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「で、どいつらだ?」
「今、ギルドの中に3人。……馬車は向こうに停めています。馬車の近くにも3人」
「ほう」
「全員赤鎧だった」
「青ヒゲハゲは?」
「……ギルドの中で彼らの相手を」
「……ハンチョー。
あいつらさ、この街ではあんまり見かけない奴らなんだよね」
「……続けろ」
「……多分、中央の奴らだと思う。
馬車のえらそーな紋章も、だけどさ」
「……根拠は?」
「えっと、赤鎧が上等なことと、口髭が生えてたこと」
「口髭?」
「うん。
口髭は偉い奴しか許されないから」
「……なるほどな。
結構な高官ってことか」
「交換?」
「……違うぞ。ジャラン。
位の高い兵ってことだ。
班長、将官クラスかもしれません」
「将官?
そんな高級幹部がわざわざ来てるなら、こりゃあ、当たりかもな」
「出てくるぞ」
ギルドから出てきた3人の赤鎧。
二人は両手で袋を担いでいる。
真ん中のヒゲありだけは、赤鎧の胸に金の意匠が付いていた。アイツが将官かも知れない奴、か。
「載せろ」
ヒゲありが短く指示を飛ばす。
「……それにしても、今回は良質な魔石がありましたね」
「ああ」
「……資金が足りないとは驚きでしたね。
まあ、いつも通り買い叩いたわけですが」
「ふん、問題ないだろ。
……奴等にはこの価値はわかるまいさ」
二人が持つ袋が馬車に積まれる。
ヒゲ将官が御者を務める赤鎧に「出せ」とだけ言い、馬車に乗り込む。
「……行ったな。
追うぞ」
「はい」「おう」
見たこともねえ道を馬車に付かず離れず進んでいく。
きっと、この馬車が向かうのはイスキって帝国の首都だ。そこにラグナの姉ちゃん達がいる——はず。
高い太陽を背に、北へ。……あれ?そういえばここって北半球?俺って、そんなのも知らねえんだもんな。
というか、この星が、地球とおんなじ回り方してるとは限らねえんだもんな。太陽が沈む方が西ってのも当てにならない可能性がある。
そもそも、太陽の方が動いてるって可能性すらある。
そういや、ジュークもジャランも海すら知らなかった。
海があるかどうかすら疑わしい。
そもそも、星なの?レベル。
「まあ、いっか」
「……どうしました?班長」
「いや、……俺、世の中のこと知らねえなーって思ってよ」
「……ご自分で気づけただけ、マシだと思います」
「……とにかくよ、馬車を追えば目的地には着くんだ。
今はそれだけわかってりゃいいよな?」
「そのとおりです。さすがの慧眼ですね」
「おっ!それ、褒めてる!?
いやぁー、照れるなぁ」
馬車に付いていきながら街を囲う壁を抜ける。
ジャラン達が立っていた門とは別の門だ。もちろん俺には初めて見る門。やっぱり門番は立ってはいたが、ジュークの言うとおり、街を出る分には特にチェックされることはなく、俺とジュークは難なく通ることができた。……ジャランだけ呼び止められて借金の督促を受けていた。
……門を抜けると急激に建物が減り、両脇に畑が広がる土の道が伸びている。しばらく進んだ先にあった三叉路を馬車が曲がる。そこから先の道は幅が広く、整備されているというほどではないが、しっかり踏みならされていた。
俺たちは、馬車との距離を十分にとり、作物や藪に身を隠しながら付いて行く。
「……でもよ、どこ行くんだろうな?」
「いい加減にしろ、ジャラン。それを追って確かめるんだろ」
「だってよ、こっちイスキじゃなくね?」
「言われてみれば、確かにな」
「だろ?
