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RPGやり込みおっさんは、転生してもカンストを目指す~オーガたちから英雄扱いされ、気づけば魔王になっていた~  作者: 時津津
ゲームやり込みおっさんと人間

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29/62

2ー6


「なあ、昨日のアイツ、行かせてよかったのか?」


「ああ……黒髪黒目のことか」


「結局報告もしてねえし」


「別に、俺は帝国のために働いてるんじゃねえ」


「……また始まった」


「なんだ、「また始まった」って!」


「事実だろうが」


「おい、やけに突っかかるじゃねえか!?

 ……昨日のポーカーで肉取られたのがそんなに悔しいかよ!」


「当たり前だろ!……肉だぞ?

 もう、1ヶ月も口に入れてねえのに」


「そりゃ、お前が弱いくせに賭け事が好きなせいだろ!」


 男はもう一方の男の胸ぐらを掴む。

 掴むが、膝から崩れ落ちる。


「それでも!……俺は、肉が食いたかった……っ!」


「おお……、わかったから泣くなよ……」


「お前にはっ!……俺の気持ちなんてわからないだろ……!」


「まあ、俺は昨日普通に食ったからな。肉。」


「あんな銀貨一枚もする高級肉を……!安月給のくせにっ!」


「そりゃあお互い様だろうよ」


 ポンポンと男は泣き崩れる男の肩を叩く。

 まあ、これもここ最近じゃいつものことだった。

 特に、今日みたいな給料日前はひどい。

 きっともう、銅貨数枚しか持ってないんだろうな。

 

 この後は大体、隣でぐちぐちいうコイツに付き合って交代の時間まで過ごす。それを回避するためには、夜メシを奢るなんて約束すればコロリといくんだが……。

 まずは、泣き止ませないと。

 と、膝をつく男に視線を向けると……

 珍しい。泣き止んでる。

 さらに珍しく、口をぽかんと開けて、門の外を見ている。


「……ど、どうした?」


「ま、魔物?

 ……いや、肉だ」


「え?

 と、とうとうおかしくなっちまったのかよ!

 だから、賭け事なんかやめとけって!」


「ち、違うんだ!

 肉だ!肉が来る!

 ……牛?牛っぽい!」


「はあ?

 ……肉が来るわけないだろ

 ……って、うわ!……牛?」


 目を凝らすと、ものすごく遠くの山裾から牛が歩いてきているように見えた。

 街が占領されたおり、帝国に連れ去られた牛。野生の牛だろうか?家畜化して増やせば——


「お、お、お、俺!大金持ちになれる!」


「うわっ!突然どうした!?」


 コレにはついさっきまで泣きじゃくってた男も驚く。


「あれ、捕まえて!飼って!増やす!金持ち!」


「お、落ち着けって!」


「こ、これが、落ち着いてられるか!」


「……で、でもよ……

 あれ、歩いてなくね?」


「き、気のせいだろ……?」


「いや、なんか、引きずられてるんじゃね?」


「ま、まさか、そんな」


「下の方、なんか木っぽくね?」


「……」


「てゆうかさ、あの黒髪黒目じゃね?」


「……」


「めっちゃ手、振ってる」


「……」


「てゆうかよ、あの黒髪黒目より牛の方がデカくね?」


「……マ、マジだ……」


「……牛だけじゃなくね?」


「ぶ、豚……?」


「羽も見えるぞ?」


「……」


「しかも、すっげえ速さで走ってね?」


「おーい!出迎えごくろー!」

 

「ひぃっ!」


「す、すげえデカい……」


 門番二人の目の前で止まった手拭いを頭に巻きつけた黒髪黒目は二人の顔を覗き込む。もうもうと土煙を曳くバカでかい木のソリにバカでかい牛と見間違えた魔物。


「どした?

 なんか怖いことでもあったか?」


「あ、ああ。

 ……たった今、な」


「ふうん。

 寝る前はちゃんとトイレ行けよ?じゃあ、俺は行くから」


「ま、待てっ!」


「……あんだよ?」


「そんなデカいもの、門を通れない。

 物理的に、な」


「ありゃ、そうか。

 ほんじゃ、ここでバラしていい?」


「ええっ!?

