色あせない青春
武と淑彬と賢美は慇懃に挨拶をすると車に乗って去って行った。優花と実花は別れを惜しむかのように暫く手を大きく振っていた。顔つきも寂し気だ。正史も時雄も先程の淑彬の発言を思い出した。優花と実花が武を共有し武もそれを受け入れている。
音楽を介した信頼。泥沼の様な性愛が伴わなかった分、眩しく羨ましい過去だ。時雄と正史は顔を見合わせて溜息を吐いた。姉妹には話していないが二人には苦い恋愛経験が有る。性的な関係が出来ても結局は交際相手から別れ話を持ち出されて離れ離れになった。優花にも実花にもそれが無い。
姉妹は軽い言い合いをするぐらいで対立はしない。夫達にはそれが有り難かったし、そのおかげで息子達も平穏に育っている。将来の不安は有るけれど、これからも家業に励みながら一家は支え合って生きていく。
武は姉妹の青春そのものだ。その青春を元に姉妹は尊厳を持って生きている。時雄と正史は心の中で感謝した。
車を運転しながら武は物思いに耽る。それに気付いた淑彬は時折注意する。淑彬の腕の中で賢美は寝ている。武は苦笑いしながら平謝りをする。
十年ぶりの姉妹との再会と別れ。金輪際会わないかもしれないし死ぬ前にまた会うかもしれない。十年前と比べて姉妹は年相応に雰囲気が変わったが、真摯な音色と顔つきは変わっていなかった。むしろ月日が姉妹の魅力を増した。
姉妹との音楽は武にとっても青春そのものである。




