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スタイリッシュに、大胆に、カッコよく

 アサコ ― 宇都宮城址公園・本丸跡 ―


 昼下がりの宇都宮城址公園は観光客の声も子供の笑い声も、すでに消えていた。旧創造神唯一派の武力蜂起によって非常事態宣言が出されたからだろう。もう誰もいない。

 本丸跡の芝生は陽に照らされて明るいのに、その明るさが逆に、胸の奥をざわつかせる。


 アサコ(……昼間の方が、緊張するわね)


 太陽の光が刀の刃に反射して眩しい。風は穏やかで、桜の花びらがひらひらと舞っている。


 アサコ「宇都宮城址公園かぁ……。昼間に戦うなんて、なんか修学旅行みたいね」


 本当ならアキナやトウカと笑って歩きたかった。楽しい観光をしたかった。

 でも、今は違う。


 さて、アキナを狙っていたナミカとマヤだけど――彼女たちは私のところへ来るだろうか?


 答えは、間違いなく来る。


 彼女たちの言動を聞いていれば分かる。

 旧創造神唯一派の行動は体制への不満ではなく“思想の押し付け”だ。第二特別隊を壊滅させて勢いづいているように見えるけれど、結局は何も解決策を示せていない。こんなやり方では、市民が共感するはずもない。そして味方も増えない。


 でも彼女たちはそれでいい。

 最初から社会を変える気なんてない。ただ自分たちの鬱憤をぶつける相手が欲しいだけ。女とか男とかの話も、結局は後付けの理由にすぎない。


 だからこそ――。


 ナミカとマヤは必ず来る。私に言い返された、その“仕返し”をするために。


 ザザザッ!


 アサヒクローンの群れが木陰から飛び出してきた。

 拳銃、刀、槍を構えている。

 それぞれが紫のオーラをまとい、空気がビリビリと震える。


 アサコ(ナミカとマヤはまだ……。先にクローンをぶつけて、私の動きを止めるつもりね)


 私は刀を構え、重心を落とす。地面の感触が足裏に吸い付くように伝わる。


 アサコ「ナミカとマヤと一緒に来られたら面倒だったけど……別々に来てくれて助かったよ」


 息を吸う。

 肺が冷える。


 アサコ「天輪斬翔てんりんざんしょう


 天の輪のように回転しながら飛翔し、アサヒクローンの群れを切り裂く。


 ズガガガガッ!!


 地面を蹴った瞬間、視界が回転した。自分の身体が“輪”になる感覚。太陽光が刀を通して屈折し、円環状の光が生まれる。


 ズガガガガッ!!


 光の輪が空間を歪ませ、クローンたちの認識を奪う。

 “どこから斬られたのか分からない”まま、身体が裂けていく。


 アサコ(視界を奪う……成功)


 クローンの群れが二つに割れた瞬間、私は次の構えに移る。


 アサコ「風心(ふうしん)


 刀を横に払う。空気が一瞬、沈黙した。次の瞬間、竜巻が生まれた。芝生を巻き上げ、片側の群れへと突撃する。


 ズバァァァッ!!


 アサヒクローンたちが削り取られ、空中で散っていく。


 だが――。


 アサヒクローンたち「陽炎」


 残ったクローンが一斉に残像を生み出し、四方八方から斬りかかってきた。視界が揺らぎ、距離感が狂う。


 ダァンッ! ダァンッ!


 背後から銃声。弾丸の軌道が空気を裂く。


 アサコ(囲まれた……けど)


 私は刀を握り直し、地面を踏みしめる。


 アサコ「巌壊弦破(がんかいげんは)


 空気が爆ぜた。


 ズバババババッ!!


 無数の斬撃が“空気の刃”となって放たれ、弾丸ごとクローンを切り裂く。

 衝撃波が芝生を波打たせ、桜の花びらが一斉に舞い上がる。


 静寂。


 アサコ「ふぅ。残りは……」


 バサバサッ。


 羽音。私は空を見上げた。


 巨大な蛾の背に乗ったナミカとマヤが、こちらを見下ろしていた。


 ナミカ「うそ……もう、絶滅したの?」


 マヤ「どういうことだい!? アサコは神祓高校一番の馬鹿で無能力だ!!

 それなのに、あの魔王アサヒのクローンを全部……?」


 二人の声が震えている。その顔を見て、私はゆっくりと笑った。


 アサコ「残り二人」


 足を一歩前へ。


 ナミカ「落ち着いてマヤ!!今、制空権は私たちのものよ!!ここから奴を削る!!」


 マヤ「了解!!ならまずは…」


 マヤの手に空気が凝縮するようにして“スプレー”が形成された。


 アサコ(……神使なしで武器形成?普通は不可能。となると――何か仕掛けがある)


 胸の奥がざわつく。私は腰を落とし、刀を構えた。


 マヤ「増殖連――」


 アサコ「紫電一閃」


 バキンッ!


