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私は幸せの絶頂で必ず殺される。数百年、何度も失った彼は、今度こそ私を絶対に救う。  作者: 唯崎りいち
エルヴィン

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2-7

 一年生に俺の魔力判別学の授業が始まった。


 たった数回だけの授業だ。


 最初の授業で、魔力判別を生徒全員にする。


 紙に手を押してけて俺が判別の魔法をかけると、魔力の波形が紙に転写される。


 正確な波形が出るわけではなく、手の置き方が悪いともっと不正確になる。


 だから俺が全員の手を正しい位置に置くのが毎年の授業だった。


 ——ただ、今年は違う。


 ミリアに触れなくていいように、手の位置は全員直さない。


 正確に魔力の波形を測る事が目的の授業ではないからこれでいい。


 やはり、エミリオが一年生では一番魔力が整った形になっている。


 ミリアとエミリオは授業中では普通だったが、授業が終わると二年生のリオンがすぐにミリアに会いに来ていた。


 俺は授業が終わってすぐに自分の研究房に戻るからそこまでの様子しか近くで見れないが、リオンの行動は異常ではないか?


 授業と授業の合間ちょっとした時間もミリアと離れたくないなんて——ミリアにどんな魅力があると——。


『……マリアナ魔力は甘いな……誰よりも甘い味がする』


 ——そう言ったのは俺だ……。


 ミリアの魔力もマリアナと同じなのか……。


 抱き合ったりキスして確かめる方法しか、俺は知らない。


 まさか、19歳も年下の生徒と……!


 振り返ると、リオンがミリアを抱きしめていた。


 ミリアもそれを受け入れていて……。


 教室の奥ではそんな二人を見つめるエミリオがいて……今の俺の姿に重なって、胸が締め付けられる——。


◆◇◆


「おはようございます! エルヴィン先生」


 珍しく一人のミリアが俺に挨拶した。


 リオンと一緒じゃないミリアにホッと安心する。


 それだけの朝だった——はずなのに。


「あ、エルヴィン先生、肩にゴミがついてます」


 ミリアが俺に手を伸ばした。


 俺にミリアが触れる——。


「触るな!」


 俺は大声で叫ぶと、持っていた本の束でミリア手を払いのけた。


 本を束ねていたブックバンドが弾けて本が地面に落ちた。


 ミリアが驚いた顔をする。


 俺自身もここまで強くミリアを拒否したこと驚いている。


 ——『ミリアがマリアナなら、エルヴィンに触れた瞬間にお前を好きになる——』


 ミリアとエミリオが手をつなぐ姿に嫉妬して、ミリアとリオンが抱き合う姿に傷ついて……ミリアの隣に立つ男になりたいと、少しは思っていたんじゃないのか……!?


 それよりも、マリアナが俺の魔力を好きだった事が証明される事が辛い。


 俺を拒否して、自分で自分の首を掻き切って死んだマリアナ——。


 もし、もう一度、ミリアが俺を好きになっても……結果は同じ……。


「必要ない、俺が拾うから、何処かに行ってくれ」


 落ちた本を拾おうとするミリアに言う。


 地面に落ちた本を拾っている俺にミリアの顔は見えないが、きっと俺を不審に思っているだろう。


 ミリアの足が視界から消えた。


 俺から離れて、もう挨拶もしなくていい。


 離れてくれ——もう、二度と俺に近づかないでくれ——!


 俺とミリアはもう関わらなくていい——。


「エルヴィン、何をしてる」


 聞き慣れない男の声がする。


 聞き覚えはある、でも、歳を重ねたような声。


「久しぶりだな、姪が世話になってるそうだな」


「——ルカス……」


 ミリアが、ルカスの姪……。


 ミリア・ヴァイス、ああ、そうか、聞き覚えがあった筈だ。


 ——ルカス・ヴァイス。


 マリアナが死ぬ直前まで一緒だった男。


 マリアナが死んだ後に消えた。


 あの頃の俺は、マリアナの死の衝撃で、ずっとルカスの事など考えられずにいた。


 後から、ヴァイス子爵家など最初からなくて、ルカスは行方不明だと聞いた。



「ルカスおじさん、エルヴィン先生の事を知ってるの……?」


 ミリアがルカスの横で聞いている。


「ああ、この学園でずっと同級生だった」


 そう言うとルカスはミリアの手を掴んで、俺の手と握らせる。


「なんで僕の姪を避けるんだ……二人が仲良くなってくれたら嬉しいさ」


 俺はミリアに触れてしまう——。


 ミリアの身体が跳ねて、俺を驚いたように見つめる。


 マリアナが離れられなくなった、整いすぎた俺の魔力。


 マリアナが死んだ日から、魔力の量は半分になったけど、魔力の質は変わっていない。


 ミリアがずっと俺を見ている。


「遅くなったが、マリアナを君に返す。今度は、ちゃんと可愛いがってやってくれ——」


 ルカス俺の耳元で囁いて、去って行く。


 マリアナを返す——違う、彼女はミリアだろう。


 知っていて……ルカスは、知っていてミリアを引き取って育てている——。


 叔父というのは本当なのか?


 マリアナが死んだ後、ルカスのヴァイス子爵家は無かったんだろう?


『今度は、ちゃんと可愛いがってやってくれ』


 ——。


 まさか……。


 俺にミリアを引き合わせるために——。


 ミリアと両親を引き離したのではないか……?


『死んじゃったから、ずっと昔の事だけどね』


 ルカスが、ミリアの両親を殺して……?



「エルヴィン先生……」


 ミリアが俺を心配そうに見ている。


 その瞳に、どこか、今までと違う熱がある。


「大丈夫ですか?」


 そして、俺に手を伸ばす。


 触るなと言ったのに……!


 俺の魔力がミリアをおかしくする——マリアナをおかしくしたように……!


 だから、ルカスに狙われた——。


◆◇◆


 俺は走った。


 アルトリア魔法学園の最奥の禁忌の魔法が封印されている場所——。


 この魔法を使えば、またマリアナに会える。


 ただの伯爵令嬢で俺の婚約者だったマリアナ。


 ——それが本当に真実だったのか?


 あの日、ルカスに会った後に死んだマリアナ。


 『前世の私なんて知らない!』


 『マリアナを君に返す——』


 俺にマリアナを返すと言ったルカス。


 あの日まで、接点の無かった二人のはずだった。


 接点があるなら、前世——なのか。


 ともかく、今は俺と一緒にいたマリアナの事が知りたい——俺のことを、本当はどう思っていたのか。

 

 俺は禁忌の魔法を手に取る。


 17年間、使いたいのに使うことをためらっていた魔法。


 時を戻す禁忌の魔法——。


 時環回帰(クロノス・リヴァース)


 これを使えば、会える——マリアナに!


 俺は、禁忌の魔法を使った。


 そして、マリアナとはじめて出会った頃に戻る——。


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