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RPGやり込みおっさんは、転生してもカンストを目指す~オーガたちから英雄扱いされ、気づけば魔王になっていた~  作者: 時津津
ゲームやり込みおっさんと人間

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30/62

2ー7


「獲ってくるとは言ってたけどさ、なんて肉持ってきてるんだい!?」


「え、なんたらホーンとかいう牛みてえな奴の肉」


「違うよ!量のことだよ!」


「みんな腹一杯肉食えればいいなって思ってよ」


「くうー!本人がコレなんだから!

 姉ちゃんからも何か言っとくれ!」


「いいじゃないか。

 精肉問屋が悲鳴をあげてはいたけどさ」


「へえ。

 なんでもいいからよ、肉。

 料理してくれよー」


「ったく。……ちょっと待っときな!」


「あとでもう二人来るからソイツらの分も頼む」


「なんだい!外で友達でも作ったのかい!?」


「いや、班員と班員候補」


「ハンイン?ハンインコウホ?

 変な名前だね。

 女を連れ込むってんじゃないならなんでもいいよ!」


「女は連れ込まねえ。

 俺、嫁いるし」


「へえ!見かけによらないねえ!」


「どんな娘なんだい!?アンタみたいなのの嫁なんて大変そうだろうに!」


「んー。

 畑も狩も良く頑張るし、飯もうまいし……」


「へえ!年は?

 上かい?それとも下なのかい?」


「いや、同い年、だと思う」


「はぁー!いいねえ!

 アタシらにもいい男が現れないかねえ」


「でもな、酒癖は悪いし、寝相も悪い」


「嫌だねえ!この人は!

 すぐ男ってのはソッチの話に持って行こうとする!」


「そっちってどっちだよ?」


「なんだい!言わせようとするんじゃないよ!」


 豚串屋のおばちゃんにバシバシ叩かれる。地味に痛え。


「おーい!ハンチョー!

 来たぞー!」


「おお、来たか」


「あら、若い男」


「うわ、名物姉妹」


「こっちの若いのがハンインかい?

 じゃあ、あっちの若いのはハンインコウホだね」


「え?俺、ジャランだよ?」


「ああ、ジャランが班員だ。

 そっちのは、……名前はまだ知らねえ」


「あ、俺はジュークです」


「そうか。ジュークが班員候補だ」


「そうかい。ジャランにジューク。

 アタイはミランダ。……惚れっぽいの。仕事は豚串屋のマドンナ」


「おお、噂通り」


「失礼だぞ、ジャラン」


「よし決めた。ジュークはアタイの隣に座んな。

 あとは適当でいいよ」


「え、何が決まったんです?」


「んふふ、それを聞くのはヤボってなもんさ」


「ジューク。

 ……強く生きろよ」


「なんだそれ?どういうことだよ」


「ほら、肉が焼けたよ!

 あ!また姉ちゃんだけ若い男捕まえて!」


「なんだい!アンタは仕事中だろ?

 客に手を出すんじゃないよ!」


「そこの若い男達は客じゃないよ!

 泊まるわけじゃないもんね?」


「ああ、そうだ。

 俺たちは寮住まいだからな。な、ジャラン」


「ジューク……余計なことを」


「んふふ、アタイはカレーナ。

 よろしくねっ、ジャランくん」


 宿のおばちゃん——カレーナは、そこらの椅子をドカンとジャランの椅子の隣に寄せて座る。


「挨拶なんてどうでもいいからよ、肉食おうぜ。

 冷めちまうよ」


 俺にはもう、目の前の肉しか見えてなかった。


「そうだそうだ!ハンチョーの言うとおり!」


「よっしゃ!食おう!

 いただきます!」


「……いただきます?」


「ジャランも知らないのか?」


「ハンチョー、それ、なに?」


「ああ、飯食う前の礼儀だよ。

 お前らもちゃんといただきますしろよ?」


「そっか!じゃあ、いただきます!」


「い、いただきます……?」


「さあ、肉だ!なんとかホーン!」


「ハンチョー、グレイトホーンだよ。

 ……って、グレイトホーンなんだよな……」


「グレイトホーン!?なんてものアタイに料理させてんだい!」


「あれ?言わなかったっけ?」


「アタイは牛だって聞いたよ!」


「そうだっけ?

 まあいいや、ほれ、ジャランから食ってみろよ」


「う、うおお……

 グレイトホーン……」


 約一月ぶりの肉というだけで恐れ多いのにまさかのグレイトホーン肉。

 恐る恐るフォークでグレイトホーンの肉を取る。

 つぷと刺さるフォーク。すげえ柔らかそうだ。

 ……こ、こんなの食ったら俺、英雄ゼフィリオンを越えちまう……

 口に運ぶフォークが震える。

 突き刺さった肉が魅惑的に震える。

 口に入れる。

 入れただけで伝わる旨み。

 一噛みすると、溢れ出す肉汁。

 濃い旨みが口中に広がる。

 脳内には広がるゼフィリオンの最後のシーン。最後のセリフ。「……これで、平和が守られるならば、我が命、惜しくはない……」ガクリッ。「ゼフィリオーン!!」仲間達の慟哭。

 もう、ブワッて感じ。

 気づけば俺は溢れるほど涙を流していた。


「おわ、また泣いてるのか!?」


「美味すぎるー!

