表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/43

歪み、堕ちていく

 アキナ ― 岐阜城・地下3階広場 ―


 スニーアの笑顔を見て、胸からジワジワと黒いものが広がった。

 この子は私を苦しむのが大好きなんだ。だから、きっと何かを企んでいる。

 だけど私は逆らえない。逆らえば、過去に戻ってアサヒ君を救えない。


 スニーア「その子ってアキナの友達よね?どうして神使を出して隠れていたのかしら?もしかして、裏切るつもりだったの?」


 アキナ「ちっ、違う!私は、トウカちゃんとは、もう……」


 友達じゃない。


 そう言いかけた時、ズキリと胸が痛んだ。あんなにも私を慕ってくれた友達を、私は否定しようとしている。


 スニーア「言い訳は無駄だよ?だって、アキナはトウカを抱き締めているんだもの。それでも私たちの味方だと言うのなら…トウカを殺してよ」


 アキナ「え……?」


 耳を疑う私に、スニーアが顔を近付ける。


 スニーア「当たり前でしょ?だって私はトウカを仲間にしていないよ?それなら敵だよね。敵は排除しないと」


 アキナ「だっ、だけど…!トウカちゃんは……」


 トウカ「ゴフッ……」


 トウカちゃんが血を吐き出す。背中からも大量の血が溢れている。このままだと、死んでしまう。


 アキナ「トウカちゃん!!」


 私はトウカちゃんに呼びかける。彼女が気を失わないように。


 スニーア「馬鹿でしょお前ぇええ!!」


 ガッ!!


 スニーアが笑いながら私の顔を蹴った。私はトウカちゃんを抱き締めたまま倒れ込んだ。


 アキナ「うぅ…」


 そして彼女は私の背中を蹴り続けた。


 スニーア「何泣いてるのよ気持ち悪い!!まさかトウカちゃんは友達だから傷つけたくないってこと?

 今更良い子ちゃんヅラしないでよ!!お前はもう神祓特務隊の裏切り者なんだからさぁあ!!」


 私はただ泣いていた。破壊神や天乃家の当主、神術監になっても、私は泣くことしかできない。


 スニーア「へぇ〜。どうしても退かないんだ?だったら…過去へ戻れなくなってもいいのかな?」


 過去へ戻れなくなる…その言葉に、一瞬固まる。


 スニーア「アキナ。貴女はアサヒを救いたいんでしょ?それなら…分かるよね?」


 アキナ「アサヒ…君……?」


 アサヒ君の名前が耳に入った時、アサヒ君と一緒に過ごした日々が頭の中を駆け巡る。

 短かったけど、アサヒ君と一緒にいた頃は楽しかった。

 そして、過去に行けば、またあの頃に戻れる。


 今の私は、三年前みたいに強くなれない。


 私は鬼さんと神仏合体をして、トウカちゃんの顔を両手で包んだ。


 アキナ「トウカちゃん、ごめんね……私、アサヒ君に会いたいの。だから……」


 私は涙声で言う。泣く資格なんて無いのに。両手に力を入れて、トウカちゃんの顔を潰そうとする。


 トウカ「ヒュー…ヒュー…」


 トウカちゃんが苦しそうに呼吸をする。そして、私を睨んだ。


 トウカ「……この、疫病神」


 ドガァアアンッ!!


 天井が、まるで紙のように裂けた。

 光と影が渦を巻き、

 何かが真上から落ちてくる。


 スニーア「何!?」


 神父の魔族「むっ!」


 二人の声が重なる。

 空気が震え、広場全体が一瞬静止したように感じた。


 ???「巌壊弦破がんかいげんは


 その声は、

 落ちてくる瓦礫よりも重く、

 しかし不思議なほど澄んでいた。


 ズバァンッ!


 広い範囲に“衝撃の線”が走り、スニーアと神父さんの魔族が一斉に距離を取る。

 二人の表情が険しくなる。


 スニーア「ゾルナト!誰よこいつ!?」


 ゾルナト「分からん。しかし……先程の太刀筋、神霊クラスだと見ていいだろう」


 スニーア「神霊クラス!?こんな魔力を感じないただの人間が!?」


 スニーアの声が震えていた。ゾルナトは真剣な表情で男を見つめている。


 スニーア「ゾルナト。君が人間にそんな過大評価するなんて珍しいね」


 ゾルナト「だが、スカルさまには到底及ばない」


 スニーア「それなら大丈夫だね」


 二人が構えを取る。

 しかし――

 男はまるで興味がないかのように、

 ただ静かにタイムマシンを見ていた。


 アキナ(……誰?)


 私は、彼の背中を見つめる。


 赤い鬼の面頬。

 白い獅子の頭。

 緑の道着に、赤い法被。

 そして――

 黄色い目。


 アキナ(見覚えが……ある)


 アサヒ君の師匠である白山サイモリ先生の格好。でも、声は高木ユウマさんに似ていた。

 高木ユウマさんは、六年前に当時の創造神を守った大巫女のユミコさんのお父さん。軍人で旭道を軍事転用させる為にクーデターを起こした首謀者でもある。


 だけど、二人とも、もうこの世にいないはずなのに……


 アキナ「誰なの……?」


 気づいたら、口が勝手に動いていた。

 知りたかった。

 この人が何者なのか。

 アサヒ君の“未来”に関わる人なのか。


 男はゆっくりとこちらを振り返り、静かに名乗った。


 旭将軍「俺の名は旭将軍。神話に終止符を打ち、新たな世界を創造する男だ」


 その言葉が落ちた瞬間、広場の空気が変わった。


 まるで、

 “物語そのものが書き換わる音”がした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