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虹倉姉妹  作者: 加藤無理
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距離感を考える

 武は考えた。あの若い女二人をどうやって勧誘してバンドを結成させるか。何度も呼びかけると更に警戒されるし、ストーカー容疑すらかけられるだろう。


 あの技術を持ちながら、他のメンバーと組まない理由が不思議だ。二人きりで音楽を楽しみたいならばギターを利用すれば良い。ベースとドラムにこだわるのは何故か。確かにベースもドラムも無いバンドは成り立つようでいて成り立たない。ギターやトランペットやピアノは独奏ならばそれなりに美がある。しかし複数での演奏となればベースの低音とドラムのリズムは不可欠だ。二人はそれを熟知しているようだが、ベースとドラムだけでもバンドは成り立たない。何事も釣り合いが大事だ。


 才能も容姿も武より遥かに魅力的な音楽家ミュージシャンに先に勧誘されたら非常に嫌だ。武は少し焦った。しかし、あの二人の連絡方法は分からない。分かっても無闇に近寄れない。


 午前中に日課の練習とメンテナンスの後、武は遅めの昼食を摂った。その後にSNSを覗いたらファン達が、

「この間のベーシストとドラマーは貴重だよな」

「そうだね。皆、ギターをやりたがるものね」

「武と組めば良いのにな。あっと言う間に人気が出るぞ」

「実際、演奏を聴いてみないと分からないけどね」

 二人について話し合っていた。武はもう一度、千葉県のあの公園に行ってみようと考えた。場所はうる覚えだが何とかなるだろう。


 武は十月に再度、公園に向かおうと考えた。武の住む北海道では雪が降り始めているが、千葉県では全く雪の兆しは無い時期である。


 あの二人は頻繁にあの公園で演奏しているのか、それとも全国各地を転々としているのか分からない。しかし、このままでは全くアテがない。


 武はそこら辺の男と同じで美人好きだけれど、唯美主義ルッキズムでもない。あまり二人の女の容姿を覚えていない。美醜のほどは分からない。けれども直接会えば判別出来る自信があった。音楽を糧にしている者ならば二人の才能を看過出来るはずがない。


 むしろ武は昨今の唯美主義者に少しだけ辟易している。音楽家は楽曲で評価されるべきだし、小説家も漫画家も作品で評価されるべきだ。何でもかんでも容姿で判断して醜ければ排除する風潮は幼い。たとえ美容に気を遣えたとしても、醜ければ心も醜いと決めつける者の心もまた醜いだろう。


 武のファンは武の容姿を褒めるけれども、アンチはキモイキモイと罵倒する。ブロックしたり運営に報告したりするが甚だ不快だ。武自身は自分の容姿が良いとは思っていない。


 音楽仲間では男らしさを保ちながら絶妙に化粧したり肌の手入れをしたり美容に気を遣う者が少なくない。武は彼等を全然否定しないが自分で実行するのは面倒だと思っている。


 昔の唯美主義や審美主義は醜い存在を蔑むより美しい存在を求めていた。芸術至上主義に近い。

唯美主義とルッキズムは違う。ややこしいけれど。

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