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RPGやり込みおっさんは、転生してもカンストを目指す~オーガたちから英雄扱いされ、気づけば魔王になっていた~  作者: 時津津
第一章 ゲームやり込みおっさんとオーガの里

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1-15


「でね!モガトシって魔王様なんだって!」


 オーク達との肉と野菜の交換を終え、大量の野菜をオーガの里に持ち帰った俺とラグナ。


 これは、持ち帰った野菜をさっそく調理し、集会場兼ジジババ達の家でみんなが箸をつけようとした、その瞬間のラグナの第一声だ。

 ジジババ達の箸が一斉に止まる。


「「「はえ?」」」


 カランと転がる箸の音。


「ま、魔王様……じゃと?

 ……婿じゃなく……?」


「ううん!婿だけど、魔王様なんだって!

 だからアタシ魔王妃様!」


「「「うおおお!!」」」


「ラグナ……立派になって……」


 ふっふーん!

 得意げに鼻を鳴らすラグナ。

 ああ、オーク村での鼻鳴らしもそれのせいか……。

 

 しかし、な。

 ……俺としては、魔族でもないし、魔王になったつもりもない。ただ、俺は俺のやりてえことをやるだけ。……コイツらを食わせてるのも、それが俺のやりてえことだからだ。

 まあ、俺のことをどう呼ぼうが俺は気にしないんだけど。


「……本当に喜んでやがらあ」


 ラグナをチラと見て口の中だけで呟く。

 アイツが喜ぶんなら、これも悪くねえかもな……。


「酒があったらええのにのう。なあ、婿魔王殿」


「ねえもんはしょうがねえだろが。冷めねえうちに食ってみてくれよ」


 俺はテーブルに並べた野菜炒めやスープを長老に勧める。もっと大きい鍋が欲しいな。スープはよくて10人分ほどしか作れなかった。


「……でも、コレ、あの草とか根っこなんじゃよな?」


「食うって言ったじゃねえか」


「……そうじゃな……。なあ、ちょっと、ちょっとだけでいいんじゃ。……肉を多めによそってはくれんかの?」


「わかったわかった」


 言われた通り、長老には汁椀には多めに肉を入れて渡してやる。


「草もいっぱい入っとるのう……。この赤い根っこもなんか嫌じゃ……」


「食う前から文句言うんじゃねえよ」


「うう……」


 恐る恐る人参を口に入れる長老。

 ゆっくりと、嫌そうな顔しながら咀嚼する。


「おお……?」


「これは……甘い?」


「それに、ホロホロと食感も面白い!……美味い!」


 もぐもぐと口を動かし、飲み込む。

 

「だろ?

 ……他のも食ってみろよ」


 キャベツを口に入れて


「うほぅ、なんじゃコレ!?分厚い葉っぱなのにふんわり柔らかじゃ!」


 ジャガイモをパクリ


「さっきのやつよりホロっとするのう!美味っ!なんじゃコレ!?」


 そんな長老の様子を見て、他のジジババ達も「ワシもワシも」と野菜を食い始め、あちこちで「美味い!」「肉と一緒に食うと格別じゃ!」「この汁自体の味もすっごいのう!」「ほうじゃ!味が口の中で大騒ぎじゃ!」などと騒ぎ始めた。


「それにしても、500年くらいぶりかのう?」

「ワシらが生まれるずぅっと、前のことじゃ」

「立派な最後じゃったと言い伝えられちゃあおるが……」

「そうさな……なんていったかのう」

「なにがじゃ?」

「魔王様のお名前じゃよ」

「なんかほれ、聞きなれない名前じゃったのう」

「お……?のぶ……?」


 卓を囲むみんなから少しだけ離れて、集会場の片隅で耳を寄せ合い話すジジババの会話が聞こえる。……興味深い話しだ。俺は彼らの話に耳を傾ける。——と、その時突然、隣にどかりと座る2メーター越えのナイスバディ。


「ンフフ……」


 椅子をガッと近づけ、妖しい動きで体をすり寄せてきたのは、顔を真っ赤にしたラグナだった。


「んね〜ぇ、アナタァ〜ん」


「うおい!ラグナ!?

 なんだその喋り方はっ!?」


「おほぅ」「うひょ〜!この里の未来も明るいて」「婿魔王様、励みなされよ〜」周りのジジババ達のなんだか意味深な歓声。


 ラグナの足が俺の腰に回る。両腕が俺の首に巻きつく……ってか、「アナタァ〜ん」って!


