのジューク。
あ、そうだった。
「……あとよ、……おめぇら、魔族、酷い目に遭わせてねだろうな?」
「そ、……そんなこと、ない……と、余ですらついさっきまで思っていた。……しかし、実態は……」
あ、これ、語り出すヤツ?やべ、ジジイ死んじゃう。
振り向き見つけたジャランにハンドサイン!
……ダメだ!お花と戯れるチョウチョに夢中か!?
……誰かジジイの介抱してあげてー!
足元をひゅと通る影。
うっはっぁー!さっすが上忍!
すぐさま脈の確認、自発呼吸の確認、良し!……あ、呼吸は弱い、と。
怪我は……おお、肋骨が折れて肺に刺さっちまった系ね!なるへそ!それであんなに咳き込んでたってわけだ!いやぁー。医療ドラマみてえなシーンをジュークのハンドサインによる報告で見れるなんて、おっもしろ!
「……で、あったのだ。……すまん。いや、すまなかった」
ふわぁ!?……話終わっとるぅー!?
「……魔王、殿?」
「あ、ごめんごめん。……もう一回言ってくれる?……っていうか、なんでそんな返り血まみれなの?」
「……それも、先ほど話したのだが……」
「あ、そなの?
メンゴメンゴ!」
◇
掻い摘むと、ブロンと名乗る帝王は、計らずしも『施設』に1人で入ることになった。そして、そこで魔族への虐待の証拠を見つけた。
かねてより魔族への厚遇を方針としてきたと認識していた帝王はこれにブチ切れ、そこにいた赤鎧共を魔法でブッチめた。
これでは、魔王が怒るのも無理はないと考えた帝王は、俺とジジイの試合を止めに来たってわけだ。
で、今に至るっと。
「……他にも、あるんだよな?『施設』」
「余も、全てを知っているわけではない……が、ある。
その状況については、……今となってはわからぬ」
「……だよなぁ」
「すまない」
「アンタが知らねえってんなら、糸引いてる奴がいるってことだよな?……心当たりは?」
「ある……。
余の大臣の1人、……ヴォルフガルドだ」
「そいつが……悪い奴か。
って!『施設』にいた魔族は無事なんだろうなっ!?」
「多くは、……すでに」
「ど畜生がっ!
……生き残り、いるんだよな?そいつらに会ってくるっ!」
「ま、待ってくれ!」
「っ!なんだよっ!?」
「余も、……行く」
「……そうかよ。
……悪いな、怒鳴っちまって。
ジュークっ!ジジイを死なせるなよっ!
ジャラン!……は、付いてこいっ!
青鎧っ!お前らもだ!」
突然声をかけられたからかびくりと肩を揺らす青鎧達。
ジャランは満面の笑みで走ってくる。
「はいっ!」「ひいっ!嫌すぎるっ!」「言うこと聞かないと……。いや、行きますっ!」「お、俺っ……!」「ハンチョー!すっげえでっかいチョウチョいたよー!」
とりあえずジャランをポカリとやった俺は、『施設』へ向かう。




