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RPGやり込みおっさんは、転生してもカンストを目指す~オーガたちから英雄扱いされ、気づけば魔王になっていた~  作者: 時津津
ゲームやり込みおっさんと人間

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2-10


「で、どいつらだ?」


「今、ギルドの中に3人。……馬車は向こうに停めています。馬車の近くにも3人」


「ほう」


「全員赤鎧だった」


「青ヒゲハゲは?」


「……ギルドの中で彼らの相手を」


「……ハンチョー。

 あいつらさ、この街ではあんまり見かけない奴らなんだよね」


「……続けろ」


「……多分、中央の奴らだと思う。

 馬車のえらそーな紋章も、だけどさ」


「……根拠は?」


「えっと、赤鎧が上等なことと、口髭が生えてたこと」


「口髭?」


「うん。

 口髭は偉い奴しか許されないから」


「……なるほどな。

 結構な高官ってことか」


「交換?」


「……違うぞ。ジャラン。

 位の高い兵ってことだ。

 班長、将官クラスかもしれません」


「将官?

 そんな高級幹部がわざわざ来てるなら、こりゃあ、当たりかもな」


「出てくるぞ」


 ギルドから出てきた3人の赤鎧。

 二人は両手で袋を担いでいる。

 真ん中のヒゲありだけは、赤鎧の胸に金の意匠が付いていた。アイツが将官かも知れない奴、か。


「載せろ」


 ヒゲありが短く指示を飛ばす。


「……それにしても、今回は良質な魔石がありましたね」


「ああ」


「……資金が足りないとは驚きでしたね。

 まあ、いつも通り買い叩いたわけですが」


「ふん、問題ないだろ。

 ……奴等にはこの価値はわかるまいさ」


 二人が持つ袋が馬車に積まれる。

 ヒゲ将官が御者を務める赤鎧に「出せ」とだけ言い、馬車に乗り込む。


「……行ったな。

 追うぞ」


「はい」「おう」


 見たこともねえ道を馬車に付かず離れず進んでいく。

 きっと、この馬車が向かうのはイスキって帝国の首都だ。そこにラグナの姉ちゃん達がいる——はず。

 高い太陽を背に、北へ。……あれ?そういえばここって北半球?俺って、そんなのも知らねえんだもんな。

 というか、この星が、地球とおんなじ回り方してるとは限らねえんだもんな。太陽が沈む方が西ってのも当てにならない可能性がある。

 そもそも、太陽の方が動いてるって可能性すらある。

 そういや、ジュークもジャランも海すら知らなかった。

 海があるかどうかすら疑わしい。

 そもそも、星なの?レベル。


「まあ、いっか」


「……どうしました?班長」


「いや、……俺、世の中のこと知らねえなーって思ってよ」


「……ご自分で気づけただけ、マシだと思います」


「……とにかくよ、馬車を追えば目的地には着くんだ。

 今はそれだけわかってりゃいいよな?」


「そのとおりです。さすがの慧眼ですね」


「おっ!それ、褒めてる!?

 いやぁー、照れるなぁ」


 馬車に付いていきながら街を囲う壁を抜ける。

 ジャラン達が立っていた門とは別の門だ。もちろん俺には初めて見る門。やっぱり門番は立ってはいたが、ジュークの言うとおり、街を出る分には特にチェックされることはなく、俺とジュークは難なく通ることができた。……ジャランだけ呼び止められて借金の督促を受けていた。

 ……門を抜けると急激に建物が減り、両脇に畑が広がる土の道が伸びている。しばらく進んだ先にあった三叉路を馬車が曲がる。そこから先の道は幅が広く、整備されているというほどではないが、しっかり踏みならされていた。

 俺たちは、馬車との距離を十分にとり、作物や藪に身を隠しながら付いて行く。


「……でもよ、どこ行くんだろうな?」


「いい加減にしろ、ジャラン。それを追って確かめるんだろ」


「だってよ、こっちイスキじゃなくね?」


「言われてみれば、確かにな」


「だろ?

