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虹倉姉妹  作者: 加藤無理
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僅かな接点

 優花と実花は頻繁にSNSで連絡を取り合っている。毎日、三十分ほど時間を割いている。互いの近況報告をしている。


 優花は夏に武のDVDを視聴してSNSを覗いて、武とファンが自分達の噂をしていた事を実花に教えた。その時に実花は不快を露わにしたので、武の事を避けるようにしていた。しかし、今回は武がわざわざ公園に来て勧誘を本気で考えている話を実花は祖父母から聴いたのだ。


 優花は舌を巻く思いだった。フォローしていないが動画サイトでこれまでに何度か武の楽曲を視聴している。やはり武は玄人だ。優花と実花に手取り足取り音楽を教えたバイトの高齢者達も上手かったが、次元が異なっている。その武が自分達を勧誘しているのだ。


 実花は、

「来年はお姉ちゃんは就活を始めるし、私も受験生だからね。断った方が良いよね」

 優花は頬を人差し指でくと、

「実花が大学生になって私が就職決まっても、音楽を続けるなら高橋さんと組んでみよう」

 実花は考えているようですぐに返信しなかった。けれども優花が夕食を摂った後、

「そうだね。その頃には向こうも諦めてるよ」


 優花は早速、武のアカウントにコメントを書いてみた。このコメントは非公開になるように設定されてある。

「この間、妹と私とバンドの結成を誘っていただき、有り難うございます。けれども私達には生活が有るので二年から三年ほど考える時間をいただけないでしょうか。途中で諦めてくださってもかまいません」


 入浴して就寝する前に武から返信が来た、

「御返事、嬉しいです。では二年後にまた連絡をお願いします。もしくは連絡先を一つ教えていただければ確認の連絡をします」

 優花は一瞬、迷ったが、あまり使用していないSNSのアカウントを教えた。


 優花も実花も期待していなかった。武もまた自信が無かった。


 優花と実花は大学を卒業して就職活動して、一区切りがついたら二人で家業を継ごうと漠然と考えていた。無理に花婿を探そうとはしなかった。親戚で話し合って見合いをしたり慎重に出会い系サイトを利用したりして新規就農希望者をじっくり探せば良い。四十代になっても二人共、子宝に恵まれなければ養子縁組するか資産や土地をどうすべきかを親族で話し合う。


 優花と実花にはいとこが何人かいたけれど皆、農業に関心が無かった。母方のいとこ達は盆に帰省して土いじりを楽しむが、農業経営をやりたいとは思っていない。父方のいとこ達は兵庫県に住んでいる。父方の祖父母は大阪府の会社に勤務していたが、退職すると広島県に引っ越しした。どちらかというと父方とは疎遠だ。父親の始は頻繁にSNSで自分の家族と連絡を取って近況を皆に話しているので、皆が息災なのは知っている。


 まだ高校生なのに家族計画を考えるのは面倒だ。しかし実花は嫌ではなかった。元々実花は恋愛に懐疑的だ。美醜で女子を判断する上に様々な能力を要求する男子達。交際してやるしてやらないと豪語する男子達。そういう態度を毎日教室の隅で見聞きすると女子の方が萎える。女を見下している割には性欲を持て余している。さりとて同性愛者はそれほど多くない。男好きの女子を男子はもっと重宝しても良いのに尻軽だと軽蔑する。


 実花は教室の片隅で少しずつ勉学を励んだ。

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