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虹倉姉妹  作者: 加藤無理
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異国で挑戦

 武は李から淑彬スビンについて説明を受けていた。淑彬もまたアイドルだった。十歳頃から真剣に目指して練習に励み、沢山面接を受けて十五歳ぐらいに事務所の訓練生として受かった。十八歳にデビューして三年ほど華々しく活躍した。が、後輩に先を越されて二十二歳で引退。両親に叱咤激励されて勉学に励むが志望していた大学に入れなかった。結局は中堅の大学に入学した。父親はもう一度スヌンを受けるように勧めるが、母親は淑彬を心配した。父親を説得して現在の大学を無事に卒業させようとしている。


 韓国の大学生活は過酷だが、淑彬は実家で家庭教師をしながら勉学に励んでいる。元々、アイドルは激務だったし、アイドルであった時も睡眠時間を削って勉強をしていた。


 アイドルを引退してから淑彬は暗くなった。笑う時は笑うが、どことなく影がある。早い引退と志望校の不合格。挫折が大きかったのだろう。李は心配した。


 李が武を誘った本当の理由は淑彬を励ましてもらうことだった。謙虚に音楽活動を続ける武から淑彬が良い刺激を受けるのではないかと考えたのだ。それを聴いた武は、

「上手くいかないと思うけれど頑張るよ」

と、応じた。


 淑彬は英語が苦手な武を馬鹿にしていた。韓国の小学生ですら武以上の語彙が有るし流暢に話せるし綺麗な文章を書ける。武は腹を立てたが嘘ではない。また、李から淑彬の事情を聴かされている。武は知ったかぶりをせずに下手に出た。


 淑彬とのSNSでのやり取り。テレビ電話で淑彬から発音と喋り方を強制されていく。文字媒体では宿題が出される。次々と新しい単語や熟語や言い回しを覚えなければならない。


 武は昼間は音楽の練習と出国の準備、夕方から夜中までは淑彬との語学勉強に精を出した。淑彬は生真面目でなかなか休憩をしようとしないしさせようとしない。武は、

「こんなに頑張っているんじゃあ、韓国人は皆、鬱になっちゃうよ」

 と、驚き呆れた。毎日休まず一日三時間。淑彬は武との特訓以外にも他の生徒にも施している。


 その成果が有って武は日本を出国した時には英語を流暢に話せた。音楽に聴こえていた英語も内容を理解出来るようになっていた。迎えに来た李と事務所の職員達もそれを喜んだ。


 武は江原道に有る淑彬の実家に寝泊まりすることになった。淑彬の実家は一階は喫茶店で二階が生活空間になっている。家族用の他に親族や客用の空間が有るので武はそこで寝泊まりをする。


 武は英語で慇懃に淑彬一家に挨拶した。三人は抵抗もなく受け入れた。両親は娘の近くに日本男性の武を住まわせる事に躊躇したが、甥の提案をムゲに断れなかった。また、テレビ電話でのやり取りを遠目で観察して武が不審人物ではないと分かった。


 武はこちらでも昼間は音楽の練習と仕事の準備、夕方からは淑彬との語学勉強を続けることにした。昼間は賑やかでも誰も文句を言わないし、夜は勉強の為に喫茶店を利用する学生が集まる。淑彬もまだ大学生だ。


 李と淑彬の両親は武に何回か生演奏会を披露する事を提案した。李のマネージャーも事務所の職員達も了承した。突然、一万人の観客を相手にするより、徐々に慣れた方が良い。武は老人ホームや障害者施設や教会を案内されて何度か披露していった。日本で百人を目の前にしても動じないが韓国で百人を目の前にすると緊張する。客の反応も物足りない。


 しかし、徐々に噂を聞きつけた老若男女が集まってきた。韓国に来てから一ヶ月ほどで手応えを感じてきた。武の演奏会は昼間に行われるので老年層が集まる。最大で千人は集まった。地元の警察と事務所の職員が打ち合わせをして場所と日時と客層を考慮してきたので、事故は起きなかった。


 その合間に武は本番の舞台の設営を手伝ったり打ち合わせをしたり練習をしたりした。

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