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虹倉姉妹  作者: 加藤無理
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明かされる恋慕

 話を聴いていると淑彬は食い違いを感じた。姉妹が同時に武に恋慕して武に選ばせようとしたが、断念したようだ。その後も暫く共に活動を続けたが、時雄と正史との出会いをキッカケに解散した。武の方から解散を言い出した。


 優花と実花は笑いながら語っているが、時雄と正史は気まずそうだ。時雄は、

「こんなすごい人と別れたのか」

正史は苦笑いして、

「再熱したら困るよ」

「バカ言わないでよ。私達、全員結婚して子どもがいるんだよ」

 実花が呆れ気味に言った。優花は、

「しかも私達の片思いだからね」

 淑彬は武に振り向く。武は悲しそうに笑みを浮かべている。武は二人に思いを伝えていなかったようだ。時雄は、

「優花も実花ちゃんも偉いね。武さんを取り合わなかったんだからね」

「漫画や小説の見過ぎ」

 優花が茶化す。淑彬は気になった。武は二人のどちらを愛したのだろうか。尋ねようとしたが止めた。


 昔の楽曲を聴いて以来、淑彬が武の過去を知りたくなった。こちらに来るように何度も提案をした。武は最初は嫌がったが、淑彬は説得した。恋の再燃の可能性は低いし自分は嫉妬深くはない。賢美が歯止めになる。音楽に携わってきた者としてどうしても虹倉姉妹が気になる。そこまで淑彬に食い込まれると武も再会を考えるようになった。姉妹に避けられたら諦める。そもそも初めて会ったあの公園にいないだろう。


 しかし再会した。十年の歳月で三人の仲は風化しなかった。恋の妬みとは違う嫉妬を淑彬は感じた。


 夕食は美味かった。賢美も満足している。賢美は優時と正春と打ち解けていた。武と淑彬は深く頭を下げると虹倉一家に頭を下げた。賢美は大きく手を振った。


 ホテルに戻ると賢美は両親から手洗いの後に歯磨きを命じられた。それが済むと淑彬と入浴して着替えて寝た。疲れているのかすぐに熟睡。武はベッドに腰掛けて傍らの賢美を笑顔で見つめている。淑彬は食卓の椅子に座りながら、

「結局、どっちを好きになったの?」

 武は振り向く。淑彬は、

「優花さんも実花さんも貴方が好きだと言っていたけれど、貴方に好かれていた事を知らない」

 武の目が泳ぐ。苦悶が滲み出ている。淑彬は不思議そうに、

「どうしたの?今更答えても誰も傷つかないでしょ」


 小さいはずの賢美の寝息がやけに響く。武は俯いている。淑彬は気まずそうに、

「私、追い詰めたつもりはないけれど。貴方がどちらを選んでいたとしてもそれは過去の話だし」

 武は俯きながら暗い声で、

「俺は二人を同時に好きになった」

「え?」

 淑彬が声を漏らすと武は、

「気持ち悪いなら聞かなかったことにして」

 頭が真っ白になった。淑彬は動揺して目が泳いだ。一人の男が二人の女を同時に恋慕する。普通は不倫や浮気の匂いがするけれども、武からはそんな不潔な倫理観は感じられない。今では実直に淑彬を大事にしている。


 今までに聞いたことも触れたこともない不思議な感情。淑彬はなかなか眠れずに考え込んだ。いつの間にか武は賢美の隣で寝ている。

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