2ー8
さあて、飯も食った。寝るか。
……とはいかなかった。
なぜだか執拗に絡みついてくるジャランとジュークが俺の部屋まで転がり込んできやがったんだ。
「なあ、ハンチョー。もうちょっとだけ飲もうぜ」なんて、魅力的かつ抗えない殺し文句と共に。
カレーナから酒を受け取ったジュークが俺とジャランのコップに酒を注ぐ。
「しかし、どうやって探すつもりなんだ?」
「それなんだがよ、ギルドの魔石を尾けようと思う」
「なるほど」
「さっすがハンチョーだぜ!」
「しかし、いつ集荷されるかなんてわからんだろう?」
「いや、明日か明後日って話だ」
「うおお!すげえぜハンチョー!」
「うるさいぞジャラン。
……しかし、魔族の囚われているところを見つけたとして、その後は?」
「捕まえてる奴ぶん殴って、ラグナの姉ちゃん達を連れ戻す」
「お、おお……
す、すげえぜ!ハンチョー!」
「そうか……」
ジュークは左手に拳を作った。
少しだけ俯いたあと、右手に持つコップを一気に煽る。
「……わかった。
ジャラン、俺は軍を辞めようと思う」
タン、とコップを床に置きながら、ジュークはジャランに言い放つ。
「おお!ジューク!
そう来たか!って!……ええっ!?」
「モガトシ、さん。
俺は、……いえ、私は、あなたに惚れました。付いていきます」
「……なんだよ。
もう付いていくって所までは決めちまってるじゃねえか。
じゃあ、俺からはなんも言わねえよ。」
「はい。……ありがとうございます」
「ジューク……」
「ジャラン。聞いてのとおりだ。
明日からあの門は任せる。ギャンブルはほどほどにな」
「え……」
「……じゃあな。
モガトシさ、……班長。
身支度のため、一旦失礼します」
「おお」
扉を閉める音さえスマートにジュークは部屋を後にする。
「……なんだ、もう、飲まねえのか?」
「え、いや、飲む!」
慌ててコップを煽るジャラン。
空になったコップに酒を注ぎ入れてやる。
「い、いやぁー、アイツ、突然真面目ぶって何言ってんすかねぇ?」
ぐび
「あ、あいつ、バカっすよね!?
ハンチョーの旅はすっげえ険しくて、あいつなんか絶対足手まといなのに!」
ぐび
「ハンチョーからも言ってやってくださいよ!
お前なんかいらねえって!」
ぐび
「お前みたいなのがいたら、迷惑だって!」
「そこまでだ」
「なんでだよっ!?
あんな倹約家のヘタレなんか連れてたら、うまくいくもんもうまくいかねぇって!」
「人の決意を貶すんじゃねえよっ!」
「だ、だってよぉ!」
俺はジャランの襟首を掴み、引き寄せる。
額と額がぶつかり合う鈍い音。
「あいつはもう俺の班員だ。
俺の班員を笑うな。貶すな」
そこまで言い、離してやる。
ぺたりと座り込むジャラン。
「……お前も俺の班員だ。
お前を笑う奴、貶す奴は俺が許さねえ」
「だがな。俺はお前の母ちゃんじゃねえ。
お前のわがままをいちいち聞いてやる道理もねえ」
「お前がどうしたいかは、お前自身が決めなきゃぁなんねえ。一匹の男として、な」
酒瓶を持ち上げ、逆さにする。
一滴、二滴、落ちる酒。
「もう、酒もねえな」
「俺は寝る。
お前は好きにしろ」
床に座り込むジャランを放っておいて寝床に入る。
いやあ、肉も食えて、酒も飲めて、班員と遊んでやって。
今日も充実してたなぁ。
◇
窓から差し込む朝日が眩しいぜ!
……あれ?結構高いな?……もしかして昼?
やっべえ!ギルドに魔石運びが来てたらどうすんだ!
反射的に飛び起き、扉に向かおうとして——何かに蹴つまずく。そのままの勢いで扉に頭から突っ込み——
バキィ!
扉は俺という質量を受け止めきれずにバラバラになってしまう。
「ちくしょう。……弁償しねえとな」
カレーナの怒り顔を想像しながら頭についた扉の破片をはたく。……さて、一体何につまづいたんだ?
部屋の中を覗くと、頭を抱えて蹲るジャラン。
「ハンチョー……、痛えよお」
「ジャラン……お前、そこで一体何やってんだ?」
「いや……、俺も決めたんだ」
しっかりと座り直し、背筋を伸ばす。
心なしキリッとした顔をするジャラン。
「へえ?
ちょっと今急いでっから、後で聞く」
「いやいやいやいや!ハンチョー!
聞いてくれよぉー!
一晩必死で考えたんだよぉー!
ジュークよりカッコいいセリフをよぉー!」
「走れ!急いでるっつってんだろがよ!」
バタバタと宿の階段を落ちるように降りると、怒り顔のカレーナ。
「うるさいってんだよ!」
「すまん!あとで扉代は払う!」
「へ!?
扉代!?何言ってるんだい!?」
「またな!」
「ちょ、昼飯はどうするんだい!」
「後で食う!」
宿を出て、ブワッと走って、ギルド到着。
「おお!ジューク!」
ギルドの前にはすっかり旅装のジュークがいた。
「班長。
……まだそれらしき動きはありません」
「うわぁ!お前、しごできだなぁ!」
「……しごでき?」
「……っちょ、待ってくれよハンチョー!」
そこに遅れてジャランが到着。
「ジャラン。やはりお前も来ることにしたのか」
「おわ!ジューク!」
「そんなことだろうと、お前の分の退職届も出しておいた。
……これからもよろしくな。
共に班長を支えよう」
「すっげえしごできだな」
「はい。
……失礼ながら班長は少々抜けておられるところがあると思いましたので」
「っ!……おい!ジューク!それ、ほんとに失礼なやつだからな!」
喚くジャラン。
「うるさいぞジャラン」
ピシャリとジャランを止めるジューク。
てととてととんてととてととんてとととととんてととーんとーん
「あ、仲間になるイベント終わったわ」
「へ?」「……なんです?」
「こう、ほれ、仲間が増えた時ってのはよ、なんか、鳴るんだよ。てととんって」
「……は、ハンチョー?」「ジャラン、まさか、朝まで飲んでいたわけじゃないよな?」
「酔ってねえよ、うっせえなあ。
ほれ、しっかり見張れ」