「うわっ!酒臭っ!」


「ああ、ワシの秘蔵の火酒!……ああ、全部飲んでしもうた、か……」


「ンフフフフ……。もっとくっついて〜」


 俺の体に絡みつく酒臭ラグナ。目がトロンして、いつもより顔が近い。角が俺のデコに食い込む。


「アタシぃ〜、なんだか、目がまわる〜……モガトシが50人くらいいるよぅ……」


 ひどい酔い方だな……。ってか、酒あるなら俺にも飲ませろよ!なんて言ってる場合じゃねえか。食い込む角が地味に痛え。動いて振り解くのは簡単だが、それじゃあラグナが盛大にコケることになる。

 固まっている俺の目の前のラグナの唇が動く。スローモーションで。……もう、すぐにでも触れそうな距離。さらに近づく、角もさらに食い込む。……いや、近いって!近い近い!


「もう、アタシ……動けない〜」


「……酒臭っ!」


 ゼロ距離のラグナの吐息は、酒臭かった。

 コテっと首を倒し寝息を立て始めるラグナ。

 ……た、助かった……。

 ……少しだけ、勢いに任せたかったような。

 

 ……これが、キュン死にってやつか。

 

「ヘタレが」「据え膳なのにのう」「まだじゃよ……これからお持ち帰りフェイズじゃ」「いやいや、ヘタレ婿魔王様じゃ。何もできんて」「これじゃ里の未来も、わからんのう……」


 うるせえぞ。ジジババども。


 ◇


 反論してもどうせ勝てない俺は、寝ているはずなのに腰に足を回し、首をがっしりとホールドしたラグナを引っ付けたまま寝床へ退散することにした。


「よっ!お持ち帰り!」「今度こそ頑張るんじゃぞー!」「初めてでも気負うんじゃないぞい!」「ひ孫を頼むぞー!」


 ……出征兵士かよ!……だとしてもこんな見送り嫌だなぁ。


 ジジババ達に見送られながら、俺は里の隅に建てた家に向かう。

 最初は一人暮らしのつもりで建てた。

 ……なのに、いつの間にかラグナまで住み着いてしまった。ジジババどもが勝手に同棲扱いするもんだから、気づけば増築を繰り返し、今では3LDKまで大きくしてしまった。

 ジジババ達に同じ部屋で寝てると思われないように、ちゃんとラグナの部屋も用意している。

 ……ベッドに転がせてさっさと寝かせてしまおう。

 

「おい、ラグナ。そろそろ離せって」


 ゆさゆさ


「んむぅ……」


「おーい」


 ゆさゆさ


「うう……」


 もう少しか?


「ほれほれ」


 ゆさゆさ


「うぺ」


 ……吐いた。

 でも、おかげで力が緩み、ラグナが剥がれる。

 うへえ。キラキラまみれじゃねえか。とりあえず拭いて、あ、気道も確保しねえとな。


 ……俺の一張羅もキラキラまみれ。こりゃ、風呂ついでに洗うか。

 手早く汚れた服を洗い、家の裏の風呂を準備して、湯に浸かる。

 ああ、やっぱり風呂だよなぁ。自然と鼻歌も飛び出すぜ。


 ふんふんふふん〜「モガ」

 ふふふんふん〜!「いい?」

 ふふふふん!ふふん!「るね?」

 チャプ


「うおっ!?ラ、ラグナ?」


「えへへ〜……吐いちゃった。ごめんね」


「いや、それは別にいいんだけどよっ!風呂!裸!待て!」


「もう入っちゃったよぅ〜。それにキラキラまみれだったから……」


「だからっておま……」


「うん。……だからこっち向いちゃダメ」


 背中と背中がくっつく。ラグナの長い髪が俺の肩に落ちる。吐息で上下する柔らかい背中。


「ジジババ達、すっごい喜んでたね」


「お、……おう」


「モガトシがここに来てから、みんな、いっぱい笑うようになったんだよ。お母さんも元気になったし」


「……俺は、別に……

 俺がやりてえようにしてるだけだ」


「だからね、アタシ、モガトシにお礼がしたいの」


「そんなの」


「あのね、お母さんに聞いたんだけど……」


 ラグナが身をよじる。俺の方に身体を向ける。肩にそっと顎を乗せて、


「男の人の喜ばせ方……」


「え、え?……ら、ラグナ、さん……?」


ラグナにも聞こえてしまうんじゃないかと思うほど俺の鼓動がやけにうるさい。

 前世でも経験したことねえ初体験の女の肌。

 その感触を背中に感じ、俺は完全に硬直してしまう。

 ……やべえ、やばすぎる。五夜六日の演習後の営内のベッドに倒れ込んだ時の数十倍の気持ちよさ!溶けちまいそうな錯覚まである……

 顔の横にあるラグナの横顔……プルプルした唇がゆっくりと動き——

 


 


「うぺ」


 おおい!また吐いた!


 

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