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RPGやり込みおっさんは、転生してもカンストを目指す~オーガたちから英雄扱いされ、気づけば魔王になっていた~  作者: 時津津


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1ー3


「肉肉肉〜肉肉〜♪」


 正直俺は浮かれていた。

 こんなに浮かれたことはないと言うくらいには浮かれていた。だって、初モンスター遭遇、初討伐、異世界初肉だ。浮かれないわけない。

 とりあえずは腹がいっぱいになるまで焼いて食うとして、残りは燻製か、遠火で干し肉、皮……は、やったことないが、とりあえず靴!角は……槍の穂先にでもするかな。もちろん骨も余すことなく使うぞ!きっと、何かしらになるだろう。……針とか、矢尻とか!ありがとう!角ウサギくん!と、後ろ足を縛られて吊るされる角ウサギに一礼し、名前も知らない広葉樹の枝をせっせとチップにしていく。コイツがなけりゃ燻製なんてできないからな!なるべく乾かして、いい煙を出せよ〜と念じておく。贅沢を言うとりんごのチップが俺好みなんだけど、今は贅沢なんて言わないぜ!だって、すでに贅沢な気分だからな!

 チップも大量に用意し、竹を使った燻製器もオッケー!薪も集めたし、角ウサギくんの血は抜けた!では、解体開始!……普通のウサギから5倍近くデカいが、ちょいちょい野うさぎは食ってたからな。角まわり以外は大体おんなじだろ。と、胸から腹まで黒曜石ナイフを滑らせる。……うっほー!生命の赤い宝石がこんにちは!脂身の少ない引き締まったいい肉だ!よだれがとまらん。……でもまだ我慢だ、と、手際よく皮を剥ぎ、解体していく。

 

 ってかよ、これ、ほんとにモンスターなの?

 角生えてるだけで、こっちじゃ普通の野生動物だったりしてなー。デカいだけで。……まあ、襲いかかってきたし、そういうもんなのかも知れんけど。なんて考えながら解体を進め、臓器を一つ一つより分けていたときに、心臓に寄り添うように、野うさぎにはない、骨とも違う、親指大の赤みがかった紫色の固い石のようなものが出てきた。ようわからん変な病気とかじゃねえだろな、と一瞬警戒。

 とりあえずつまみ上げ、匂いを嗅いでみる。――肉っぽい匂い。炙ってみる――変化なし。齧ってみる――かてえ、食えねえ。味なし。

 食いもんじゃねえなら、後回しだ。俺は、その変な石をポイとその辺に放っておく。

 こんな森で生肉を晒し続けるのは危険だ。熊とか出てきたら勝てる気しねえし。ウサギだって5倍サイズ。熊の5倍サイズなんて出てきたら、……な?

 視線を落とすと、ODシャツに開いた穴――角ウサギの角が刺さって出来た穴の周りには血がついてる。……レベルアップしなかったら死んでた。

 ……ま、結果生きてんだから別に気にしない。

 角ウサギくんだって精一杯生きた結果、俺に食われるのだ。そう、今はやることをやる。それは、肉を焼いて食うこと。

 塩も醤油もないけども!

 焼肉のタレもなく、わさびもないけども!

 命そのものを焼いて食う!それが、勝者の特権であり、生きるということなのだよ!

 やべ、焼肉のタレは思い出さなきゃよかった。口が焼肉のタレ味の肉の口になっちまう。エバラ様のあの味に再び出会う日はもう来ないかも知れないと思うとかなり切なくなってしまった。白米にかけるだけで激うまだったのに……。

 

 まあまあ、今は目の前の肉だ。

 ……残念ながら鉄板も網もない。竹を切り出しただけの串にバラ肉を波打つように刺して焚き火の周りに刺していく。次第にパチパチという枝のはぜる音に、ジュウという肉の油が立てる音が混ざり出す。その度に上がる煙はなんとも言えない香りで、切なくなった俺の心を強引に解きほぐす。

 すぐにでもかぶりつきたいところだが、ここは異世界。どんな菌がいるかもわからない。しっかり焼かねばならん。腹を下したら助からないと思わなくてはならない。

 ――焼けた!そう判断した俺の手は、俺が思ってるより素早く肉の刺さる串を取り、口へと運ぶ。

 さっぱりとした脂の味。口中に広がる鶏肉にも似た肉の味。直前の調味料達の想像のおかげで下がりに下がっていた味の下馬評だったが、8倍はうめえ!……いやいやいや、すまん!角ウサギくん!君ってば優秀じゃないか!君の美味さは2本目以降を口に運ぶ俺の手が証明しているよ!

 それから俺は、ただただ、肉を串に刺しては焚き火の近くに設置して、焼けたら食うを繰り返すを工場のラインのように繰り返す。止まらん。焼く、食う、焼く、食う……気づけば早めに食わなきゃならんモツは食い切ってしまった。まだまだ止まらん俺は、切り分けたバラ肉の全てを焼いて食ってしまった。

 楽しみにとっておいた脚の肉はお預け、だな。気づけば腹はパンパン。竹の燻製器に残りの肉を放り込み、燻す。

 骨の工作や、ツノの加工も進めたいところだが……もう、ダメだ。食い過ぎのおかげで血が胃に持っていかれてる……猛烈な眠気……。最後の力を振り絞り、肉を剥がしただけの骨と頭部は埋めておく。少しは匂いが消えるといいが……。這うように寝床に向かうと、俺は意識を失った。


 ◇

 

「オ、オークの子供……?」


 私たちと違い、服という概念がないオーク達。あの子供も、上は暗い緑の服を着てるけど、お尻は丸出しなので、やっぱり、オークだわ、と、藪に身を潜める。久しぶりの精のつく食べ物、角ウサギを追いすぎた、と後悔する。いつの間にかオークの縄張りに立ち入ってしまったのかも……。

 藪に逃げ込んだ角ウサギは、自分が待ち構える方とは逆方向に飛び出し、オークの子供に狩られてしまった。

 普通なら、そこで諦めて家路に着くところなんだけど、あの子供、子供の割には動きがこなれてるわね……。獲物の血抜き、解体……。燻製まで。魔石をポイと投げたのには驚いたけど、それ以外のあの子供の動きは、熟練、に近いものを感じる。それに、子供一人でこんな本格的に山籠りさせるなんて、オークも思い切ったことをするわね……。

 我が里でも積極的に取り入れるべきかも知れない。

 ……生まれてくるこの子のためにも、我が一族が安寧を享受するために。

 女は少し膨らんできた自分のお腹を撫でて、その場を後にすることに決めた。

 里の者たちにも注意を促さなきゃ、ね。

 あの子供に危険は感じない。……けど、オーク達の縄張りに近づく理由なんてない。それは、たとえ相手が子供であっても変わらない。手助けも、……できない。……きっと、あの子供には必要ないのだろうけど。

 

 頭から2本の角を生やしたオーガの女は、少しだけ後ろ髪引かれる気持ちを押し殺し、静かに森の奥に消えていった。

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