3-3
上級科の入学式で俺とマリアナは注目の的だった。
「は、恥ずかしい、エルヴィン……っ!」
マリアナが俺の横で真っ赤になってる。
俺に肩を抱かれて学園を歩くなんて、前回ではずっとやってた事なのに。
「ついこの間の卒業式でルカスにキスしておかしくなってたのに……入学式ではエルヴィンとなんて……!」
まあ、マリアナが男を乗り換えたように見えるかもしれない。
「ルカスといたのがおかしいんだ。マリアナが俺といるのは正常なんだから、もっと見せつけてやらないと!」
俺はマリアナをもっと強く抱き寄せる。
「エ、エルヴィン……っ!」
マリアナは本当に真っ赤になって恥ずかしがってる。
ああー、可愛い! 可愛すぎる、マリアナ!!
押し倒して、キスしたい!
もっとマリアナのこと、おかしくした!!
「な、なんで、エルヴィンとマリアナが……!?」
声がした方を見ると、オスカーがいた。
「驚く事ないだろう、マリアナは俺のものだって言っただろう?」
「そんなのお前の頭がおかしいだけだって思うだろう、普通!」
そんな話をしているとメアリーもやって来る。
「マリアナ、良かったわね! エルヴィンは絶対にマリアナの可愛さに我慢できなくなると思ってたわ」
「うん、ありがとう、メアリー」
マリアナが俺の腕から離れてメアリーのところに行ってしまう。
マリアナが俺よりメアリーを選んだことがショックだ。
だいたい、マリアナの可愛さに我慢できないなんて当たり前なんだ! 三年も我慢出来たことを褒めろ!!
その前の十七年も耐えたのに!!
でも、メアリーと笑い合ってるマリアナも可愛くて……オスカーと俺が後をついて行く日々も懐かしかった。
「……ルカス」
マリアナが、目の前の男に声をかけた。
つい先日まで、マリアナの婚約者で恋人を殺された男だ。
表情は暗い。
「あの……侯爵令嬢のこと……」
ルカスが顔を辛そうに歪めた。
恋人と初めての朝に彼女を家に送り届けた後で、彼女が消えて遺体で発見された男。
前回の俺と似ているが……。
メイドが、ルカスは、侯爵令嬢を送り届けて、そのまま卒業式に向かったと証言している。
そして、ルカスが卒業式に出ていた事はみんな知っている。
だから、ルカスは誰の目にも恋人を殺された男に映っていた。
——俺、以外には。
「……僕のことは…………マリアナ様とエルヴィン様が上手くいって良かった……」
そう言って去るルカスの背中は、恋人を失った悲しみに耐えているように見える。
マリアナが俺の腕に触れる。
ルカスに怯えているようで、同情もしているように見える。
ルカスとマリアナの婚約破棄はマリアナの両親が進めて、問題なく終わっていた。
ルカスのヴァイス子爵家は前回は探してもなかったのに、どういうことなのか?
俺がヴァイス子爵家について訪ねると、次の婚約者になる俺が首を突っ込むと拗れるからと教えてもらえなかった。
それはもっともで、刺激したくもなかったから、そのままにした。
ルカスが、完璧に同情を誘う男になっているからこそ、疑念が積み上がる。
ルカスは、また俺とマリアナをくっつけて、何を狙っているんだ……。
『アルヴィン……あの時と同じか……』
マリアナが聞いたという、ルカスの心の声。
この学園の初代学園長のアルヴィンが手掛かりになるのか——?
◇
図書館でアルヴィンのことを調べてみたが、五百年も前の人物だし、特に当たり障りのないことしか書いてなかった。
マリアナとメアリー、オスカーも一緒に図書館に来て本を読んでいた。
マリアナはいいけど、メアリーとオスカーは邪魔だな。
もっとマリアナとだけ一緒にいたい。
調べものが終わって、本を読んでいるマリアナを抱きしめて、耳を甘噛みしたり、首筋にキスしたりしていると、
「さすがにうざいわ、エルヴィン」
メアリーに言われる。
「マリアナもちゃんと言わなきゃ」
「でも、いつものことだし……エルヴィンがしたいなら……」
マリアナが良いって言ってる。
「うん、したい! いっぱいする!」
もっと強くマリアナを抱きしめる。
「そ、それは、本が読めなくなるわ! エルヴィン」
「図書館だってゆーの! 何しに来たんだ……」
オスカーが呆れてる。
こんな、可愛いマリアナを相手にしなかったなんて、絶対に俺じゃない。
アルヴィンは俺の前世じゃない!
「初代学園長のアルヴィンのこと調べてたの?」
メアリーが俺の読んでいた本に気づいて言う。
「ルカスに最優秀生徒を取られたから、先生の受け狙いで対抗しようっていうの?」
違う。
「へー、でも、初代学園長って言えば、怖い噂があるよな」
オスカーが言うが、知らない。
「市場の広場で、自ら喉を掻き切って死んだっていうやつだ、知らないのか?」
「……は……?」
マリアナと同じ死に方……。
俺の……前世が……。
ゾクッと背筋が冷たくなる——。
マリアナも首筋を触っている……。
——何かつながりがあるのか?




