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虹倉姉妹  作者: 加藤無理
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実花の心配

 「え?いきなり?」

 優花から話を聴いた実花が驚いた。優花は、

「私もビックリした。でも、良い機会じゃないかな。プロが組んでくれるんだから」

 実花は眉を寄せて、

「私達、デビューするわけじゃないんだよ」

「たまに練習に付き合ってくれるだけでも良いって言ってたよ」

 優花が言うと実花はうーんと唸った。優花は、

「無理に一緒に組めとは言わないけど」

 実花は上を向いて、

「お姉ちゃんは既に組むと決めたんでしょ。男女二人きりだと少し危なくない?」

 優花は首を傾げて、

「完全に二人きりの時は無いと思うけれど」

「やっぱり心配だから私も一緒に組むよ」

 実花は姉を案じた。


 優花はSNSで家族に自分達が武と組む話を伝えた後、更にその旨を武に伝えた。家族はやや心配気味だが、武は喜んでいる様子だ。


 早速、何時何処でどれくらい練習するのかSNSを通して話し合った。夏休みに武の住んでいる札幌のスタジオで集まって十日ほど練習することになった。旅費と交通費は武が負担する。優花は遠慮しようとしたが、武は経済的な負担に躊躇ためらいがなかった。本当なら武の自宅が防音設備が整っている上に広さに余裕が有るので、自宅で合宿させたいが、若い女二人を宿泊させるのは醜聞になる。また、家族から性被害を疑われる。武の知り合いにスタジオや宿泊施設を運営している友人達がいるので安くしてもらう。


 優花は八月の後半の有給休暇を職場に願い出た。上司は困惑したが、勤務態度も業績も問題なかったので、了承した。その代わり、優花は七月には残業をいとわなかった。


 実花は優花からCDとDVDを借りた。大学からの課題や宿題をこなす傍ら、武の楽曲を聴いた。しかし、何度聴いても楽譜も手本も無いのでどの様にドラム演奏をすべきなのか分からない。一方、姉の優花は勘と耳が鋭いのでベースを再現できる。ベースは低音なので目立ちにくい。けれども優花は耳を集中させて聴き分ける。ベースの無い楽曲でも優花なりに試しに改変している。実花はドラムの有る楽曲ならば沢山聴けばかろうじて再現できるが、武の楽曲にはドラムが無い。


 実花は自身がなかった。けれども優花からはとにかく武の楽曲を沢山聴くようにと命じられている。武もそれを望んでいるようだ。


 姉妹は二人でアパートで休んでいる時に武のDVDを視聴する。最初は胡散臭かったけれども、よく見ると美形の部類だ。特に演奏に熱中している姿は迫力と同時に魅力が有る。優花がちょっとしたファンになるのも頷ける。けれどもそんな武が自分達と組みたがっている。実花には意外だ。


 級友達から、

「男嫌いじゃなきゃ、アンタはモテたのに」

「可愛いのにさ、男子からフェミフェミ言われて勿体ないね」

 と、実花はからかわれるが、恋愛も男も実花には面倒である。性愛とは全く無関係ではあれ、初めて男と接点を持つ。日が経つにつれ実花は緊張してきた。

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