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虹倉姉妹  作者: 加藤無理
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準備と祖父の気付き

 優花と武は連絡を取り合って打ち合わせをしていった。年末年始の五日ほど千葉県の虹倉一家で練習して、近くの大きな喫茶店で披露する。夏に録音した楽曲を武はCD五十枚ほどにして売るつもりだ。姉妹は期待していなかった。


 元々、年末年始は優花の会社も実花の大学も休みだ。二人は家族や友人に頼んで練習と会場の場を借りた。武は自費でカプセルホテルで寝泊まりしようと考えていたが、姉妹の祖父母の住むアパートに滞在することになった。祖父母が武の人となりをもっと知ろうと思ったからだ。


 実家に戻る前から姉妹は週に一度はスタジオを借りて練習していた。三回ほど、優花に連れられて実花は武の生演奏会を聴いた。再会した時にSNSのアカウントを教える。実花から武に連絡する事はほとんどなかったが、打合せの確認の為に武から何度か受信した。


 武の主催する会場は喫茶店が多かった。武は一度に百人以上の客を期待していないようだ。外国人や障害者、老若男女いたが、客層は大人しい。


 優花と実花、姉妹の家族は退職したバイト仲間とその家族に演奏会の開催を伝えた。既に施設に入った者も何人かいたが、施設関係者も協力して有志をつのって希望者に喫茶店に行かせるように手配した。


 冬場は夏場よりマシではあるが千葉県南部は完全な農閑期はなかった。武は朝、姉妹の祖父母を乗せて車で農場に行って簡単な農作業を手伝う。宿泊費が無料な上に祖母が食事を出したり掃除もする。武は不満はなかった。祖父は温和だ。たまに皿を洗っている。


 姉妹も武を気遣いながら農作業をする。


 午後は音楽の練習。農作業の後は疲労が蓄積するが、不快ではない。温暖化した千葉県の冬とはいえ、侮れない。それが経験になる。演奏にも味わいが増す。


 新しいバイト仲間達と姉妹の両親はそれを聴きながら農作業を倉庫で続ける。祖母は皆の分の茶を用意し、祖父はぼんやりと三人を眺めている。


 新しいバイト仲間達は就職氷河期で社会に疑問を持った世代の人達が多い。四十代。虹倉一家にしては若返った感じがするが、本人達は年増だと自嘲気味だ。


 倉庫の二階で三人は練習している。祖父は皆を見渡しながら、真顔で、

「優花と実花、武君の事が好きなんじゃねえのかな」

 バイト達は笑った。母親の政江は呆れて、

「お父さん、それ、セクハラだよ」

 父親の始も頷く。祖母は眉を寄せて、

「あなた、何か根拠有るの?」

 祖父は目を大きくさせて、

「勘だけどよ、間違ってねえと思うんだけどな」

「たとえそうだとしても、武君には言わないで下さいよ」

 始は諭した。

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