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虹倉姉妹  作者: 加藤無理
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不思議な三角関係

 虹倉姉妹の夫婦二組が武達を夕食に誘った。夫二人の時雄と正史は農作業で保育園には来られなかった。姉妹は録音機ボイスレコーダーで先程の演奏を聴かせる。時雄は、

「練習の時も凄いと思っていたけれど、素晴らしいな」

「こんなに盛り上がっていたら俺達も行きたかったな」

 正史は残念がる。録音機で聴いた素人でも十分に演奏の迫力が伝わっている。淑彬はスマホの動画を入れたタブレット端末を二人に見せる。優時と正春が真剣な表情で歌っている。賢美は堂々としている。小林は伸び伸びとしている。最後の三人はやはり迫力があった。


 子ども達は食べながら仲良く会話している。それを政江と始は微笑ましく眺めながら食べている。それを尻目に武と姉妹は最近評価の高い音楽家やアイドルについて話題に花を咲かせている。


 時雄も正史も淑彬も、三人に不安や妬みを最早感じていなかった。三人は対等な音楽仲間だ。時雄と正史は淑彬との会話を純粋に楽しんだ。初対面の時にアイドルに憧れるファンの様な態度をとっていた二人だが、今では淑彬に対して下心なく話せている。淑彬にはそれが分かった。


 淑彬は気まずそうに、

「ちょっと気持ち悪い話なんですけれど……話して良いですか?」

 時雄が興味津々と、

「どうぞどうぞ」

 淑彬は武と姉妹を見やり、

「武は優花さんと実花さんを同時に好きになったんですよ」

「羨ましいね、二人は」

 正史は微笑みながら三人に振り向く。三人は子ども達を眺めながら会話している。時雄も三人を見やりながら、

「同時に交際せずに引き下がったのは立派だね」

「それが、二人に共有されたかったみたいなんですよ。武は」

 淑彬は暗い声で言った。時雄は眉を寄せて、

「え?武さんから引き下がったんでしょ」

 正史は腕を組んで俯き、

「もしかしたら優花ちゃんも実花も武さんを共有したかったのかもしれない」

 時雄は更に眉間に皺を寄せて、

「おいおい。本人達に聞かれたらまずいよそれは」

「ごめんなさい。私の想像です」

 淑彬が謝った。時雄は苦笑いして、

「すごいことを考えますね、淑彬さん」

「武が同時に好きになったと言うものですから。それに過去の話です」

「そうですね」

 正史が相槌を打った。


 一人が二人を同時に恋慕して、二人もその一人を同時に恋慕する。そして三人が共有し合う。現代の倫理観では異様だが、武と虹倉姉妹がそんな過去を待っていても淑彬は気色悪さを感じなくなった。三人には醜い愛憎ではなく美しい信頼と音楽が有る。

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