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私は幸せの絶頂で必ず殺される。数百年、何度も失った彼は、今度こそ私を絶対に救う。  作者: 唯崎りいち
エルヴィン

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2-6

 オスカーの一年生の魔力力学の授業はすぐに始まった。


 マリアナの生まれ代わりだと信じているミリアの前で、オスカーはどんな風に授業をしているんだろうか。


 俺のマイナー学科を一年生が受けるのはずっと先だった。


 ミリアと顔を合わせることは当面ないはずだった——。


「エルヴィン先生!」


 オスカーの息子のエミリオがやたらと話しかけてくる。


「母に頼まれて持ってきました。お昼に食べてください」


 エミリオの母親で俺の従姉妹のメアリーが色々と息子に持たせてくる。


 今までもオスカーに頼んでいたんだろう。


 オスカーは断ってくれていたんと思う。


「母さんが父さんに行っても全然届けてくれないって、いつも言っているので」


 やっぱり。


「ふふ」


 ミリアがかすかに笑った。


「私のお母さんもエミリオのお母さんと同じ事をお父さんに言ってたの。死んじゃったから、ずっと昔の事だけどね」


 俺から離れてミリアとエミリオが話している。


「え……ミリアのお母さんとお父さんって亡くなってるの!?」


「うん、今はおじさんに引き取られて一緒に住んでるのよ」


 新学年になって会ったばかりなのに、もう仲良くなってる……。


 ミリアを見かける時はいつもエミリオと一緒だった。


 エミリオしか見えないかのようにずっと見つめている——マリアナが俺を見ていたように……。


 二人は手をつないで、俺から遠ざかって行った——。



 そんな事が何度も続く。


 従姉妹のメアリーに世話されてる、独身の35歳の教師の事を、ミリアはどう思っているんだろう。


 いや、生徒からどう思われているか気にしている俺がおかしい。


 19歳も歳が違うのに——って、歳の差なんて気にするな、気持ちが悪い!



 マリアナの事をずっと想っているのに、ミリアの事を考える時間が増えた。


「エルヴィン先生」


 ミリアから声を掛けられる。


 いつもエミリオと一緒にいるだけのミリアなのに……なんだ!?


「おはようございます!」


 あいさつして教室に向かって行っただけだった。


 ——。


 でも、ミリアが、俺の事を知って、名前を呼んだ——。


◆◇◆


「俺もミリアから『オスカー先生』って呼ばれてる」


「魔力力学の授業を受け持ってるんだから当然だろう」


 俺はオスカーの研究房に来ていた。


 ミリアがマリアナの生まれ変わりかどうか、オスカーの研究に進展があったか聞くためだ。


「いや、俺にはミリアがマリアナの生まれ変わりかどうかはわからない。正直、他の女生徒と同じにしか見えない。むしろ、お前がどうしてミリアをマリアナだと思ったのか知りたい」


「……今まで研究してたのにそれか……それで、俺がミリアをマリアナだと思った理由? 最初に会った時にマリアナだと思ったんだ……エミリオの隣に女の子がいて……」


 女の子がいると思った瞬間にマリアナだと思った。


 まだ遠くて、顔も見えなかったのに。


 俺は何で彼女がマリアナだと思ったんだ——?


「……やはり魔力か……」


 オスカーが言う。


「……俺は見ただけじゃ魔力の波形なんてわからないぞ。魔力判定が得意だったマリアナだって、触れないとわからなかったんだ」


「でも、何かは感じたんだろう? それにミリアの魔力の波形がマリアナと同じかどうかは知りたい。俺も聞ける範囲でミリアに聞いたが、それはマリアナと同じだった。ミリアに触れてみたけど、俺にはマリアナの判別は出来なかった……」


「ふ、触れた!? ミリアに!? お前、教師だろう!?」


「魔力力学の授業内で実演する時に生徒一人と触れる必要があるから、ミリアを選んだだけだ」


 いいのか、それは?


「俺は分からなかったが、エルヴィンなら分かるんじゃないか? 魔力判別学の授業でミリアに触ってみれば……!」


「授業内で判別のために全員に触れる事はあるが、俺だって触れるだけじゃ判別できない、よほど強く結びつかないと——マリアナとのように——」


 想像しそうになってやめる。


 マリアナの事は毎日思い出しているけど、ミリアは生徒で、19歳も年下なんだ!


 キスなんて出来ない……。


「授業内でなんとかならないか?」


 なるかっ!


「……オスカー、お前の息子の彼女なんだろう」


 俺はミリアとエミリオが手をつないで、ずっと一緒にいる様子を思い出して言う。


「……それが違うらしい。最近のミリアは二年生の男子生徒と一緒にいる」


「え……?」


 マリアナが——俺以外の男と一緒にいるなんて考えられない……。


 ミリアも、エミリオを選んだなら、ずっとそいつと一緒にいるはずだろう……。


「リオン・ハーシェルって男爵子息だ。たぶん、この学園で一番、魔力が整って、強い生徒だ——」


 覚えている。


 俺の魔力判別学の授業で、魔力の判別をした時に、突出して魔力の純度が高く整っていて話題になった。

 俺ほどではなかったが……。


「リオンは男爵子息で、侯爵子息のエミリオより身分は下だ。見た目だって俺に似て、エミリオの方が勝ってる。ミリアは身分ではなく、魔力に惹かれてるんじゃないか? 一年生に男子に限ればエミリオが一番魔力が整っているんだ」


 ミリアが魔力で男を選んでる……?


 だからマリアナは俺を……。


「エルヴィン、お前にミリアの魔力の判別が出来なくても、ミリアならお前に触れただけで、お前の魔力が一番、純度が高く整っていると思うんじゃないか?」


「オスカー……」


「ミリアがマリアナなら、エルヴィンに触れた瞬間にお前を好きになる——」


 でも、それは、マリアナが好きだったのは俺の魔力だったという証明で——。


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