 地面を蹴った瞬間、視界が縦に伸びた。重力が置き去りになる。雷のような加速で真上へ跳び、蛾の翅を貫きながらマヤのスプレーを突き刺す。


 マヤ「はっ、速い!?」


 翅に空いた穴から風が抜け、巨大な蛾がバランスを崩して落下する。だがナミカは即座にハンディファンを形成し、羽根を高速回転させてこちらへ向けた。


 ナミカ「繭縛糸まゆばくし!!」


 羽根の隙間から糸が弾丸のように射出される。


 アサコ「虹輪(こうりん)


 刀の刃に太陽光を通し、光を“ねじる”。屈折した光がナミカの視界を焼くように照らした。


 ナミカ「キャッ!!」


 狙いが逸れた糸は空へ流れ、その隙に私はハンディファンを斬り落とす。


 ナミカ「しまっ――」


 二人は地面に叩きつけられると思い、反射的に受け身を取った。その“受け身”が、逆に致命的な隙になる。

 落下の勢いを利用し、私は地面に着く直前で動いた。


 左手でマヤのラボコートの裾を掴み、そのままナミカの顔へ巻き付ける。左脚でラボコートを地面に押さえつけ、左手で締め上げてナミカの呼吸を奪う。

 同時に右手に持っている刀をマヤの首元へ。


 ドォンッ!!


 動作は一瞬。

 落下後、二人の身体が固まる。


 ナミカ「ふぅ!? ふぅう!?」


 マヤ「そんな……こんな一瞬で……?」


 アサコ「……」


 空気が張りつめる。二人の鼓動が…恐怖が手のひら越しに伝わってきた。


 アサコ「違ぁうっ!!」


 私が叫んだ瞬間、空気が震えた。解放されたナミカとマヤは地面にへたり込み、咳き込みながら私を見上げる。


 アサコ「これはカッコよくない!!」


 二人の肩がビクッと跳ねた。


 アサコ「確かにスタイリッシュで大胆だったよ!? でもね、“生々しい戦い”って違うの!私の理想はもっとこう……ドーン!とかババーン!とか!“決め技”で終わるやつなの!!」


 ナミカ「き、決め技……?」


 マヤ「アサコ……そこ……?」


 アサコ「そこだよ!!勝ちより大事なのは“かっこよさ”なの!!最後は大技で締めないと意味ないの!!これじゃあ女の子にモテない!!」


 私は刀と鞘をカチ、カチ、と落ち着きなく出し入れした。次の“決め技”を探すみたいに、身体が勝手に動く。


 ナミカとマヤは、さっきまでの戦闘よりも今の私の言葉の方に怯えていた。


 アサコ「これは私が君たちを魅了するための戦いなんだよ!?もう一回戦!! さぁ立つんだ!! 速く!!」


 ???「何だか楽しそうだね!! 私も入れてぇえ!!」


 マヤ「この声は!?」


 ナミカ「チハヤ!?」


 アサコ(来る!!)


 ???「青空キィイックッ!!」


 刀を構えた瞬間、空から何かが落ちてきた。


 ドガァンッ!!


 落ちてきたのは隼の顔を模したキャップを被った黒髪ショートの少女。私は刀で彼女の蹴りを受け止める。


 髪の後頭部は跳ね、隼の羽のように鋭い束感。

 制服は半袖短パン。

 足には翼の生えたスニーカー――どう見てもただの靴だ。


 アサコ(だけど刃で受け止めても切れない…やっぱりこのスニーカー!寿量で作られた武器か!!)


 チハヤ「私の名前は青空チハヤ!! 好きなものはハッピーエンド!! 苦手なものはバッドエンド!!」


 太陽みたいな笑顔で自己紹介してくる。


 アサコ「いい感性してるじゃない…!!」


 礼儀として私も名乗ろうとした。


 アサコ「私の名前は―――」


 チハヤ「知ってる!! 秋山アサコでしょ!? 私より馬鹿で退学しそうな子!!」


 アサコ「ぐはぁっ!! 心にクリティカルヒットぉお!! 今の一番効いた!!」


 ビュッ!


 風を切る気配。


 ガキンッ!


 私は反射的に刀でチハヤの足を弾く。


 チハヤ「おっとっと!」


 チハヤが大の字で宙に浮く。同時に、別方向から何かが飛んできた。


 バキンッ!!


 アサコ「隼か!! 小さい上に速い!!」


 アサコ(増援は一人だけじゃない…まだいる)


 刀を構え、気配を探る。


 殺気。


 バァアンッ!!


 アサコ(上空から…シンバルの音!?)


 真上から、嵐のような無数の斬撃が降り注いだ。


 ドガァンッ!!


 衝撃で煙が舞い上がる。


 ナミカ「やったの!?」


 その声を否定するように、私は刀で煙を一気に払った。


 アサコ「残念。あの程度なら技を使わなくても捌ける。とはいえ…」


 見上げると巨大な鷹に乗った少女がいた。


 鋭い金色の瞳。

 灰金色の風切りロング。

 頭には小さな羽飾り。

 白×焦げ茶の軽装巫女服。

 両手には小型シンバル。


 冷たい眼差しで私を見下ろしている。

 だが、私はむしろ燃える。


 マヤ「アマネとチハヤが来た!これで4対1!! 結果は目前だ!! 君の負けだよ!!」


 アサコ「アマネ…? 鷹に乗ってる子のことか!」


 マヤが勝ち誇るが、私はアドレナリン全開。


 アサコ「いいね…こうでないと面白くない!!やっぱりギリギリの灼熱バトルじゃないとカッコよくないよな!!」


 私は刀を掲げる。


 アサコ「さぁ! 思い存分魅せ合おう!!」


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