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虹倉姉妹  作者: 加藤無理
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生活から生まれた調べ

 優花と実花は保育園の催し物に参加するようになった。保育士の小林と一緒に演奏して、場を盛り上げるのだ。生演奏の時もあるが、録音する時もある。既存の曲だけではなく、自分達で作詞作曲もする。園児達の言動や日々の生活の困り事から着想を得る。深い情緒や理性に訴える作品も考える。けれども園児達に親しみやすくなるようにも工夫する。


 ベース担当の優花は重低音を気に入っていたが、園児達に配慮して最初は裏方に徹していた。ドラム担当の優花も軽妙で明るい音を目指した。ギター担当の小林も園児達に分かりやすい言葉と表現を選んでいる。


 しかし園児達の中には興味を失い始めている子もいた。つまらなそうに三人の練習を見たり、うろちょろと園内を歩き回ったりしている。


 優花の息子の優時は、

「飽きた」

 と、愚痴をこぼし、実花の息子の正春も、

「もっとカッコいいヤツ無いの?」

 と、ねだる。優花の夫の時雄と実花の夫の正史は息子を軽く叱る。姉妹は家事も育児も家業もしている上に音楽活動。時雄は、

「無理しなくて良いんじゃないのか」

「あくまでも息抜きだし」

 正史も心配した。しかし優花は、

「思い切ってやり方を変えてみようかな」

「そうだね」

 実花は相槌を打った。


 姉妹は小林と相談して園児達に媚びない楽曲を敢えて創り始めた。保育園の近所に挨拶して回って事前に騒音について謝る。住民達は保育園を重宝していたので嫌な顔をしなかった。


 優花は重低音を出していく。実花は激しく叩く。小林は表現に遠慮しない。すると園児達は再び興味を持ち始めた。今まで音楽に興味が無かった子も振り向く。園内を歩き回っていた子も三人の近くに立ち止まり、ピョンピョンと拍子に合わせて軽く跳びはねた。


 迎えに来た保護者達は大きな音に一瞬、顔をしかめたが、楽しそうに聴いている園児達を見て安堵した。


 性的・犯罪的な表現はなるべく避けたが、社会性のある表現にも挑戦した。練習する既存の曲の幅も広げていく。小林は驚嘆した。虹倉姉妹は子育てをする農家として忙しいのに次々と音楽に挑戦していく。腕がどんどん磨かれていく。保育士の小林も忙殺されているが、虹倉姉妹との練習や演奏は苦にならなかった。


 優時と正春が興奮気味にペラペラと父親に話すので時雄と正史は優花と実花の演奏を聴きたがった。交代して父親二人が息子二人を送り、母親二人が迎えに来ていたので聴く機会がなかった。園の催し物には祖父母の政江と始が参加している。優花と実花は録音して夫に聴かせた。時雄は、

「本当に凄いな」

「本格的に活動を始めたら良いよ」

 正史が煽る。実花が、

「家の事はどうするの?」

 正史が時雄に目配せして、

「俺達が頑張るよ。正春も春時も手伝えるようになったし」

 時雄も頷く。正春と優時はもうじき六歳。来年は小学生だ。時の流れは速い。

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