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虹倉姉妹  作者: 加藤無理
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重い期待

 失恋を期待してフェミニズム寄りの楽曲を一緒に作ろうと優花は誘ったけれど、武は嫌がらなかった。平静を取り戻したものの心の隅が微かにキリキリと疼く。いっそうのこと、武が実花に恋慕した方が諦めがつくのではないかと優花は少し悩む。


 新曲を創った後も二曲を練習して録音もした。今日が最終日だ。この日は午前中に今まで練習した楽曲を一通り演奏した後、解散する。武は念の為に今回も録音する。


 武は満面の笑みで、

「本当に有り難う。あとで画像を加えて来週、公表するよ」

 姉妹は微笑む。三人は無事に合宿を終えた。宿泊施設をチェックアウトして出て姉妹は東京に戻って行った。


 アパートに帰宅した後、姉妹は丸一日休んだ。疲れが溜まっていたのか、二人は食事よりも睡眠を摂った。


 夏休みが終わった。既に優花は会社に復帰しており、実花も大学に通っている。ある日、優花のSNSアカウントが武のコメントを受信した。


 武は興奮した様子で先日の合宿の成果を伝えている。ファン達だけではなく、たまたま聞きつけたにわかの人達の反応が良かった。楽曲に著しい深みが出て来た。ベースとドラムの重要性が分かった。新しさと広がりが出てきた。肯定的な意見が多かった。特に新曲に対して少なくない女性が共感している。


 優花は実花に武のコメントとアカウントを覗かせた。確かに武の言う通りだ。何処かの会社や団体に売ったり、生演奏会を開いたり、CDやDVDにしたりしてみてはどうかと提案する者も何人かいた。


 優花は驚いた。ファン達は嫉妬するどころか自分達を応援している。本格的に武と組もうか脳内にがよぎった。けれども、現実は厳しいものだ。特に音楽業界は栄枯盛衰が激しい。妙な欲と期待は禁物だ。


 実花は固唾を飲んだ。嬉しさと恐ろしさを同時に感じる。今まで実花も優花も武の楽曲もSNSのアカウントも見聞きしていなかった。叶わぬ恋慕が再発するからだ。武とそのファンから評価されて嬉しいが、同時に重圧も感じる。


 武から再度、コメントが来た、

「また組まないか?この間の様なガッチリした合宿でなくても良いから。実は二人のおかげで利益が増えたからおカネを振り込みたいのだけれど」

 優花と実花は顔を見合わせる。会おうかどうか迷っているのか、実花の目が泳いでいる。優花は返信した、

「先日、旅費も交通費も負担してもらったのでおカネは要りません。武さんは東京に暫く滞在出来ますか?」

 暫くすると武から、

「分かった。今度は俺がそちらに行くよ。二人の実家近くでも良いよ」

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