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「よく寝れたかい?
昼飯は食うんだろうね?」
起き抜けに顔を洗ってると、宿のおばちゃんに尋ねられた。
「寝た。食う」
「どうせ泊まってるのはアンタだけだからいいけどさ、準備を無駄にされるのは好きじゃないね」
「ああ、すまねえ。
朝飯の分もまだあるなら食う」
「そうかい?ならいいんだけどさ」
「もう食えるのか?」
「温めればね」
「なら頼む。昼飯も一緒に出してくれ」
「あいよ。……って、昼飯も一緒に食う気かい!?」
「ん?おお。
準備してくれたんだろ?」
「ま、まあね。
食べるってんなら一緒に出すけどさ」
「じゃあ頼む」
「はいよ。
食堂で待っといとくれ」
「おう」
言われたとおり待っていると、ほどなくして宿のおばちゃんが料理を持ってくる。
目玉焼きみたいな奴。
ベーコンみたいな姿の肉。
パン。
野菜のスープ。
コイツらが朝飯だったやつらかな?
続いて、
凶悪そうな顔の魚の姿焼き。
肉団子みたいなもんが入ったスープ。
サラダ的なやつ。
パン。
——やっぱりコメはないのかな。
ちょっと残念な気持ちになる。
やはり、日本人としてはコメが食いてえ。
あとミソ。
あと醤油。
あと……
あげ出したらキリがない気がしてやめる。
今はとりあえず、目の前の飯に集中だ。
「よっしゃ!……いただきます!」
「なんだい、突然大声出して」
「あん?
飯食う前の礼儀だよ」
「へえ、
どんな意味なんだい?」
「えっとな、作ってくれた人とか、食い物になったもんとか、この飯に携わった全てにありがとうって感じの意味だ」
「そりゃ、おばちゃんにも言ってるってことかい?」
「そうだな。
おばちゃんにも、この魚にも、パン焼いたやつにも、パンの材料作ったやつにも」
「へえ、変な礼儀だけどいいね。
おばちゃんは好きだねえ」
「へへっ。
じゃあ、食うか!」
まずは魚に狙いを定めて、食う。
「おおっ!何だこりゃ!?川魚?
旨みがやべえ!コイツ、バカだろ!」
「なんだい、バカって」
「だってよ、こんな旨く生まれちまったら食ってくれって言ってるようなもんじゃねえか」
「……褒めてんのかい?」
「超褒めてる!うめええー!」
お次はパンをひと齧り。
「絶妙!硬すぎず軟すぎず!うめええー!」
スープをずずっと飲んでは、
「かぁー!いいね!素材感まるだし!パンに合う!超うめええー!」
そんな調子で、朝飯だったらしい料理も昼飯もあっという間に平らげる。
「ふぃー。うまかった!」
「……」
「おばちゃん?」
「……アンタ、本当に全部食べたのかい?」
「おう」
「朝飯と昼飯だよ?」
「おう」
「……」
「おかわりある?」
「スープならまだあるよ。……って!まだ食べるのかい!?」
それからスープを3杯もらって、腹も落ち着いた。
「ふう。
ごちそうさまでした!」
「また大声出して。
……それも礼儀かい?」
「おう。飯食った後の礼儀」
「ふうん。
まあ、何も言わないでさっさと帰っちまうより気分がいいね」
「そうか?
気に入ったんならよかった」
俺は席を立ち、食器を重ねて持ち上げる。
「……今度は何だい?
その食器はやったわけじゃないんだよ?」
「あ、ちげぇって。
片付けようとしてるだけだ。
どこに持っていけばいい?」
「あっははは!
おばちゃん、勘違いしちまったよ!
皿はさ、そこに置いておいていいからね」
「あ、そう?
じゃあ、お願いします!」
皿をテーブルに置き直して部屋に戻る大男を見ながら、
「はは、姉ちゃんが興奮するわけだ」
珍しく、自分の口角が上がったのを宿のおばちゃんは感じながら男が置いた皿を持ち上げる。
「あ、そうだ!
おばちゃん!」
「うわっ、なんだい!?」
「俺、夜飯は肉がいい!」
「……肉なんて、手に入らないよ!」
「えー……。
……じゃあ、獲ってくるから料理してくれ!」
「えっ!?獲ってくるだって!?」
——どこで!?
と言う前に大男は宿から飛び出ていた。
「し、死んだりしないだろうね……?」
◇
門を出るのは簡単だった。
なにせ、昨日の門番とおんなじ奴が立ってたからな。「よっ!」「あ、アンタか」「出てくる!」ってなもんよ。
帰りもアイツらだったら楽だなー。
「さて、肉はどこだー?」
昨日は豚食ったしな。その前は鳥。さっきは魚。
じゃあ、牛がいいなー。テキトーに切って焼くだけで美味いアイツがおばちゃんの手にかかったら……。いかんいかん。涎が溢れ出てくる。
街を出て、山を2つほど越える。
こんだけ離れりゃ、何かしらいるだろ。
お目当ての牛みたいな奴は、地面のぬかるんだ所でよく見かける。
そして、何を隠そう俺は街に着く前にそういう場所を見つけていたのだ。
「確かこの辺りだったはず……
お、あったあった」
目的地到着!
さて、牛牛……と、辺りを見回す。
泥で体を洗うでかい豚。
水たまりをつつくでかい鳥。
……いた!でかい牛!
あとは、手頃な石を探して……
ほいっ!
ついでにほいっ!
もういっちょ、ほいっ!
全てデッドボール!
ズズンと倒れる肉達。
よっしゃ!狩り終了!
市場の人たちも食材がないって言ってたからな。
獲りすぎくらいがちょうどいいだろ。
……さて、ソリ作るか。




