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虹倉姉妹  作者: 加藤無理
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姉妹と楽器

 優花が中学一年生、実花が小学四年生の時、姉妹は音楽を始めた。


 中学校に入れば通常は部活動を頑張らなければならないが、優花は家の手伝いと妹との時間を優先したい旨を教職員や同級生に伝えた。ヤングケアラーではないかと皆は心配したが、むしろ優花は部活動に煩わしさを感じていた。先輩後輩の序列は面倒な上に、朝練や夜近くまでの練習も苦痛にしか思えなかった。部活動をするくらいならば勉強に励むか家事や家業の手伝いをした方が良かった。


 両親の政江と始も優花を心配したが、優花は迷わずに帰宅部を選んだ。両親は勉強を勧めたが、優花は家族と一緒にいる方を選んだ。両親も長女をヤングケアラーにさせている気がして困ってしまった。優花は週にニ度ほど夕食を作ったり、別の日には倉庫や家を掃除したり、休日には実花と遊んだりしていた。


 それを見かねたバイトの高齢者達は優花と実花に音楽を教えた。雨天時で農作業が限られたり、休憩したり、仕事が早く終わったりした時に持ってきた楽器を見せながら懇切丁寧に教えていく。


 ドラム・ベース・ギター・トランペット・ハーモニカ。バイトの人達は自分達が若い頃には時間を忘れて音楽に熱中していた事を思い出しながら試奏してみる。優花と実花は見事に興味を持った。


 ある程度の音楽の仕組みや理論を簡単に教わると、優花はベース、実花はドラムに挑戦した。普通はギターに飛びつくものだと思っていたバイトの人達は意外に思ったが、姉妹を応援した。演奏方法だけではなく、弦の取り替え方や音の調節の仕方も手取り足取り教えた。ベースもドラムも曲の調べよりも拍子と丁度良い速さが重要なのでメトロノームの使い方も姉妹は習った。バイトの人達は今や懐かしい楽曲を練習曲にして姉妹と一緒に合奏する。


 ドラムは大きくて嵩張かさばるけれど、使わない時は倉庫の二階の片隅に厚い防水布を掛けて保管している。高温多湿は良くないので防湿剤も使う。ベースもギターと比べると首の部分が長くて大きい。硬い布で出来た専用のケースに防湿剤と一緒に入れておく。農家の倉庫はねずみがつきものだが、去年に倉庫を修繕して大規模に巣ごと駆除しているのでひとまず安心であると皆考えている。


 ベースの弦を押さえる時に指を思いきり開かないと決まった所に届かない。それでも左手で押さえながら右手で速さとリズムが狂わないように滞りなく弾く。優花は戸惑ったり不貞腐ふてくされたりしたが、バイト達と実花に励まされて挫折せずに続けた。ほぼ毎日一時間ほど練習した甲斐が有り、中学二年生に進級する頃にはかなり上達していた。


 音楽以外にも姉妹は家事や家業の手伝いを少しずつこなす。流石に毎日は大変なので、週に二度は夕食を作ったり、他の二日は倉庫や家を掃除したり、残りの二日は収穫や袋詰めの手伝いをしたりしていた。日曜日には姉妹で音楽の練習。農閑期には姉妹は友人を連れてきてバイト達と一緒に小さな演奏会を催した。

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