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虹倉姉妹  作者: 加藤無理
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将来有望な若い女二人

 虹倉姉妹の話を聞いた業界仲間から、

「堅物のお前が若い女を勧誘するなんて意外だな」

「お前が手を出すとは思わないけれど、マスコミとかアンチとかに気をつけろよ」

「女性ファンが妬むんじゃねーの?」

 と、武はからかわれた。確かに女子大学生と社会人成り立ての女。今まで虹倉姉妹をベーシストとドラマーとして見ていたが、周りの反応で気まずさを感じてきた。性犯罪をする気はさらさら無いが、セクハラをウッカリするかも知れない。同じ学校の女子とバンドを組んだ事があるが、何度も叱られた事を思い出す。

「女には生理が有るから気遣ってよね。だからといって騒ぐのもデリカシーないけど」

「女に『ブス』とか『ババア』とか言ったら蹴飛ばすぞ」

「男女平等に殴る?バカじゃないの。男女共に暴力は駄目でしょ」


 武は緊張してきた。学校や大学でセクハラ対策の授業を聴いたけれども話半分であった。虹倉姉妹の祖父母と両親には顔も身分も知られている。姉妹を傷付けたら訴訟どころではない。


 ここ数年はほぼ単独で活動してきた。業界仲間と仕事する時もあるが、女との接点は限定的だ。女性ファンと会話するか、女性スタッフと打ち合わせするぐらいだ。互いの私的領域に踏み込む機会はほぼ皆無だ。恋愛の余地は無い。


 性的にだらしない業界仲間の男からは、

「お前にも春が来たんだな。二人のうち、一人を俺に譲ってくれ」

 と、イヤらしい事を言われた。武は睨んで、

「お前、そんな事を何度も言うとマジで音楽できなくなるぞ」

 言い返すと、男は舌打ちして立ち去った。思えば武は音楽三昧で恋愛をしたことがない。昔は恋愛に憧れてモテる男達に嫉妬したりもしたが、女に恨まれる男達の末路を横目で見ると、妬むのも馬鹿らしくなった。幸せな結婚生活を送る夫婦を見ても見下すどころか微笑ましいと思う。


 武の両親は細々とラーメン屋を営んでいる。武には弟がいるので、その弟が両親を手伝っている。店を継ぐのは弟だ。三つ年下の弟は今年の春に結婚した。結婚式を少人数で店を貸し切りにして挙げた。武は五曲披露した。


 武が結婚しなくても本人を含めて誰も困らない。


 SNSで姉の優花と連絡を取り合っているので、虹倉姉妹の顔をあまり覚えていない。一方、公園で響いた二人の音は覚えている。美醜で女を判断して恋愛するつもりはない。二人が美人であっても姉妹のどちらにも恋慕しないだろう。


 武にとっては虹倉姉妹は年下の将来有望なビジネスパートナーだ。虹倉姉妹が若い女というだけで周りが茶化しているだけだ。

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