 ここでか!?」


「……ダメ?」


「うーん……

 その、端の方でなら……」


「おお、ありがとう!

 お前らにもあとで分けてやるからな!」


 さっさと準備らしきものを始める黒髪黒目を尻目に、


「な?」


「……なにが「な?」なんだよ?」


「報告しなくてよかったろ?」


「肉を分けてくれるって……」


「よかったじゃねえか」


「て、手伝ってきていいか?」


「ああ」

 と言う代わりに手をしっしっ、と振る。

 昔飼ってた犬コロみてえに満面の笑みじゃねえかよ。

 そういう俺も、多分笑っちまってるな。



「なあなあなあ!俺も手伝う!」

 

「おお。助かる」


 俺がお手製のソリから獲物をよっこらと下ろしていると、さっきの門番の片割れが手伝いを申し出てくれた。すげえいい奴。


「何したらいい!?」


 しかもやる気に満ち溢れている。

 こんな若い奴、陸自時代にもいたなあ。


「じゃあよ、ソイツの足もいじまうから皮剥いでくれ」


「わかった!」


 もぎっとな。

 そして、ほいと地面に置く。


「……あれ?」


「お?どした?」


「これ、足?」


「おお」


「足だけなのに、俺よりデカいんですけど?」


「……そうだな?」


「これ、牛?」


「牛、みたいな奴」


「……いやいやいや……」


 牛、に見えなくもなくて、バカでかくて、凶悪な二本の角が生えてて……その蹄は、堅牢な城壁だってぶち壊すほど強く……


「……これ、グレイトホーンじゃね?」


「?」


「コイツの名前」


「へえ?

 コイツ、グレイトホーンってのか」


「災害級の……

 街が滅ぶレベルの魔物じゃね?」


「ほお。ソイツはすげえな」


「え?

 ……じゃあ、そっちのは?」


「豚みてえな奴と、でかい鳥」


「……ヘルピッグと、ルースターオブアビス……」


「へえ。物知りだなあ」


「へへ、昔話とか英雄譚とかが好きでね……って!

 ととと、とんでもねえ!

 こんな、英雄の相手みたいな魔物……

 うわあ……初めて見た……」


「何でもいいから手、動かせよ。

 肉が傷んじまう」


「しかも、食うの!?

 す、すげええ……!

 かの英雄、ゼフィリオンでさえ、相打ちがやっとだったグレイトホーンを……」


「うるせえなあ。

 ほい、もう一本足。

 やることばっかり増えちまうぞ?」


 わ、そうだった。とばかりに動き出す門番の男。

 腰の短剣で皮を剥ごうとするも、短剣の方が根を上げる。


「ちょ、硬くて刃が通らねえ」


「足の内側の方が柔らかいからよ。

 そこから刃を入れてみろ」


「おお!切れた!

 俺のこんなクソ安い短剣で英雄譚の魔物の皮が!」


「どうでもいいけどよ、肉を傷つけんなよ?

 食うとこ減っちまうから」


 俺はなんたらアビスとやらの羽をむしりながら注意を飛ばす。やべえ。新隊員にしか見えなくなってきた。


「なあ!足の皮剥いだぞ!」


「なんだ斉藤!その口の聞き方はよ!」


「へ?サイトウ?」


「あ、違った。

 なんか不便だしよ、名前教えてくれ」


「俺はジャランだ。よろしくな!」


「おお。俺はモガトシ。

 班長って呼べ」


「モガトシハンチョー?」


「おお」


「そうかい。ハンチョー。

 次は何したらいい?」


「なんたらホーンは片付いたな。

 次は豚だ」


「ハンチョー、それ、ヘルピッグ」


「そうそう、ヘルピッグ」


 頭の中で鳴る仲間が増えた時の「てととてととんてととてととんてとととととんてととーんとーん」を聴きながら、くだらないやり取りをしながら3体の魔物を解体し、気づけばできていた見物人達にも手伝ってもらい、市場に肉を持ち込んだ。


 さーて、晩飯は肉だ!

 宿のおばちゃんに料理してもーらお。

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