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虹倉姉妹  作者: 加藤無理
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初めての作詞作曲

 午後はそのまま作詞作曲に挑戦した。姉妹が思い浮かんだ言葉や文を書き出す。それを題材にした音を武が直感的に出してみる。更に姉妹がそれを改変していく。


 女は非力なのに家事育児介護の上に賃金労働。それなのに男女賃金格差。男が悪事を働いても良い男もいると守られるが、女の場合は良い女もいるとは言われない。一人親世帯の多くは母子家庭。男の浮気は許されて女の浮気は制裁を受ける。


 意外と実花の方が社会と男達への不満が強く押し出されていた。武は驚いた。優花は少しずつ実花に確認しながら柔らかい表現に変える。


 生きづらさを抱えているのは男達だけではない。女達も既に頑張っている。良い女は沢山いる。疲れ切った母親達を責めないで欲しい。会社のお局様を茶化すな。女が本当に感情的で非力ならば余裕を持たせよう。多様性とはそういうものだ。外国人にも先住民にも障害者にも低所得者にも女性は沢山いる。


 武は更に伝わりやすい言葉や炎上しにくい単語を選んで少しずつ変えていく。更に節と音源を加えていく。ある程度の枠が出来たら姉妹のベースとドラムが加わる。


 今回は落ち着いた緩慢な曲調だが、歌詞を聴かせるために声量は大きめだ。男を弾劾するわけでもなければ女に伸びるわけでもない。中立的な雰囲気を重視した。それでいて耳に引っ掛かりを残すような印象も与える。


 姉妹は舌を巻いた。どんな音がどんな感情を表すのかを武は丁寧に教えていた。以前にも音楽を教えてくれた高齢者から教わっていたが、新しい見方が出来た。


 いつもより時間が遅くなったが、三人はこの新曲を録音した。その後、武は微笑んで、

「いやあ、全く新しい試みだったよ」

 姉妹も微笑んだ。


 姉妹は宿泊施設に戻った。優花は機嫌良さそうに、

「上手くいって良かったね」

「何言ってるの?お姉ちゃんは武さん自身を諦めたの?」

 実花が呆れ気味に言い返した。優花が気まずそうに目を細めて、

「あ、そうだった。でも、実花と一緒にいても私は焼き餅をかなくなったけどね」

 実花は溜息を吐き、

「本当に諦めたの?」

 優花は首を傾げて、

「そういうわけじゃないけどね。実花こそ、妬いているの?」

「別に妬んでないよ。むしろこの間よりは落ち着いてきた。けど、やっぱりモヤモヤする」

 実花が天井を見上げながら答えた。優花は、

「二人で会った方が気まずくならない気がする」

「まあ、そうだね」

 実花は相槌を打った。


 実花はぼんやりと考えた。この感情は何時まで続くのだろう。姉の優花が武に恋慕しなくても、実花の恋愛が成就するわけではない。武は軽薄な男ではない分、武が実花に振り向く可能性は低い。武は紳士的に対等な人間として姉妹に接している。それが魅力の一つであると同時に、武による線引きでもある。


 寝る前に実花は大きな溜息を吐いた。

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