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虹倉姉妹  作者: 加藤無理
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武の人気

 優花は夏休みが終わる前に東京のアパートに戻った。早速、DVDを視聴してみる。先日の男が様々な楽曲を歌いながら独奏している。どれも既存の楽曲ではなくて自作のようだ。しかし玄人顔負けの迫力がある。電気とアンプが必要なエレキギターの時もあればどちらも要らないアコースティックギターの時もある。場所は屋外だったり室内だったりする。


 ギターは便利だ。ベースよりも小さい上にアコースティックでも音はよく出る。ウクレレより少し大きいぐらいの物もある。ギター用ケースの方がベースの物よりも充実している。ベーシストである優花はぼんやりと羨ましがった。


 確かに武の独奏はDVDにさせるだけの力量は十分に有る。ギター一本で十分に様になっている。ベースとドラムの場合はどんなに頑張っても他の楽器が無いと楽曲として成り立ちにくい。どちらも縁の下の力持ちの楽器だ。


 優花は武のSNSのアカウントを覗いてみると、どれもフォロワーが数十万人ほどいる。熱心に武のライブに通ったり、DVDやCDを買ったりしている者もそこそこいる。音楽で生計を建てているようだ。武は動画サイトにも投稿している。再生回数も少なくない。先日話した通り、自治体や地主の許可を取って路上演奏もしている。


 武が人気である事に優花は驚かなかった。武の腕前ならば素直に合点がいく。むしろその武に世辞でも褒められた事に驚いている。これほどの技術と迫力ならば武にバンドを勧誘してくる者も沢山いるだろう。


 優花がそれとなくアカウントを遡っていくと武の投稿記事で、

「この間の夏休みにとんでもないベーシストとドラマーがいた。勧誘したけれど警戒されて断られた」

 と嘆いていた。ファン達は驚き軽く批判した。

「武はイケメンなのにどうしたの?」

「なんで二人は警戒したんだよ」

「ソイツらは武に人気を取られるのを嫌がったんだろ」

 優花は不快感を覚えた。SNSから離れようとしたら、

「初対面だから警戒されて当然だよ。俺は二人に本当に脱帽したね。皆、そんなに怒らないでくれよ」

 と、武が落ち着かせている。ファン達も落ち着きを取り戻しているようだ。


 確かに武は美形といえば美形ではある。初対面で唐突に話しかけられて怪しいと思い、その後才能に気付いて見直した優花はSNSを覗くまで気付けなかった。本当に優花と実花が武の誘いに乗ったら女性ファンが激怒して面倒な事になるのだろうとボンヤリ考えた。そもそも社交辞令だろう。

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