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私は幸せの絶頂で必ず殺される。数百年、何度も失った彼は、今度こそ私を絶対に救う。  作者: 唯崎りいち
ルカス

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16/23

3-1

「マリアナ……」


 私は誰もいない教室でルカスにキスしていた。


 この魔力、エルヴィンと同じ……。


 エルヴィン! エルヴィン!!


 整いすぎた純度の高い魔力。


 エルヴィンの魔力に何も考えられなくなった私は、エルヴィンの魔力を求めてルカスにキスしている。


 頭がボーッとして、自分が何しているのかも分からなくなってる……。


 ——でも、私は魔力が欲しいんじゃない。


 私は、エルヴィンだから……エルヴィンだから触れていたいと思うの。


 そう、素直になるだけ……。


 あ……でも、違う……!


 今、触れている腕が、身体が、エルヴィンじゃない!


 あ、嫌だっ!


 エルヴィン! エルヴィン!!


 嫌なのに……身体が離せない……。


 ——っ!


 ルカスが、私の身体を離す。


「マリアナ……この魔力はエルヴィンのものだ」


 私はルカスの唇をボーッと見つめる。


 大好きなエルヴィンの魔力がある場所……。


「この魔力が欲しいなら、エルヴィンから貰え」


 ルカスが言う。


 うん、エルヴィンがいい……エルヴィンじゃなきゃ嫌だ……。


 私はうなずいた。


「エルヴィンは、まだ学園にいる」



 私は、ルカスから唇が離れて頭がはっきりしてきた。


「……ル、カス」


「良かった……マリアナ様……何ですか?」


「……え? 私、ルカスとなんで、教室にいるの……?」


 ルカスが赤くなった。


「……マリアナ様が、僕に最優秀生徒のキスをしていたら、止められなくなって……先生方に避難させられたんです……」


 ルカスは、本当に本当に真っ赤だった。


 私も同じように真っ赤になる。


 ルカスの口からエルヴィンの魔力を感じて……おかしくなっていって……。


 前回の記憶では、エルヴィンとキスすると、私がおかしく——素直になっちゃうから、エルヴィンがすごく慌ててた気がする……。


 私も、なんとなくおかしすぎるって思っていたけど……それを人前で!?


 最優秀生徒のキスで——!


 前回の最優秀生徒はエルヴィンとだったから、なんとかなった……なってなくても、仲が良すぎる婚約者同士ってことで私も気にならなかったけど……。


 ルカスに対してあんなキスしてたらおかしいわ!?


「先生が言ってました。たまに魔力に惹かれすぎる生徒がいるって。マリアナ様は魔力判別能力が高すぎるからそのせいだろうって」


「……そうなの……」


 前回も聞いた気がするけど、エルヴィンとだったから、あまり危機感を持ってなかった。


 まさか、殺された相手とキスしておかしくなって、さらに二人っきりになるなんて……。


 二人っきり……ゾクっと背筋が凍る。


 ルカスは人の良い顔で困っているのに……。


「あ、侯爵令嬢に見られたら困るでしょう……あ、そうか、侯爵令嬢は行方不明って……」


 ルカスは、侯爵令嬢が行方不明と騒がれてるのは、行き違いがあっただけだと言っていたけど……。


「ああ、そうだ、侯爵家に戻っていると思うので会いに行きたいんですけど……」


 ルカスは私の様子を見て言う。


 ああ……私のせいで帰れなかったのよね……。


「ごめんなさい。侯爵家に行って、早く侯爵令嬢に会ってあげて……」


 ルカスは、侯爵令嬢が心配なのか、すぐにでも出て行きそうだったけど、


「……待って、ルカスのキスで感じる魔力が、触って分かる魔力と違っているの……なんで?」


 キスの魔力はエルヴィンのもので——。


「ああ、僕は体の中が魔力が外と違うらしいんです」


「え?」


「外の魔力より、中の魔力が整っているから、驚かれるんです」


「そうなの……」


 でもエルヴィンと同じ魔力だったのはどうして……?


 説明になってない事がある——。


 ルカスは、荷物を持つと、本当に急いで侯爵令嬢の元に向かって行く。


 でも、教室を出る前に私を振り返る。


「エルヴィン様は、二階の廊下に居ますから、仲良くしてくださいね、マリアナ様……」


 ゾッとする。


 他意は無さそうな善良な表情に底知れなさを感じる。


 でも、私は、「ありがとう」と微笑んだ。


 どうしてルカスは、私とエルヴィンを応援してくれるの?


 ルカスに好きな人がいて、婚約者の私も別の人が好きな方が都合が良いから?


 ——『この魔力が欲しいなら、エルヴィンから貰え』


 エルヴィンの魔力に包まれる夢の中で、聞いたような気がする……。


 それから——、


 ——『アルヴィン……あの時と同じか……』


 ルカスから流れ込んできた記憶……エルヴィンがアルヴィンと同じ?


 アルヴィンって誰……?


 甘い匂いが鼻をついて、誘われるように唇を舐める。


 唇に残ったエルヴィンの魔力が身体を駆け巡る。


『エルヴィン様は、二階の廊下に居ますから——』


 エルヴィンがいる——。



 俺が廊下で物思いにふけっていると、声が聞こえた。


「……アルヴィン……」


 マリアナの声。


 暗い教室の廊下の先にマリアンがいた——。


「……あ、違う……エルヴィン……」


 マリアナの虚な目が、俺とキスした後みたいだ。


 卒業式の最優秀生徒のキスで、ルカスの唇を貪るように求めて、教師たちにルカスと一緒に連れて行かれていた。


 ルカスの魔力も俺の魔力くらい、君をおかしくさせるものだったのか?


 それで、今までルカスとキスしてたのか——。


 グサッとナイフで心臓を刺されるような痛みだった。


 でも、俺が望んだ事だ。


 ——これは——仕方ない……っ!


 マリアナを守る為だ——っ!


 それより、マリアナが俺をアルヴィンと呼んだッ!?


 このアストリア王立魔法学園の初代学園長がアルヴィンだ……。


 俺と同じ魔力をしていた……五百年前の人物。


 『——前世の私なんて知らない! やめて!』

 『思い出したくない!』


 マリアナは死ぬ前に言っていた。


 前世を知ってるマリアナが俺をアルヴィンと呼んで——っ。


 俺が、本当にアルヴィンなのか——?



 マリアナが俺の首に抱きつこうと手を伸ばす。


 さっき、卒業式の壇上でマリアナがルカスに同じように手を伸ばして、キスしていた。


 魔力におかしくなったマリアナが俺の魔力を求めてる——俺の魔力に触れて、マリアナも本当に俺の魔力を求めていたと証明されるのは嫌だ……!


 サッと身体が動く。


 俺が避けると、マリアナはそのままバランスを崩して倒れそうになる。


「あ……エルヴィン……」


 マリアナが悲しい声を上げる。


 倒れていくマリアナ——。


 マリアナを避けて、それで、何を守っているんだっ! 俺はっ!!


 ドサッ。


「エルヴィン……」


 倒れたマリアナの下に俺はいた。


「……怪我してないか、マリアナ」


 マリアナは、俺を無視して俺の唇を奪う。


 やっぱり、俺の魔力が欲しかったのか? マリアナ。


 マリアナの甘い魔力が俺にも流れ込んでくる。


 ——俺も、ずっとこうしたかった……。


 ……十七年と三年ぶりのマリアナだ。


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