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虹倉姉妹  作者: 加藤無理
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異国で信頼を得る

 韓国に来てから武は淑彬スビンから韓国語を始めから勉強した。淑彬は英語と日本語で交えて教えていく。最初は戸惑ったが、淑彬の両親がゆっくりと簡単な言葉で話しかけてくれた。新しく武のファンになった近所の高齢者達も武に話しかけてくる。武も一生懸命に返事をする。


 李は喜んだ。語学だけではなく技術も上達し、音には深みが出て来た。淑彬も武の成長を素直に認めた。最初は想定よりも練習量が少なめで自信のない武を侮っていたが、武は意外と勤勉だ。淑彬が叱っても武は文句を言わずに頑張る。


 武は何度か戦跡や慰霊碑を案内されて黙祷を捧げる。李は、

「本番が近づいているのに過度に重圧かけて悪い」

「仕方ないよ。日本の戦争犯罪は事実だし」

 武は答えた。この姿勢に淑彬も両親も武への印象をスッカリ変えた。


 李が率いるグランドオリエン卜は本番一週間前に集中して練習と準備をする。直前までにテレビやラジオやネット配信で多忙だったからだ。場馴れしているので涼しい顔だ。むしろ観客一万人規模は彼等にとっては日常茶飯事だ。


 警察も役所の職員達も事故防止対策を行う。韓国全土からだけではなく日本からもその他の国からも客が来る。特に日本女性の中には熱狂的なファンが多い。


 武は緊張してきたが、地元の高齢者達や淑彬とその両親に励まされる。大きなライブ会場に何度も来た事はあるが、自分が演奏する側に立つのは初めてだ。


 武は代表作と新曲の二曲を披露した。焦らずに地に足をつけた旋律を意識した。一度始まってしまえば声も良く出るしギターの音色も絶好調だ。武は緊張を忘れた。


 客達から拍手の嵐。皆、グランドオリエント目当てのはずだが、武の演奏が評価された。武は驚いて呆然としたが、舞台裏からマネージャーの合図を受けたので、手を振って奥に引き下がった。


 その後はグランドオリエント三人の歌と踊りだ。次々と七曲も披露されていく。客は熱心に応援し、三人もそれに応じる。武は三人の表現力に改めて舌を巻いた。どんな厳しい動きでも華がある。疲れを感じさせない。三人の後ろで演奏をしているバンドの技術も素晴らしい。背景に徹しながらも美しく迫力のある旋律が絶妙だ。武は素直に憧れを抱いた。


 演奏会が終わり、グランドオリエント三人は客達の相手をする。その間に事務所の職員達とバンドは片付けていく。武は彼等彼女達に歩み寄り、手伝いながら握手を求めた。バンドの一人が、

「俺達に気を遣わなくて良いのに。今は自分を売り込む機会だ。さっきは本当に素晴らしかったね」

「嬉しいです」

 武は喜んだ。三人の握手を待っていた客の一部が武に振り向いている。武はその人達に挨拶して自己紹介する。SNSのアカウントも教える。反応は悪くなかった。


 打ち上げの時に李は満面の笑みで、

「本当に誘って良かったよ。武さん、有り難う」

 礼を言った。他の二人も微笑んでいる。武は、

「そう言ってくれると嬉しい」

 マネージャーは、

「再来月までに計算して報酬を出すよ」

 武は驚いた。これまでに旅費も交通費も全て事務所が負担している。淑彬との語学勉強代も事務所が淑彬に出している。更に報酬が出るとは思わなかった。武は、

「有り難うございます」

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