白い恋愛遍歴
姉妹は午前中からスタジオで武と会った。今回は練習ではなくて姉妹の作詞作曲の為に武の恋愛遍歴を聴き込むということにした。武は困った顔をして、
「本当に俺は何も無いよ」
「片思いも無いんですか」
優花は質問した。武は、
「みんな、高嶺の花だね。アイドルとか俳優とか」
「やっぱり理想が高いんですね」
実花が言うと武は、
「違う違う。身近な女の子を対象にすると玉砕するからね」
優花が意外そうに、
「実際にフラレたんですか」
「良い女は俺が近寄る前に全員、良い男がいるんだよ」
武が眉を寄せる。実花は、
「ファンの中には優しくて綺麗な人が沢山いるじゃないですか」
「ファンに手を出すなんて御法度だよ。嫉妬と炎上がヤバい」
武は真顔で首を振る。優花は、
「仕事仲間で出逢いは無いんですか」
「コンプラが厳しいからね。間違えればセクハラだよ」
武は宙を睨む。姉妹は顔を見合わせる。そこら辺の男達より武は堅くて恋愛に消極的だ。それとも年下の女二人に配慮をしているのだろうか。
武は姉妹を見比べて、
「君達こそ本当に何も無いの?」
二人は目を泳がせる。武は指を組んだ両手を後頭部に乗せて、
「苦い経験を楽曲にした方が意外と良いものが創れるよ。それが嫌なら言いたい事を表現すれば良い」
優花は真顔で、
「例えばフェミニスト達を応援する歌とかどうでしょうか」
武は笑い、
「面白いけれど、それを試した知り合いのアイドルが大炎上した」
実花は不快そうに目を細めて、
「みんなアンチフェミですよね」
武は目を丸くして、
「実花ちゃん、フェミニストなんだ。今時の若い女の子達ってフェミ嫌いだと思ってた」
「別にフェミニストではないけれど、常にモヤモヤした感じがするんですよね」
実花は気まずそうに答えた。優花が、
「無理して頑張っても報われない感じが男子以上にするんですよね」
武は微笑み、
「それを歌にしてみれば良いよ。でも、フェミを前面に出すと炎上しちゃうからね」
優花の何気ない思いつきで、いつの間にか女の辛さを訴える楽曲を創る流れになりかけた。姉妹はフェミニズムの知識が有るわけではなかったし、一生懸命に女権拡大するつもりはなかった。単に女を威嚇し暴力を振るう男が目障り耳障りなだけだった。
優花が苦笑いして、
「私達がそれを作詞作曲しても武さんが編曲してくれるわけじゃないですよね。武さんはフェミが嫌いでしょ」
「俺も手伝うよ。別に俺はフェミを特別嫌っているわけじゃないよ。攻撃的な連中は嫌だけど」
武は涼しい顔で答えた。




