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虹倉姉妹  作者: 加藤無理
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再会

 秋の朝。保育園は公園を借りて運動会を開いていた。昼間だと残暑で園児達が熱中症になるので、早い時間にしていた。園児達は眠気を押し切りながら奮闘していた。軽妙な録音が場を盛り上げる。保護者だけではなく公園の利用者達も眺めている。時折、不審者がいないか警察が巡視している。


 昼前には閉会式だ。保育園の運動会にしては凝った生演奏である。ギター・ベース・ドラムの三者だけなのに、遠くからでも迫力が伝わってくる。暴力的ではないが園児達に媚びない大人向けの表現。けれども園児達は真剣に並んで聴いている。


 閉会式が終わると園児達は一目散に保護者達に駆け寄り、水分を飲ませてもらった。保護者達は労っている。武はその合間を縫って片付けをしているバンドに早足で歩み寄る。淑彬スビン賢美ヒョンミも後について行く。


 バンドも気配に気付いて振り返る。武は、

「優花ちゃんと実花ちゃんだよね」

 と、確かめた。三人のうち二人は驚き、

「武さんですか?」

 優花が訊き返す。武は大きく頷く。実花は目を大きくさせて、

「どうしてここに?」

 淑彬が賢美を連れて武の横に立ち止まった。武は二人に振り返り、

「妻の淑彬と娘の賢美」

 優花は微笑み、

「私達も結婚して子どもが出来ました」

 実花は賢美に微笑む。賢美は淑彬に隠れて優花と実花を見比べる。淑彬は賢美の頭を撫でながら、

「さっき聴いていたけれど、プロデビューしなかったのが本当に不思議です」

「有り難うございます」

 優花が礼を言う。


 小林は驚いた。小林は武と淑彬を知っている。特に淑彬がアイドルの頃から淑彬を応援していた。一度は引退したのに復帰した事を知った時は嬉しくなった。武が一時期、素性を一切伏せた姉妹と組んでいたのを小林は思い出し、

「もしかして優花さんと実花さんは武……さんと昔バンドを組んでませんでしたか」

 優花は気まずそうに笑い、

「はい。そうです」

「だからあんなにすごいんだ」

 小林は興奮気味に言った。小林はもっと話を聴きたかったが、先輩に片付けをかされた。虹倉姉妹に、

「後は私達がやるので武さん達とゆっくりして下さい」

 と、気を遣った。優花と実花は頭を下げて楽器を軽トラに運んで行った。武も手伝う。


 遠目で姉妹の夫達と息子達は武を目で追っていた。姉妹の顔つきで旧知の仲だと分かる。優花は快活な笑顔で、実花は安らかな笑顔で武と話している。傍らにいる淑彬と賢美は少し寂しそうだ。


 優時は時雄に、

「あの人達、誰?」

「さあ。母さんの昔の友達じゃないかな」

 時雄は不安気味に答えた。妬みとまではいかない寂しさ。正春は正史に、

「女の子もいるね」

「君達よりも小さいな」

 正史が答えた。


 武と虹倉姉妹が別れてから十年の月日が流れていた。

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