私なりの努力
「勝利は、もっとも忍耐強い人にもたらされる」
フランスの皇帝ナポレオン・ボナパルト
私はボディーガードだった。
民間の会社が運営しているボディーガードをしていたが、突如として仲間。しかも社長に裏切られ、仲間も護衛対象も。そして、私も、
”殺された”
しかし、私はどういうわけか死んでいなかった。
逆に、中世ヨーロッパのような土地にいた。
この土地にきて1週間。
私なりの調査で分かったことがある。
おそらく異世界。アニメとかでいう”異世界転生”だ。
この世界は、私がいた世界ではない。
タイムスリップして、そこが日本ではなく、ヨーロッパのどこかの国ということも完全否定できた。
理由は大きく分けて2つ。
1つは、言語は日本語でも英語でも、フランス語などでもない未知の言語であること。しかし、街にいた人の言葉が理解でき、私が話しても向こうは通じた。文字についても私は読めた。街中にある看板や机にあった書類などを見たが、全て読み取ることができた。書くこともできそうだった。
2つ目は、歴史が違ったこと。特に宗教改革といった革命がないことや、黒死病の流行、ルネサンスなどの事例がなかった。逆に知らない戦争や国家の建国と消失、冒険家の活躍したことなどがあった。これは、書店と思われる場所に立ち読みした際に歴史書を読んで知った。しかし、普通に一般市民も読める本を売ることを許可しているとは、驚きだった。検閲とか激しい時代でありそうなのに。
3つ目は、2つ目と関係するが、まず国名も分からなかった。フランス、イギリス、神聖ローマ帝国、スペイン、ポルトガル、オランダ、日本などの国名も国旗もなかった。
私は、”中世と近世が混じったような時代で、国がある世界だ”と結論付けた。
書店や多くの書籍があったこと、街の人々の会話などから、この国は自由がとてもあることが分かった。表現や思想、信仰の自由があるようだ。出版物などにも検閲や規制もないようだった。経済も好景気なのか、物価は高すぎず低すぎないで、経済は国民からすれば文句はないそうだ。制度や法令にも特に文句や不満がないという。国の方針は、君主である王と、議会が協力して行っているらしい。
……いったい、どんな国の運営をしているのだろう。
国民の不満がほとんどないような国だ。どんな君主なのだろうか。同時に、議会においても信頼関係があるのだろうか。
まだ分かっていないのは、軍事と警察だった。ここまで来ると、相当な実力があるのだろう。
「偵察してみようか。」
万が一相手をすることになった時のために備えなければならない。
本音は、好奇心からでもある。
5センチメートルのナイフを手元に隠しておき、できる限り影を利用していって侵入していく。
ここまで確認できたのは、傭兵団があることだ。傭兵は規模は大小様々であるが、基本的にトラブルも 起きていないようで、傭兵というわりには統制があるようだった。
城の近くまで接近した。人の影に隠れたり、建物などに隠れたりして適宜場所を変えて、この国の軍事、警察力を偵察していく。
「意外と、しっかりしてるわね。」
城の櫓といった施設に加えて、警備もしっかりなされているようだった。
櫓には弓兵やクロスボウ。少し遠くには投石器。そして、おそらく大砲。中世末期には大砲が見られるようになり、14世紀末~15世紀の百年戦争で本格的に運用。石や鉄の弾を飛ばして城壁を破壊したというが。おそらくあれは城を防衛するために使用するように砲口がこちらに向けられている。遠距離から攻撃できるように、よく備えられている。個人装備は、甲冑のような装備を身に着けている。剣、槍。兵士nによっては斧を持つ兵士もいる。甲冑のような鎧だけでなく、まるで軍人の制服のような格好の兵士もいる。規律も、装備もよく行き届いている。
国民との信頼関係は良好なようだ。軍が特段威張ることもないし、国民も軍を信じないというわけではないようだった。他に分かったことは、警察機関はないことだ。あくまでも軍が治安と防衛を担っているようだった。
「中世のような、近世のような。不思議ね。」
絶対王政で国民の不満溜まりまくり!!……というわけでもなさそうだし。
……なぜ私はこの世界にいる。
この国について少しずつ分かってきたのに。逆に疑問が増えてしまった。
すると、巡回していた兵士と目が合ってしまった。
すぐには目をそらさずに、ゆっくりとただ見ていた風に目をそらす。そして、少し早歩きで逃げる。
まぁ、そう簡単にはいかないものではある。
「そこの、女性!」
おそらく私に声をかけたのだろう。私の世界でいう警察官からの職質だ。
声をかけた兵士の2人組に加えて、近くにいた4人もこっちにきた。合計、6人。頑張ればやれなくはないが、傷つけるつもりはないし、戦うつもりもない。しかし、ナイフには手をかけておく。
いや、まだ向こうはゆっくりと歩いてきている。こういう時こそ。
走って、逃げる。
「あ、おい!!」
「待ちなさい!」
待てと言われて、待つものか、ばーかっ!!