 こっちの方って確か……」


「鉱山街エルモアだ」


「でもよ……」


「元王国領で、……鉱山が廃坑になった今はもう……」


「だよな。……無人のはずだ」


「じゃあ、かなり怪しいってことだな!」


「はい。かなり。

 ……しかし、今のところわかっているのは、エルモアの方に向かっている、ということだけで……」


「エルモアっていえば、昔っからでっかい酒場が有名だったよな!?ほら、あの英雄殺しの酒の話もエルモアじゃねぇっけ!?跡地を探せばまだ酒があるかも!」


「おお!マジか!それは楽しみだぜー」


「それはそれとして、声量を抑えて」


「だな!見つかっちまう!」


「……うるさいぞ。ジャラン」


「そうだぞ。尾行に集中しろ」


「ハンチョーだって、一緒にはしゃいでたのに!」


「それにしても、馬車のくせにえらいゆっくり走るよな」


「そうですね。積荷が関係しているのかも知れません」


「あっ!それ俺知ってる!」


「ジャラン。うるさい。

 ……魔石と魔石が激しくぶつかり合うと、燃えることがあるんです」


「……燃える?

 ぶつかり合うだけで?どんな感じで?」


「はい。……といっても、かなり強くぶつからなければ燃えはしません」


「それってどれくらい?」


「手と手に持って、思い切りぶつけ合うくらい!

 でも、ボンっていきなり燃えるから、絶対火傷する!」


「はあ……。うるさいぞ。ジャラン」


「ていうかハンチョー、そんなことも知らねえのな!」


「ああ、知らねえ。

 ……でもな、……今、すっげえいい事思いついたぜ」


「なんです?いい事って?」


「へへ、まだ秘密」


「……班長。

 ジャランの言ってる魔石は小石程度の魔石の話です。

 ……くれぐれも、グレイトホーンの魔石では試さないでください」


「……へへ。

 ……それもいいことに追加だな」

 

 それにしても、コイツらはよく動く。

 いちいち細えことまで気が回るジュークに、性格は適当だが広範囲に知識があるジャラン。……楽すぎて俺が気を抜きすぎるくれえだ。


「……班長。

 馬車が止まりました」


「お?着いたのか?」


「いえ、……どうやら、野営するようです」


「まだ夕方だってのに、気がはええな」


「まあ、この速さだとエルモアまでもあと半日ってとこだからな。俺はそろそろどっかで止まるって思ってたぜ」


「あ、そうなのか。

 じゃあ俺らも休もう」


「しかし……

 この距離ですと、奴らに気取られるかと」


「ほれ、あっちの茂みの裏に穴でも掘って寝るぞ」


「え!?穴掘って寝る!?」


「今言ったばっかだろ。聞き返すなって。

 タコツボだよ。ほれ、動け」


「マジ?」


「大マジだ。背を屈めて草より低く。藪の裏までまわるぞ」


「おーい……ジューク。なんとか言ってくれよ」


「いや、理にかなっている。さすがは班長だ」


 ◇


「……なあ、俺、あっちに行きたい」


「……ダメに決まってるだろ。耐えろ」


「焚き火の近くに行きてえよう……」


「風は防げるが……

 確かに寒いな……」


 俺たちはそれぞれ、座れば身体がすっぽり隠れるくらいの掩体——タコツボを掘った。ちょうど藪の隙間から奴らの馬車が見える。手榴弾孔は掘らない。意味ねえから。体は勝手に掘ろうとはしたが。

 もうそろそろ22時といったところだろうか。気温は……10℃あるかないか、くらい。コイツらにゃ悪いが、火を焚くわけにはいかねえ。すぐにバレちまうし。


「そういう時はな、心の中で「やるぞ!」って気持ちを大きくするんだ。そうすりゃ温まる」


「腹も減った……

 アイツら、焚き火でなんか焼いて食ってる……」


「俺らもそのうち食える。空腹はその時の飯をうまくするためのスパイスだ。……より美味くなるぞ」


「ハンチョーは昼飯を宿で食ったうえ、ウドゥーンも食ったんだもんな」


「……確かに。

 私も朝食の後は何も口に入れてないな」


「……俺なんか、朝も食ってねえよ……」


「……寝ろ。

 俺が奴らを見張ってるから」


「いえ、私が見張ります。

 どうぞ休んでください」


「……いいから寝ろって」


「せめて交代制にしましょう。

 まずは私かジャランが見張ります。

 それでいいよな?ジャラン」


「むにゃ」


「……私がまず、見張ります」


「じゃあ、交代、な?

 任せたぞジューク」


「はい」

 

 

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