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虹倉姉妹  作者: 加藤無理
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淑彬の評価

 当日。淑彬は園児達の保護者達と一緒にスマホで演奏を撮影する。保育園はSNSに公開しないようにと再三命じている。我が子を正体不明な犯罪者に売り飛ばすような愚かな親はいなかった。


 園長が賢美を園児達や保護者達に紹介していた。淑彬も武も慇懃に自己紹介をする。事前に聞かされていたけれども皆、興味津々だ。賢美も園児達も緊張しているが、優時が、

「賢美ちゃんは歌が上手いんだ」

「みんな、賢美ちゃんはまだ四歳だから優しくしてね」

 正史も賢美を慮る。園児達は何となく受け入れた。


 園児達は一生懸命に歌っている。単に声を張り上げるだけではなく園児達なりに歌を楽しみ歌詞の内容を噛み締めている。淑彬は三人の子ども達にシッカリ教えてきたし、他の園児達もその影響を受けていたようだ。


 次は小林の楽曲。虹倉姉妹と小林本人が作詞作曲した。保護者達は面白そうに撮影し、園児達も楽しそうに身体で拍子をとっている。ちょっとした社会風刺と希望を描いた歌詞と少し激しい旋律。保育園らしくないけれど評判は良かった。小林の声量もギターの音色も素人以上だ。淑彬は素直に評価した。


 最後に虹倉姉妹と武。皆、固唾を飲む。三人は微笑みながら頭を下げると、小さな合図で始めた。女性差別に対する批判が軽妙に表現され、前向きな言葉と旋律が心地良く響き渡る。優花の重低音の効いたベースと実花の正確で激しいドラム、武の声とギターが絶妙に混ざり合っている。保護者達の中には男性も多くいたが、スマホでシッカリと撮影しながら聴き入っている。女性達は目を輝かせながら三人を見つめている。女性差別を題材にしているのに一般人にとってもイヤミがない。手応えは十分だ。淑彬は感じた。


 二曲目は武の楽曲。賢美をモデルにしている。国際結婚した夫婦の元で生まれて様々な出会いと経験を重ねる。奇異な目で見られたりイジメられたりするだけではなく、受け入れて認められたりもする。個人の力では抗えない事もあるが努力が報われることもある。それを武が日本語と英語と韓国語で歌う。優花と実花も演奏しながらそれを補うように歌う。


 園児達も保護者達も驚きつつも聴き入っている。英語を好んで歌詞に取り入れる日本の音楽家達よりも武の英語は素朴だが正しい単語と発音だ。日本人でも英語圏の人々でもイヤミなく聴ける。韓国語も心地良く耳に入る。優花と実花の歌声も楽曲に合っている。


 見事な編曲だ。淑彬は評価した。淑彬は武の楽曲を監修し編曲をしてきた自負が有る。けれども優花と実花は淑彬とは違う方法で武の楽曲を改良している。淑彬は歌と踊りに自信が有るが、優花にはベース、実花にはドラムの才能がある。ベーシストでもドラマーでもない淑彬でも十分に分かる。むしろ元アイドルとして音に敏感だ。姉妹が音楽活動を趣味の範囲に留まらせるのは実に勿体ない。淑彬は残念に思った。


 演奏の後、園児達も保護者達も拍手した。三人は満面の笑みで頭を下げた。

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