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虹倉姉妹  作者: 加藤無理
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武の不安

 稲島は吉田に一目置いた。吉田は決して虎の威を借る狐ではなかった。自分が担当するアイドルの為に汚れ仕事をしたり泥を被る覚悟は有るけれど、時には叱責も厭わない。引く時は引く。アイドルの願いと他人との関係を見極める。


 白崎は酒好きなのかコーヒーをつまらなそうに飲んでいる。一方、吉田はまんざらではない。武も虹倉姉妹もコーヒーが好きだが、白崎と吉田の存在が気になってあまり味わっていない様子だ。吉田は、

「いやあ、稲島さんとこうして一緒にコーヒーを飲むなんて夢でしたよ」

「へえ。そんなに凄かったんだ。あとで検索してみようかな」

 白崎が興味を持つ。吉田は、

「何度も言うけれどネットは誹謗中傷の渦だからね。僕が丁寧に教えるよ」

 と、軽く釘を差した。稲島は気になった。吉田は醜聞を茶化さないだろう。しかし稲島の過去を知った白崎はどう感じるか。軽蔑するはずだ。ネットで攻撃するかもしれない。


 白崎は姉妹を見比べて、

「そうだ。せっかくだから俺、ここで一曲踊ってみようかな」

「そりゃあ良い」

 稲島が相槌を打つと白崎は、

「稲島さんも踊って下さいよ」

「それじゃあ、俺が先で良いか」

 稲島が立ち上がる。吉田は拍手する。稲島は劇場に立つとギターを用意して手早く調律をした。稲島の一番の自信作を披露する。


 武は周りを見渡した。店員達も吉田も満面の笑みを浮かべている。虹倉姉妹も白崎の存在を忘れて顔を綻ばせている。白崎も興味津々だ。


 稲島の演奏と踊りが終わると白崎は立ち上がる。皆、注視する。稲島が席に着くと白崎の踊りが始まる。いつの間にか吉田がノートパソコンとスピーカーで音源を準備している。


 音源は大きめだったが、白崎の声量も負けていなかった。しかし耳に心地良く入っていく。軽妙で激しい踊りなのに疲労を感じさせない。無駄な音も動きもなく迫力がある。姉妹は白崎を目を輝かせながら見つめている。


 披露が終わると吉田と稲島は素直に拍手喝采した。姉妹は呆然としている。武は不安になった。超一流のアイドルが姉妹の為に無料で歌と踊りを披露したのだ。これ以上の誘惑は無い。


 吉田は自分達のコーヒーと菓子代を店長に払うと、

「三年ほど、お待ちしてます」

 と、言い残して白崎を連れて帰って行った。姉妹はポカンとしている。四人は店に礼を言うと解散した。


 武は白崎の不誠実な性生活を暴露しようとしたがめた。姉妹が素直に信じるとは限らないし妬みだと誤解される。二人が武への恋慕を止めて白崎のファンになるのは許容出来る。しかし、白崎が二人を消耗品の様に扱うのは耐えられない。


 白崎は去年、武が遠くから応援していた女優と交際してたった三ヶ月で破局させた。事務所と弁護士が名誉棄損を盾に事実上の報道規制をしたが、その女優のファン達にとっては許し難い話である。


 武は姉妹の父親である始に白崎の危険性を伝えた。始とは夏合宿前に連絡先を交換している。

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