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虹倉姉妹  作者: 加藤無理
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不本意な別れ

 「武。大丈夫か?最近、随分と暗い曲を出してきたな」

 SNSで白崎からのコメントが来ていた。既にファン達からも動揺の反応が多数寄せられてきている。新たな武の可能性に満足した層と否定的な層に分かれている。幸運なことに炎上もしていないしファンの数が減っているわけでもない。


 武は九月上旬に新曲を出した。自己嫌悪で失恋した楽曲。曲調も声色も低音が目立つ。緩慢で不安になる様な旋律。この新曲を評価して新たにファンになった者も何人かいる。


 武は白崎に返信した、

「駄目だったかな」

「これはこれで良いけどな」

 白崎からの反応。かつて二人は仲が悪かったが、立ち直った白崎は吹っ切れていた。醜聞が一気に減って表現力は更に磨きがかかっている。互いにイヤミを感じなくなった二人は時折、自分達の作品を評価し合うようになっていた。二人は敢えて虹倉姉妹を話題に出さないでいた。


 姉妹は夏休みの合コンで一人ずつ候補を選んだようだが婚約は成立していない。更に人となりを確かめるそうだ。慎重な二人らしい。武はムシャクシャしていた。なるべく平静を保とうとしても周りからは心配される。


 自分はこれほどまでに嫉妬深かったのか。しかも同時に二人の女に恋慕している。武自身も驚いている。


 稲島は武の新曲と言動の変化で武の心境に気付いた。十月に教会で慰問会の打ち合わせした時に稲島は、

「最初に煽った俺が言うのもなんだけど、諦めろよ」

「そのつもりなんですけどね、自分の気持ち悪さに耐えられないんですよ」

 武が頭を抱えながら吐露する。稲島は、

「まあ、恋は苦いもんだ。それに、自分を追い詰めると却って執着するぞ」

 頭を上げた武は、

「いっその事、この気持ち悪い気持ちを二人に暴露しようかと……」

めとけ」

 稲島は武の肩を軽く叩く。武は、

「完全に嫌われたらスッキリします」

「それも駄目だろ。二人に迷惑だ」

 稲島は頭を振る。武は俯く。稲島は、

「『君達は全然悪くないけれど、俺は独りに戻りたくなった』とだけ言って関係を絶った方が良い」

 武は肩を落としながら溜息を吐いた。SNSで稲島の言う通りにする。


 打ち合わせが終わり、武が教会を出る時には姉妹から別れの言葉が来ていた。武の胸が疼く。三人でほぼ同時にブロックし合う。


 たまにしか会えなかったが、初めて会った時から十年近くが経っていた。


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