2-16
クソ帝国クソボケ野郎共は思っていたより全然素直だった。
俺が目の前に来ただけで、しょんべん漏らしながら話しだしたこと以外はまあ、褒めてやれるかな。
さて、わかったこと、だが。
この施設にはここにいるゴブリンと連れて行かれた娘の他、魔族はいない。
赤鎧共の総数はこの部屋にいた6名の他、15人。
連れて行かれた娘は収穫のために連れて行かれた。
収穫をするのは、最初の交差点を右に進んだ一番先の部屋。
収穫、とは何をするのか知らない。
そして、どうやらヒゲの高官はその収穫のためにここに来たってこと。
そして、俺は、その収穫ってのに心当たりがあった。
魔石を大量に摂取した魔族の心臓にできる魔晶石。
これのことを指してるなら、その娘がやべえ。
捕らえた4名の赤鎧と、傷ついたゴブリン達をジュークとジャランに任せ、俺は来た道を走る。
ゆるいカーブを描く坑道の壁を利用して猛スピードで。
最初の交差点が見える。右へ——じゃない。右は出口!
今度はまっすぐ進む。土のついた赤鎧達の足跡はすぐに消えてしまったがただの一本道。迷うわけねえ。
扉を2枚過ぎる。吐かせた情報によれば、収穫室は一番突き当たりだ。構わず進む。
もう2枚、放っておく。——突き当たりに鉄の扉。ぶち破、らない。
あの男の娘がいたらどうする。
……血の、臭い。
扉の奥から、血の、臭いがする……。
「ブヒャヒャヒャヒャヒャ!ゴブリンにしては良い物持ってるねえ!これなら帝王陛下も満足だろうさ!」
血の気が引く。
「豚にも劣る下等生物が!こうやって、人間様の役に立つんだ!喜んで差し上げますって言えぇ!」
視界が、赤く染ま、る。
「いイい、いタぃい!」
「うひょー!締まるうぅ!
いいねぇ!おじさんも楽しませておくれえぇー!ほらほらぁー!心臓に張り付いてるコレ!取っちゃうよおぉー!」
後ろからガシャガシャ響く鎧の足音。
気づかれた。
俺は目の前の扉をドアノブを無視して壁から抉り取り、後ろにぶん投げた。
後ろから響く何かがつぶれる音。漏れる呻き声。
目の前に、赤鎧を脱いだヒゲ。
ずさんに開胸された胸に手を突っ込まれながらヒゲに犯される少女。
「うひっ!おまえ誰!?」
ツカツカと無遠慮に近づく俺は、ヒゲの首を後ろからわし掴む。
「手、抜け」
「う、うひ……」
手を抜く、ヒゲ。
抜きました、と言わんばかりに、血糊のついた手をヒラヒラと見せる。
俺は、力任せにヒゲを後ろに引き、壁まで投げる。
背中を強打し、むせるヒゲ。
「な、なんだお前はぁー!?
突然、何しやがるぅー!?」
「……こっちの台詞だぜ」
ヒゲを睨みつけ、近づく。
「ああ!?」
「てめえは、人間なんかじゃ、ねえ」
「はあ?……何言って」
ヒゲの足を踏み潰す。
「うぎゃあー!いてえー!」
「ぴいぴいうるせえ小鳥ちゃんだなあ」
もう片方の足も踏み潰す。
「あああー!何しやがるぅー!?」
「……小鳥ちゃんに、失礼か」
剥き出しのヒゲの一物を踏み潰す。
「……ゴミ野郎」
「あ、あひいい……」
ヒゲの胸ぐらを掴み、立たせる。
「おめえは、死んじまえ」
思いっきり殴った。
壁に穴をあけ、吹き飛ぶヒゲ。
空いた穴から、壁に囲まれただだっ広い……エルモアだった土地が見えた。
「畜生が……」
「ううウ……
痛イよう……」
ただの板切れみてえなもんに貼り付けられ、無理矢理に胸を開かれ……
それでも少女は生きていた。
「すまねえ。……来るのが遅くなっちまった」
その辺の布をかけてやる。
「……オ、おじちゃんは、……だレ?」
「俺は、モガトシだ。
お前の父ちゃんに言われて助けに来た。
あと、……おじちゃんじゃ、ねえ」
「オ、お父さん……イきてる?」
「ああ」
「……スっごく、叩かれてタから、……心配だったん、ダ」
「……似た物親子だな。って、あんま喋るな、死んじまうぞって、あ……」
俺は、なんたらホーンの魔石を持っていることに気付いた。魔族にとって、薬になる魔石。
これを食えば、助かる、か?
……こんな状態から?
「く、食う……?」
なんたらホーンの魔石を見せる。途端に嫌そうな顔。
「エえー……
魔石、キらい……」
「あー……俺もさぁ。
ピーマン嫌いなんだよね。……恥ずかしいから内緒だぜ?
でもな、栄養たっぷりだから残したことはねえ」
「へンなおじちゃん……」
「魔石食ったら怪我治るかも知れねえぞ?」
「ウん……。
がんバってタべる……。
ちゃんと、なおっタら、オジちゃんと……結婚してアげるね……」
「ほんじゃ、しっかり治さねえと、な」
魔石を細かく指で砕く。
コイツの口に入るくらいのサイズに。
そして、それをパラパラと口に入れてやった。
「ウええー……
ニガイ……」
「ピーマンも苦えんだ。
苦えもんは体に良い、はずだ」
パラパラ。
「なんカ、ムズムズすルよう」
顔色が良く……?ちょっと緑が濃くなった気がする。……え?悪くなったんじゃないよな?
何度か目のパラパラ。
……そういや、水とかで飲み込むとかしなくて良いの?と心配になってきた頃、
「アれ?
……痛くなイ」
「お、ほんとか!?」
少女の体にかけた布をめくる。
傷が塞がっている。
「……エッチ!」
叩かれた。
しっかし、すっげえな!なんたらホーン!
ご家庭に一つレベルの常備薬として超優秀!
いやいや、ふざけてる場合じゃねえ。
早くこんなところ出よう。
最後にアレ、ぶちかまして、な。
さあて、まずはみんなを脱出させねえと。




