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5-2

 そして、僕、カルエルとルナリアの一緒の生活が始まった。


 ルナリアはウサギを獲ってきて料理してくれる事もあったけど、魔法使いの塔の横にある畑を手入れして美味しい野菜に育ててくれた。


 ルナリアが来る前に僕が適当に蒔いた種は、手入れをしてないから育っても小さくてあまり食べるところがなかったのに、ルナリアが魔法を使って水をあげたり草をむしったり、手入れをして作ってくれた野菜は大きくなった。


 それから掃除や洗濯も魔法を使いながらしてくれて、魔法使いの塔の使ってない部屋も綺麗になった。


「ルナリアはここに来る前も、こんな風に家事をしていたの?」


 ルナリアはうなずく。


「一緒に住んでた人は心配してないの?」


 ルナリアが首を振る。


 一緒に住んでた人がいたのか……でも、心配してないってどう言うことだろう?


 ルナリアが辛そうに顔を歪める。


 ……嫌なところだったのかな……家事を押し付けられたとか……って、僕が今、ルナリアにやってることだ!


「ルナリア! 掃除の魔法とか教えて! 僕も手伝うよ!」


 けど、ルナリアは首を振った。


「……カルエルには難しいと思う……」


 え……僕、魔法には自信あったのに……。


 でも、ルナリアが掃除してくれたおかげで見つかった魔導書によって理由が判明した。


 掃除や洗濯の魔法はその汚れや対象の素材によって同じ魔法でも微妙に掛け方が違うらしい。

 汚れや素材の違いによる説明がずらっと数ページ続いていて僕は本を閉じた。


 ……確かに、僕には違いを全部覚えるのは難しい。


「……カルエルは魔法の研究頑張って……」


 ルナリアに、にこっと言われて僕は嬉しくなった。


 ただ畑の水やりとか、複雑じゃない事は、ルナリアに魔法を聞いて手伝えるようになった。


 ギュッとルナリアが僕の腕に抱きつく時がある。


「……カルエルの魔力、甘い……」


 目をつぶって僕の魔力を味わっているようなルナリア……。


 僕も抱き締めて、ルナリアの甘い魔力の匂いを嗅ぎたい……。


 でも、ルナリアに抱きついて嫌がられるかも……。


 ルナリアはまだ16歳くらいに見えるし……。



 ルナリアとは村にも一緒に行くようになる。


「カルエル……! なに、その子……!?」


 最初はかなり驚かれた。


 塔の前に倒れていて、ルナリアも魔法が使えたから塔に住まわせてると説明した。


 ルナリアが魔法を使えたから、村で預ると言われずにすんだ。


 僕は村の人たちから頼りにされてると思うけど、魔法使いは警戒されている。


 村では、ルナリアが塔で飼って卵を産ませたいと言うから鶏を買った。

 牛も買って牛乳とチーズもつくりたいらしいけど、それはずっと大変そうだからやめた。


「夫婦みたいね」


 そんな風に村のおばさんに揶揄われた。



 塔に帰るとルナリアが「夫婦ってなに?」と聞いてくる。


 ルナリアは料理とか畑とか、僕よりもずっと生活能力があるのに、変なところで世間知らずだった。


「……えっと……好き合ってる男の子と女の子が、結婚して一緒に住むこと……かな?」


 ルナリアの顔がパァと明るくなる。


「……カルエルと私、夫婦だね……」


 今の説明でそうなるの……?


 つまり……ルナリアも、僕のことが……好きって……。


 僕は意味に気づいて真っ赤になった。


 ——でも、違う。


「夫婦って、それだけじゃなくて他にも色々あって……抱き合ったり毎日して……」


 ギュッとルナリアが僕を抱きしめる。


「……カルエルも……」


 僕を見上げてルナリアが言う。


 僕はもうなにも考えられずに抱き締めた。


 ——ルナリア……!


 僕はルナリアの甘い香りに包まれた。


 僕の筋肉質の腕がルナリアの細い肩を抱きしめているのが見えて、ハッとする。


 僕はずっと小さな子供の頃のままだと思ってるけど、本当はもう20歳で、ルナリアよりずっと大人なんだ……。


 なのに、ずっと魔法の研究ばかりして、子供っぽくて……。


 ルナリアの方が、料理も出来て掃除も出来て、ずっと頼りになって……。


 夫婦になっても、ずっと僕がルナリアに甘えるだけだ。


 身体はもうこんなに大人なのに……ルナリアを抱きしめてる自分の腕にドキドキする。



「……夫婦になった……?」


 ルナリアに聞かれて、ルナリアを抱いていた腕を引き離した。


「な、なってないよ! 夫婦はもっとすることがあるからっ!」


 そんな事を今しても、単に僕がしたいからで、夫婦になってルナリアを守ってあげられない……!


 ルナリアはキョトンとしている。


「…………どんな事……?」


「じ、自分で辿りつけないと、ふ、夫婦にはなれないから……!」


 僕が叫ぶと、ルナリアは悲しそうな顔をした。


「……分かった……」


 ルナリアは納得してくれた。



 次の日ルナリアは一日中出掛けていた。


 怒ってどこかに行っちゃったのかも……。


 日が落ちる直前に帰って来たルナリアは、食料をたくさん持って帰って来た。


 村に行っていたらしい。


「……夫婦になる方法を教えて貰った……」


 え……。


 ルナリアの頬が少し赤くなってる所を僕は初めて見た。


 む、村の人たちっ!!


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