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虹倉姉妹  作者: 加藤無理
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世代交代

 幾星霜の時を経て、虹倉姉妹は結婚して子供が出来た。


 武と連絡を絶った後、姉の優花は退職して実家に戻った。実花は暫く管理官を務めていたが、姉と同時に小さな結婚式を挙げた。優花三十歳、実花二十七歳。式に集まったのは親戚ばかり。老人ホームから祖父母も来ていた。式の後、実花は職場に戻って行った。実花の新郎は虹倉一家の自宅近くにある中古の一軒家に引っ越しして、虹倉一家を支えていた。実花とは遠距離恋愛だ。


 優花と夫の時雄ときおは最初はよそよそしかったが、次第に打ち解けていった。一緒に農作業と家事をするうちに信頼関係が出来た。婿入りしてきた時雄は謙虚だし、虹倉一家も温かく迎えている。考え方や好みの違いで時には喧嘩はするが、互いに怒鳴り声も暴力も無い。いつの間にか両方が妥協する。刺激的な恋慕が無い代わりに穏やかな夫婦生活だ。


 実花の夫である正史まさふみもそれを遠目で見ながらSNSで実花を気遣う。文字だけでは心許こころもとないので正史はテレビ電話で毎日話しかける。遠距離ではあるが、実花は夫婦生活を実感できた。


 しかし、実花は結婚の翌年に自分の限界を感じて退職をした。入国管理官は責任有る仕事だが、個人の力だけでは無理な所が多々ある。虹倉一家と正史は実花の帰りを温かく迎えた。


 不思議なことに優花と実花は同じ年に男の子を出産した。優花の息子は優時ゆうとき、実花の息子は正春まさはる。一家は驚き喜んだ。けれども年末に姉妹の祖父は亡くなった。悲しむ虹倉一家を時雄と正史は息子を励ましながら励ました。


 祖父母は遺書をしたためて祖父が亡くなるまで更新していた。農地と農機具はほぼ全て姉妹の両親と姉妹が相続し、他の資産は叔父叔母に相続させる。祖父母は資産を多くは持っていなかったが、篤農家だった。私財を投げうち自ら老人ホームに入って家族に介護させなかった。叔父叔母は文句を言わなかった。虹倉一家は胸を撫で下ろす。


 家事・育児・家業で忙しいのに担当の税理士と弁護士と共に煩雑な手続き。けれども虹倉一家はそつなくこなした。以前、時雄は宅建士、正史のは証券パーソンだった。法律や税は専門外だが、小難しい文章や資料には慣れている。二人はそれぞれの妻の意思を尊重しながら処理していく。


 優時と正春が母乳やミルクから離乳食、簡単な食事が摂れるようになり、歩き回れるようになった。優花も実花も悪戦苦闘した。油断すると息子は転ぶ。壁や机の脚に当たる。泣き喚く。走り去ろうとする。優花も実花も農作業や家事に集中出来なくなった。それを見かねた時雄と正史は積極的に息子の面倒を見た。


 姉妹の仲が相変わらず睦まじいせいか、時雄も正史も兄弟に感じるようになった。時雄は妻の優花と同じ歳で、正史は妻の実花よりも十歳年上。義弟である正史が時雄よりも七歳上だが、あまり互いに気にしなかった。二人共、君付けだ。


 息子二人もいとこだが毎日顔を合わせているので兄弟の様に感じている。両親である優花と時雄が祖父母の家に暮らしているので優時は祖父母と一緒だ。それを正春は羨ましがった。反対に優時は広々と三人暮らしする正春を羨ましがった。


 時には憎らしく時には愛らしく。優時と正春は育っていく。

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