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私は幸せの絶頂で必ず殺される。数百年、何度も失った彼は、今度こそ私を絶対に救う。  作者: 唯崎りいち
エルヴィン

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2-4

 アストリア王立魔法学園は最上級生を送り出した後も、いつもと変わらない日々が続く。


 新しく新入生が入り、上級科の二年生が最上級生になる。


 ただ、卒業式の翌日からしばらくは長期休暇になり、普段は賑やかな学園も静寂に包まれる。


 今は、マリアナが死んで17回目の卒業式が終わって、学園は長期休暇に入ったところだった。


 俺はそんな静かな学園に一人でいた。


 俺、エルヴィン・フォン・アルクライトは35歳になっていた。


 俺は、嫡男でアルクライト公爵家の跡取りだったが、マリアナが死んでから何もやる気が起きずに部屋に引きこもっていたら、弟が公爵家を継ぐことになった。


 学園で先生をやっていたオスカーが見かねて俺を助手にした。


「マリアナを救う魔法があるかもしれない」


 オスカーは俺に言った。


 オスカー自身が学園で生まれ変わりについての研究をしていた。


 オスカーが密かにマリアナに想いを寄せていたのは気づいていたが……ここまで想っていたのか。


 だが、オスカーはメアリーと結婚して子供も生まれていた。


 時間は流れている——俺以外には……。



 

 ——いやだ! 思い出したくない! いやー

 ——前世の私なんて知らない! やめて!


 あの日——マリアナが死んだ日。


 俺の頭の中に直接響いてきたマリアナの声。


 マリアナは『前世』と言っていた。


 人が生まれ変わることは本当にあるのかもしれない。


 オスカーの研究は意味のあることだと思う。


 けど、俺は生まれ変わったマリアナに会いたいんじゃない。


 あの——俺のマリアナに会いたいんだ——。




 アストリア王立魔法学園の最奥。


 厳重に守られた場所。


 禁忌の魔法が封印されている。


 入る為には、十の高度な魔法が必要だった。

 十人以上の高位の魔法使いが、一人一つの高度な魔法を同時に使ってやっと封印を解くことができた。


 しかし、俺は最初の封印を解くだけで中に入ることが出来た。


 マリアナを救う魔法がここにあるかもしれないと封印を解く方法をずっと探していた。


 試しに一度だけバレて罰を受ける覚悟で表層の封印を解いたら、そのまま中に入れてしまった。


 この封印を施したアストリア王立魔法学園の初代学長だった当時のこの国の第三王子アルヴィン・アストリアと、俺の魔力が同じだったらしい。


 マリアナを虜にした、整いすぎた俺の魔力が、禁忌の魔法への道を開いてくれた。


 ——封印された魔法を手に取る。


 もう何度となくこうして手に取っている。


 この魔法を使えばマリアナに会える。


 次は救ってみせる!


 そう思うのに実行できない。


 あの時、いなくなったマリアナと再会して俺が触れようと手を伸ばしたら……。


 マリアナは俺の手を振り払って、後退った。


 恐怖に満ちた瞳で、刃物に手を伸ばしたマリアナが、自分で自分の喉を掻き切った。


 ——そこまでして、俺に触れたくなかったのか……。


 マリアナに会うということは、俺を拒絶した理由を知るということ。


 ——マリアナが、俺を嫌いになったんだとしたら……。


 俺から逃げるために、死を選んだだとしたら——。


 俺は、禁忌の魔法を元に戻す。


 俺は、真実を知るのが怖かった。


◆◇◆


 休暇が終わって学園に生徒達が戻ってくる。


 俺はオスカーの助手をしていたが、今ではしっかり学園の教師の一人にされていた。


 マイナー科目で教える者がいない科目も俺なら教えられる。


 学園を首席で卒業して、珍しいくらいの整った魔力があって、魔力量も通常の倍以上ある。


 学園はじまって以来の天才や、初代学長のアルヴィン・アストリアの再来と言われたけど、俺には何も出来なかった。


 ただ、足りない科目を教えるのに便利に使われているだけだ。


 ただ、ほとんど授業がないのは助かる。


「エルヴィン、お前も学長のところに行くのか?」


 オスカーに会った。


 新学年が始まる時には、今後の予定を学長に貰いに行く。

 教師によっては先に希望を伝えたりするそうだが、俺は言われた通りにやるだけだ。


「エルヴィン……」


 学長は昔から俺を知っている。


 慰めの言葉を言われたことみあるが、もう何も言わない。


 オスカーと学長が何やら目で会話していたが、俺が変わることはないだろう。


 俺とオスカーは学長室を出る。


「うちの長男も今度、上級科の一年になるんだ。エミリオって名前で俺にそっくりだからすぐに分かる」


「ああ……」


 オスカーと俺の従姉妹のメアリーは、学園を卒業してすぐに結婚して子供が生まれた。


 マリアナが死んだ後に産まれた子がもう16歳になって上級科に入ってくる年になったのか。


「あ、エミリオ? なんで、ここにいるんだ?」


 目の前に居たには16歳の生徒で……生徒なんて見慣れているのに、マリアナを思い出した後のせいか、自分と変わらない歳に見えた。


 俺はずっと18歳のまま、時間を止めているから——。


「しかも、女の子も一緒……!?」


 エミリオの横には、女生徒がいた。


 ————マ、リアナ……——。


 マリアナ——!


 なんで、マリアナが、あの頃のままで、ここにいるんだ……。


「……ん? エルヴィン?」


 オスカーが、俺を不思議そうに見た。


 エミリオといる彼女は、マリアナだった。


 ずっと会いたかったマリアナ。


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