 ……うう、ゼフィリオンがぁー」


「……さっきは肉が食えないって泣いて、今は食って泣くのか」


「はは、じゃあ俺も食おっと」


 フォークで3枚の肉をブッ刺し、無遠慮に口に放り込む。


「おお!うっめええー!

 山で食ったのの、8倍はうめえー!

 やっぱ、おばちゃんに頼んだの大正解だった!超うめえ!」


「口の中に肉入ってんのに大声出すんじゃないよっ!」


「へへっ!すまんすまん!

 みんなも食えよ!食わねえなら全部俺が食っちまうぞ!」


 そっからは食卓の上での戦争の開幕。

 乱れ飛ぶフォーク。

「うめえー!」「ああっ!アタイの狙った肉が!」の阿鼻叫喚の地獄絵図。

 しまいにはカレーナの持ってきたウイスキーみたいな味の酒まで飲み出して大宴会の様相を現す。


「ぶはあっ!強えな!この酒!肉に合う!うめえ!」


「いい飲みっぷりだねぇ。家でも飲むのかい?」


「おお!だけどな……。ラグナが飲むと大変だからよ、控えてんだ」


「ラグナってハンチョーの嫁さん?」


「そうそう。酔うと脱ぐし、すぐ吐くんだ」


「へえ。そりゃひでえや!」


「だろ?だからよ、気兼ねしねえで飲むのも久しぶりなんだ」


「じゃあ、この際、どんどん飲みな!

 まあ、あんまり量はないんだけどね」


「そういや、ハンチョーはそんな嫁さんほっぽり出して何しに来たんだ?」


「ああ、嫁さんの姉ちゃんを探しにきたんだ」


「へえ?

 嫁さんの姉ちゃんはこの街に嫁いだのか?」


「いや」


「……名前は?」


「あ、そういや知らねえな」


「おいおい、どうやって探すつもりだったんだよ?」


「見りゃあわかるさ」


「ああ、嫁さんと双子とか?すげえ似てる的な?」


「いや。オーガだから」


 ガチャガチャ騒いでた4人の動きが示し合わせたように止まる。


「へ?なんて言ったんだい?

 ……オーガ?」


「オーガって……あの……?……魔族の?」


「ハンチョーの嫁さんオーガなの!?」


「あれ?言わなかったか?」


「「聞いてないよ!」」


 ミランダとカレーナ姉妹が綺麗にハモる。

 俺は、空になったコップに酒を注ぐ。


 クワワン、と音を立てて何かがテーブルから落ちる。


「え?ハンチョーってオーガなの?」


「ちげえよ。見てわかるだろ?俺は人間」


「わかんねえって!そんなでけえ人間初めて見たわ!

 グレイトホーンは狩ってくるし!」


「じゃあなんでオーガと結婚してんだい!?」


「え……?普通に?」


「……なんだい、普通って?」


「え、だ、だからよ……

 なんていうか、照れちまうけど……好き合って?」


「はぁー!いいねぇ!

 もう、相手がなんだろうが祝福したい気持ちだよ!」


「だね!姉ちゃん!

 ああー!アタイらにもこんな男が現れたらねえ!」


「でもよ、なんでその姉ちゃんはいなくなったんだ?」


「それだよ!ジューク!俺が聞きたいのもそこ!」


「うるさいぞジャラン」


「なんかよ、10年くらい前に攫われたんだと。人間に」


「……攫われ、た?」


「ああ」


「……ちょっと待て、よ。

 確かに王国も帝国も魔族を連れてくることがあるって聞くが、それはあくまで保護って話じゃないか?」


「だよなあ。

 国が傾くほど魔石を集めて食わせてやってるって聞いた」


「占領地の復興もそっちのけで、な」


「アイツら……オーガもオークも俺らとおんなじもんを食う」


「え?そうなの?」


「ああ。魔石を食うのは病気の時とか、ケガした時だけだ」


「じゃあ、健康な魔族には魔石はいらないってことか?」


「そうだな」


「じゃあ、国はなんで……」


「なんで、なんて関係ねえ。

 魔族達の意に沿わねえことを無理やりしてる。

 俺は、それを許さねえ」


「おお……」


「あんだよ?」


「……かっけえな。ハンチョー」


「あ?」


「コップが空っすよ。注ぎます」


「なんだ突然気持ち悪いな」


「……はあ、姉ちゃん。

 今日はダメだよ。いい男が男まで取っちまうから」


 カレーナはため息をついた。


「……既婚じゃなけりゃあ、ね」


 ミランダもため息をついた。


 

 

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