こっちの方って確か……」
「鉱山街エルモアだ」
「でもよ……」
「元王国領で、……鉱山が廃坑になった今はもう……」
「だよな。……無人のはずだ」
「じゃあ、かなり怪しいってことだな!」
「はい。かなり。
……しかし、今のところわかっているのは、エルモアの方に向かっている、ということだけで……」
「エルモアっていえば、昔っからでっかい酒場が有名だったよな!?ほら、あの英雄殺しの酒の話もエルモアじゃねぇっけ!?跡地を探せばまだ酒があるかも!」
「おお!マジか!それは楽しみだぜー」
「それはそれとして、声量を抑えて」
「だな!見つかっちまう!」
「……うるさいぞ。ジャラン」
「そうだぞ。尾行に集中しろ」
「ハンチョーだって、一緒にはしゃいでたのに!」
「それにしても、馬車のくせにえらいゆっくり走るよな」
「そうですね。積荷が関係しているのかも知れません」
「あっ!それ俺知ってる!」
「ジャラン。うるさい。
……魔石と魔石が激しくぶつかり合うと、燃えることがあるんです」
「……燃える?
ぶつかり合うだけで?どんな感じで?」
「はい。……といっても、かなり強くぶつからなければ燃えはしません」
「それってどれくらい?」
「手と手に持って、思い切りぶつけ合うくらい!
でも、ボンっていきなり燃えるから、絶対火傷する!」
「はあ……。うるさいぞ。ジャラン」
「ていうかハンチョー、そんなことも知らねえのな!」
「ああ、知らねえ。
……でもな、……今、すっげえいい事思いついたぜ」
「なんです?いい事って?」
「へへ、まだ秘密」
「……班長。
ジャランの言ってる魔石は小石程度の魔石の話です。
……くれぐれも、グレイトホーンの魔石では試さないでください」
「……へへ。
……それもいいことに追加だな」
それにしても、コイツらはよく動く。
いちいち細えことまで気が回るジュークに、性格は適当だが広範囲に知識があるジャラン。……楽すぎて俺が気を抜きすぎるくれえだ。
「……班長。
馬車が止まりました」
「お?着いたのか?」
「いえ、……どうやら、野営するようです」
「まだ夕方だってのに、気がはええな」
「まあ、この速さだとエルモアまでもあと半日ってとこだからな。俺はそろそろどっかで止まるって思ってたぜ」
「あ、そうなのか。
じゃあ俺らも休もう」
「しかし……
この距離ですと、奴らに気取られるかと」
「ほれ、あっちの茂みの裏に穴でも掘って寝るぞ」
「え!?穴掘って寝る!?」
「今言ったばっかだろ。聞き返すなって。
タコツボだよ。ほれ、動け」
「マジ?」
「大マジだ。背を屈めて草より低く。藪の裏までまわるぞ」
「おーい……ジューク。なんとか言ってくれよ」
「いや、理にかなっている。さすがは班長だ」
◇
「……なあ、俺、あっちに行きたい」
「……ダメに決まってるだろ。耐えろ」
「焚き火の近くに行きてえよう……」
「風は防げるが……
確かに寒いな……」
俺たちはそれぞれ、座れば身体がすっぽり隠れるくらいの掩体——タコツボを掘った。ちょうど藪の隙間から奴らの馬車が見える。手榴弾孔は掘らない。意味ねえから。体は勝手に掘ろうとはしたが。
もうそろそろ22時といったところだろうか。気温は……10℃あるかないか、くらい。コイツらにゃ悪いが、火を焚くわけにはいかねえ。すぐにバレちまうし。
「そういう時はな、心の中で「やるぞ!」って気持ちを大きくするんだ。そうすりゃ温まる」
「腹も減った……
アイツら、焚き火でなんか焼いて食ってる……」
「俺らもそのうち食える。空腹はその時の飯をうまくするためのスパイスだ。……より美味くなるぞ」
「ハンチョーは昼飯を宿で食ったうえ、ウドゥーンも食ったんだもんな」
「……確かに。
私も朝食の後は何も口に入れてないな」
「……俺なんか、朝も食ってねえよ……」
「……寝ろ。
俺が奴らを見張ってるから」
「いえ、私が見張ります。
どうぞ休んでください」
「……いいから寝ろって」
「せめて交代制にしましょう。
まずは私かジャランが見張ります。
それでいいよな?ジャラン」
「むにゃ」
「……私がまず、見張ります」
「じゃあ、交代、な?
任せたぞジューク」
「はい」




