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虹倉姉妹  作者: 加藤無理
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白崎の軽い悩み

 サー・オーシャンは多忙だ。睡眠時間が五時間以下の時も珍しくはない。しかしマネージャーの吉田の管理によって私生活はある程度守られていた。


 メンバーは五人。私生活を犠牲にしてでも練習に打ち込む者もいれば、ファンとの交流を楽しむ者もいるし、他のグループを観察する者もいる。最も私生活を犠牲にしているのは吉田だ。彼は五人の健康管理と言動に目を光らせている。


 白崎は天賦の才能のせいか他のメンバーより練習量が少なくても見事に本番で活躍する。メンバーからも他のグループからも嫉妬と羨望の眼差しを向けられる。白崎本人はどこ吹く風。恋愛と性生活が出来れば文句を言わない。しかし吉田と弁護士は年々厳しくなっている。


 吉田は苦い顔をして、

「もう少しで君は三十歳だよ」

「吉田さん。それもハラスメントだよ」

 と白崎は言い返す。そんなやり取りが何度も繰り返される。


 コンプライアンスが厳しい現代では少し素行が悪いが、白崎は性犯罪を起こしているわけではない。未成年を誘惑したとしても実際に性行為をしたわけではない。成人女性との同意が前提だ。性行為の時は毎回、避妊具も着けている。飲み会で酔った勢いに任せようとすると吉田がメンバーと一緒に止める。


 吉田がいなければとっくに性犯罪者の烙印を押されて刑務所に入っていただろう。吉田には感謝しているが疎ましくもある。


 先日会った虹倉姉妹は想像以上に可愛かった。武の単なる相棒だからさほど美形ではないと決めつけていた。武と姉妹はどんな間柄なのだろう。若い男女三人。隠しているだけで色恋沙汰があるのだろうか。ウブで不器用な武が恋愛するとなると上手く隠せないだろう。白崎は気になった。


 姉妹には軽い誘惑を仕掛けてみたが、姉妹が引っ掛かっても武も吉田も稲島もそれを断ち切らせるだろう。


 稲島については吉田から説明を受けている。かつては現在の白崎の様に上に登りつめ、薬物使用で転落し、今では再起して細々と活動をしている男。冷静な吉田が珍しく熱弁していた。吉田は稲島の様な男にも好感を持っているのだろう。


 一度は挫折した稲島とまだ挫折していない白崎。吉田の熱弁が無ければ白崎は稲島を軽蔑していた。しかし挫折のキッカケはどんな所にも転がっている。性にだらしない白崎は自分の事を棚に上げて稲島を嘲笑出来ない。


 今は吉田と弁護士に注意されて自粛している。けれども性生活どころか恋愛も抑圧されては士気が下がる。もう一度、姉妹に会ってみたい。吉田は三年ほど待つべきだと主張しているが、待てないし本当に吉田が三年後に会わせるとは思えない。


 白崎は休憩の合間にSNSの武のアカウントを覗いてみる。先日の渋谷での生演奏会の録音を公開している。反応は良くて広告収入も十分に見込める。


 白崎はドラムとベースに詳しくなかったが、姉妹が凄腕なのは分かる。武の歌声とギターが一段と活き活きとしているのが証拠だ。それに気付いて白崎は不快を覚えた。武は姉妹を独占している。白崎の僅かな嫉妬。

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