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RPGやり込みおっさんは、転生してもカンストを目指す~オーガたちから英雄扱いされ、気づけば魔王になっていた~  作者: 時津津
第一章 ゲームやり込みおっさんとオーガの里

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「今度は何を作っとるんじゃ?」


「おお、長老か。……これは、臼だよ」


「うす……?石を削って作るんかいのう?」


「ああ。麦をうまく食うために、な」


「ワシはジャガイモが好きじゃたのう」


「美味かったろ?」


 何気なく話しちゃあいるが、このジジイはこのオーガの里で俺以外の唯一の男。両手でも足りないほどの婆さんに囲まれたプレイボーイ。もとい、プレイジジイ。


「羨ましいじゃろ?」


「……は?」


「ふふん、そう顔に書いてあるわい。ワシみたいに女子を侍らせたい、とな」


「ばあちゃん達は別に侍ってないだろ」


「……。そうなんじゃ……。実は、ワシ、肩身が狭いんじゃ……。」


「ほう?」


「昨日もそうじゃった……。誰と一緒に寝るかで揉め、誰の隣の席でメシを食うかでも揉め……」


 しおしおと萎んでいく長老(ジジイ)


「モテモテでいいじゃねえか」


「婿魔王殿はわかっとらん!しょせん……一人しか嫁のおらぬ身には到底わかるまいて」


「俺はラグナだけで十分さ。それに、この里にはラグナしかいないんだしな」


「ラライは?」


「おいジジイ。ラライさん——お義母さんをカウントすんな」


「ほっほ。

 あれで器量のいい娘なんじゃ。ワシは、あの子にも幸せになってほしいと思っちょるだけよ」


「……そう言われると、否定する俺が悪者みてえじゃねえか」


「まあまあ、今はラグナとの新婚ライフを楽しむがええよ。……ラライのことは、そのうちそのうち」


「新婚っつってもな。……結婚式もまだだしよ」


「結婚式といえば……あのトカゲかの?

 ……定番料理じゃもんな」


「そうそう。どこにいるんだよ?そのトカゲ?」


「ワシの時はその辺におったんだけどものう……ワシが獲り過ぎたのかものう。……ほれ、嫁さん一人に最低一匹じゃから」


 そう。オーガの里に伝わる結婚式の定番料理、トカゲの丸焼き。

 これを用意しなければ嫁をもらうことはできない。

 前世のウエディングケーキみてえなもんか。ただ、ケーキと違うのは自分で獲ってこなきゃ結婚できねえってことだ。

 男が滅多に生まれないオーガだからこそ、より強い男を選ぶための知恵ってところか?


「まあ、探してはみるけどよ。……どんな奴なんだ?」


「うーん。色は赤とか緑とか様々じゃ。あと、口が大きくて歯がギザギザじゃ!

 大体大きさは……一抱えくらいじゃったな。……とんでもなく獰猛でな……。オークが丸呑みにされとったのを見たこともあるわい」 


「ふうん。そんなの、すぐ見つかりそうなもんだけどな……って、オークを食っちまうって一抱えじゃきかねえだろっ!」


「あれ?……どうじゃったかなー……。

 若いときのワシ、大きかったからのう……」


「オークを丸呑みするようなやつを一抱えってか!?ジジイ、どんだけデカかったんだよ!?」


「そんなに言われるとワシも自信無くすのう……まあ、美味いことだけは確かじゃよ」


「そうかよ。……なら楽しみだな。

 じゃあ石臼できたら探しに行ってみるよ」


「なるべくでかいのを頼むぞい」


「おう」


 ◇

 

 トカゲ探しに出た俺は、久々の一人きりを……満喫できないでいた。

 ついこの前まで18年間も一人で山籠りしていた。

 山でも何不自由なく過ごしていた。それなのに、今では一人きり、ということ自体に物足りなさを感じる。

 

 ラグナは「付いていく!」と荷物をまとめたところでお義母さんに止められた。

 これで初めて俺も知ることになったのだが、どうもこのトカゲ狩りは一人で全部行わなければいけないらしい。探すのも仕留めるのも一人。そして一人で持ち帰る。そこまでやって、結婚を認められるらしい。


「そうか。……じゃあラグナは待っとけよ」


「は、……はい」


 いつもは「うん!」とか「わかったー!」なんて返事するラグナなのに、この時は急にしおらしくなって、なんか調子狂うよな。

 なんて思いながら鼻をかき、周りの気配を探しながら歩いているうちに、気づけば辺りは真っ暗だった。

 

 今日はこの辺で休み、明るくなってから探すか。

 夜の闇じゃ、特徴的な体の色も判別できねえしな。


 俺は、適当な枝を集め火を起こす。

 来る道中で狩った弁当がわりの肉を食うか。


 コイツも惜しいとこいってると思うんだけどな。

 赤いし、爬虫類っぽいし、歯はギザギザだし。

 でもなあ。……小せえんだよな。

 コイツだったら十匹くらいまとめて抱えられるだろう。

 うん。コイツじゃない。

 だからコイツは今夜の弁当だ。


「うおっ!?美味いなコイツ!」

 

 味付けもしてねえのに香ばしい肉汁。ふわりと柔らか、それでなお歯応えまである肉。……唐揚げにしたら大行列の人気店になれそう。少なくとも、俺は並ぶね。

 


 この時俺はまだ知らなかった。

 

 骨だけになってしまったコイツこそが、ウエディングケーキがわりの丸焼きになるはずだったトカゲだってことを。

 だってしょうがねえだろう?若い頃はデカかったと主張する長老(ジジイ)の一抱えほどのデカさ、なんて聞いてたんだからよ。

 


 あのジジイの足りねえ説明のおかげで、俺は、この後一ヶ月も彷徨い続けることになったんだ。

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