2-1
マリアナが俺の目の前で首を掻き切って死んだのは、魔法学園の卒業式の翌日だった。
◆◇◆
俺、エルヴィン・フォン・アルクライトは18歳だった。
アストリア王立魔法学園の最上級生で、もうすぐ卒業式が控えている。
婚約者の伯爵令嬢マリアナ・フォン・ローゼンベルクも同じ年でもうすぐ卒業だ。
学園の入学前の12歳で初めて会った婚約者のマリアナに、俺は出会った瞬間から恋をした。
マリアナも俺のことを一目で好きになったと、学園に通いはじめた後で教えてくれた。
真っ赤になって言うマリアナが可愛すぎて、俺の方が真っ赤になっていたんじゃないかと思う。
学園での六年間、マリアナとずっと一緒だった。
こんなに好きになって、マリアナが自分の全てのような気がした。
だから、卒業式の後は、俺たちにとって特別な日にしようと二人で決めた——。
「楽しみだな、卒業式」
「エルヴィンのエッチ……」
俺が言うとマリアナは真っ赤になる。
「エッチなのはマリアナ、俺は、卒業式が楽しみって言ったんだよ」
「……——!」
マリアナがますます真っ赤になって……可愛い!
やっぱり俺も真っ赤になってマリアナを抱きしめる。
そして、我慢できなくてキスしてしまう。
「んっ!」
マリアナの声、可愛い。
止められなくて、マリアナをたっぷりと味わって唇を離した。
マリアナが蕩けたような瞳で俺を見ている。
心臓が途端に跳ね上がる。
マリアナがペロッと舌を出して、唇についた俺の魔力を美味しそうに舐めた。
魔法使いの魔力は、触れ合うことでお互いに流れていく。
魔力の整った者と触れ合うと心地が良くなる。
偉大な魔法使いが小説などで人の良いお爺さんに書かれることが多いのは、この為だと言われている。
そして、特に体液を交換する触れ合いは強い快感をもたらす。
魔女が妖艶で悪く書かれるのは、この為だと言う。
キスした後の、マリアナはエロいっ!
俺の魔力が純度が高くて整いすぎていて、マリアナには受け止めきれないほどの快感になるらしい。
 ——キスなんてするんじゃなかった。
俺が受け取るアリアナの魔力も相当に甘美なのに、その後でマリアナのこの顔を見たら自分を抑えられなくなる。
マリアナともっとしたい、溶け合いたい、一つになりたい!
衝動を抑えられないと分かっているのにやってしまう、いや、もうずっと抑えられてないのか……。
約束の卒業式の後まで、我慢、我慢。
「エルヴィン……もっと……」
マリアナが俺に唇を向けて抱きついて来る。
これが一番辛い。
「も、もうダメだ。さっきまで俺のことエッチって言ってたのマリアナだろ」
俺はマリアナの身体を引き離す。
「エルヴィン大好きだもん、エッチでもいいの。エルヴィンは私の事、嫌いになったの?」
——大好きです。
エロくて、可愛くて、おかしくなる。
俺はマリアナを強く抱きしめた。
「……今はこれで我慢して……マリアナの魔力は甘いな……誰よりも甘い味がする」
服を着て抱き合ってるだけでも、魔力を感じて少しは気持ちいい。
「ダメ、エルヴィンとキスするの……!」
マリアナが言って、キスしようと俺の腕から逃れようとする。
本当にさっき赤くなってたマリアナなのか?
もう欲望に素直すぎて可愛い、早く俺もマリアナと一緒に素直になりたい。
そしたら、好きなだけ俺の魔力を喰らってくれ!
「……エルヴィン……もういい……」
マリアナから小さく声が聞こえる。
「元に戻ったのか……」
俺が抱きしめていた手を緩めると、真っ赤になってるマリアナがうなづいていた。
自分の大胆さに真っ赤になって可愛い。
「変になってる時のことは覚えてるんだろう?」
「……変じゃないもん、素直になっちゃうだけ」
素直って……。
「俺としたくてしょうがないって事だろう? マリアナ、エッチで可愛い! 卒業式が終わったらいっぱいしような!」
俺はマリアナを激しく抱きしめた。
「エッチじゃない」
マリアナが嫌がる。
でも、気にしない。
「マリアナ、早く君と一つになりたい、永遠にマリアナと一緒にいたい、もう離れていたくない、マリアナ! マリアナ!!」
エロ可愛い、マリアナ。
抱きあってるだけでおかしくなる。
「……もう、エルヴィンってば、エッチすぎる」
マリアナが興奮させるからだ。
「でも、俺の魔力はマリアナを、こんなに変にさせるほど特別なのか……」
俺はちょっと落ち着いた。
「エルヴィンの魔力は、純度は高くて魔力の配置が整ってるって先生が言ってるもんね。先生の言ってることは分からないけど、エルヴィンの魔力は他の人と全然違うの」
「マリアナはなんで他の人の魔力を知ってるんだ……」
それは……俺以外にマリアナが、キスしたり抱き合ったりした相手がいるってことで。
「え? 触ったらわかるもの……」
「俺はわからない」
「私は判別の能力が高いって先生に言われたのよ。魔力の質を早く判別できてもあんまり役に立たないみたいだけど」
「で、どんな触り方したんだ?」
俺はマリアナを膝の上に乗せて聞く。
「触り方って、たまたま触れる事あるでしょう? そういう時は、エルヴィンに触った時みたいなピリッて感じが全然しないの。オスカーとか」
そうか、俺ってピリッとするのか。
後、オスカーは、後で殺す。
「それより、私の魔力が誰よりも甘いって、触っただけじゃわからないエルヴィンが知ってるのなんで?」
「あ……」
マリアナが怒った顔をしてる。
「違う、小さい頃に、メイドの膝に抱かれて本を読んだり、従姉妹のメアリーと遊んで距離が近くなったり色々あるだろう」
「……本当かな」
本当!
「マリアナ、ヤキモチ妬いてるの可愛い。こんなにいつも一緒なのに、浮気なんてできないだろう」
「エルヴィンだって、私の事疑ったでしょう」
「一瞬だって触られたくない。マリアナは俺のものだ。触った奴は殺す」
「エルヴィンのもの?」
怒った?
「大好きだから、誰にも触れさせたくない。俺のものになってマリアナ」
「……うん。早くエルヴィンのものにしてね」
マリアナが俺に寄りかかって来る。
可愛いすぎるマリアナ。
俺のマリアナ——。




