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虹倉姉妹  作者: 加藤無理
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成功と困惑

 当日。数日だけとはいえ、音楽以外にも農作業という体験を共有してきた。その甲斐があって随分と調和のとれた演奏になった。三人は手応えを感じた。観客達も拍手した。姉妹に音楽を教えた高齢者達の中には感無量で涙を流す者も何人かいた。


 CDは高めの値段であったにも関わらず、完売した。会場にしていた喫茶店はテーブルを畳めば二百人は入れる。それでも満席だった。武にとってはかなりの大成功だ。姉妹は嬉しさよりも驚きが勝っている。


 客達から褒められるたびに姉妹は頭を下げる。何度も握手を求められもした。武も姉妹にビジネスパートナーとして軽い抱擁をしてきた。優花はぎこちなく受け入れたが、実花は咄嗟に引き下がった。武は、

「あ、ごめんね」

「違うんです」

 実花が否定すると優花が、

「実花はちょっと照れただけです」


 客達が全員出て行くと、三人は店員と一緒に片付けをした。それが済むと武と姉妹は別れた。武は姉妹の祖父母を車に乗せ、姉妹は両親の車に乗った。片付けを手伝いながら祖父母と両親は何度か目配せをしていた。


 帰宅中、助手席に乗っていた母親の政江が、

「この間お祖父じいちゃんがさ、あんた達が武君の事が好きとか突然言い出したんだよね」

 姉妹は同時に息を飲んだ。父親の始は黙って運転している。政江は、

「信じられないけど、本当なの?」

「そんなわけないでしょ。あの人はプロだよ」

 優花は急いで否定した。政江は、

「まあ、音楽の分からない私でも感動したからね。でも、あんなに真面目な婿さんなら歓迎するのにな」

「おいおい。めろよ」

 始が前方を睨みながら政江に注意した。確かに母親にとっては音楽家であるにも関わらず、農作業を厭わずに手伝っていた武を婿にしたがるのは分かる。しかし武がそれを望むとは到底思えない。姉妹は顔を見合わせる。二人共、苦い顔をしている。


 同じ頃。祖父は武に、

「嫌な事を訊くけどよ。お前さん、実花と優花、どっちが好きだ?」

「よしなさいよ!」

 祖母が叱った。武は前方を中止しながら苦笑いして、

「いきなり、どうしたんですか」

 祖母が呆れた様子で、

「この人、実花と優花が貴方の事が好きだと決めつけてるのよ」

 武は息を飲む。やぶから棒。突然、虹倉の祖父は何故、そんな事を言い出すのか。祖父は、

「今のあの二人、お前と政江が男に片思いしていた時とソックリだぞ」

 祖母は肩を落としながら溜息を吐き、

「もういい加減にしなさい。武君が迷惑でしょ」

「僕ではなく、二人が困るんじゃないかと」

 武は苦笑いしながら言った。

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