全力ダッシュで逃げる。相手は重い装備を身に着けているからこそ、走りにくいはずだ。鎧も、武器も全てが重い。走るには向いていない装備だからこそ、逃げ切れるはずだ。
路地などを使って逃げていく。卑怯だと言われても仕方ない。死にたくないからね。
途中でバラクラバを外して、ポケットに入れる。まだ自分の顔はしっかりとは見られていないはずだ。髪型はどうしようもないが、髪色は黒の人はこの地域にもいるため顔だけでも隠せば逃げれるはずだ。監視カメラのない時代で助かった。
「こっちに逃げたはずだ!! 捜索の範囲を広げろ。警備隊の騎兵隊に巡回させろ!」
「門で検問を開始しました。」
「よし。伝令は各検問で待機していろ!!」
影に隠れながら兵士を偵察していたが、この国の軍隊はどういうわけか行動が迅速で臨機応変に行動している。騎兵隊の使い方も上手い上に、騎兵隊の装備も重装備だ。装具を付けている馬もいる。
……暑くないのかな。あんなに身に着けて。
あ。暑そうにしている。
騎兵自体が厄介であるのに、馬にそのものも脅威だ。鎧の装具を付けた馬に踏み潰されれば終わりだ。
「もっと遠くに逃げるしかないか。」
この街は気に入っていた。おそらく国中が私を追いかけるであろうから、この国からもおさらばになるであろう。仕方ないが欲張って偵察しに行った私が原因だ。静かに、出て行くとしよう。
しばらく歩いたり、走ったり、隠れたりして安全を確保しつつ進んでいると巨大な門が見えてきた。
私の調べでは、おそらく抜け道があったはずだ。そこから出るとしよう。万が一のための退路を用意しておいて正解だった。
しかし、ここで不測の事態が発生した。よりによって、抜け道が発見されてしまった。どうやら抜け道は密輸をしていた集団が使っていたようだ。それが見つかり、同時にその集団が捕まったようだ。同時に私のことを捜索する部隊の伝令も到着したため、歩兵と騎兵隊が集結していた。市民らが大勢いるが、その中から私が見つかるのは時間の問題だ。この調子だと、他の退路周辺もこんな状況であろう。
「おい、聞いたか。騎士さんたちは、黒い髪をした男か女か分からない格好をした奴を必死に捜しているんだってよ。」
「へぇー? そういえば、この間、そんな奴を見たような……。あ。あそこにいるような人だった気が。」
不味い。
しかも、それを耳にした騎士が尋ねてる。うわ、こっち見てるし。最悪。不運だろ、私。
ハルバートを持った騎士を先頭に、騎士らを連れてこっちにくる。市民らは彼らを通すように道を開けていき、私のところにつくような道ができた。
「そこの者。少しよろしいか。」
「……はい?」
本当に不味い。
ナイフを中にぶら下げているなんて知られたら、私はそのハルバートで斬られるかも。
どうする逃げるか。正直に話すべきか。いや、そもそもこの世界の人間ではないと話して誰が信じるよ。私もまだ混乱しているのに。
「あそこにいる不届き者共以外にも、我々騎士団はある人を捜している。ちょうど、貴君のような黒い髪で、短い髪。見たこともない服装。そして、男か女かも分からない背格好。失礼だが、騎士団本部までご同行を願う。」
白髪で背の高い、老兵。でも、老兵とは思えないオーラと見た目。声だけでも圧倒される。後ろに控える騎士らのオーラがやばい。これは、逃げられない。
「わ_」
「分かりました。」
そう言おうとした瞬間、銃声が響いた。
私は反射神経的に伏せた。伏せながら、腰にあったマチェットの柄の部分に手を運ぶ。
突然の銃声で騎士も市民らも混乱とパニックを起こしていた。しかし、騎士らは基本的に冷静だった。騎士らも反応して、盾を持つ騎士らが市民らを守るようにすぐに陣形を組んでいた。よく訓練されている動きだった。
さて、銃声ということは敵は何らかの銃火器を持っているであろう。
……いた。さっきの密輸集団の中にいる1人が、火縄銃のような長い銃身を備え付けた銃。扱いにくそうなくらいに長い銃を扱っているために、動きは鈍かった。しかし、銃口が至るところを向いているため危険であった。市民らに当たれば危険だ。
「銃を捨てろ!」
盾を持った騎士たちが少しずつ前に進み、距離を詰めていく。槍やそれこそ、銃を持つ騎士らも続く。
銃を持つ敵は少し後ろに下がりながらも、まだ何か企んでいる顔をしていた。
すると、捕まっていた他の数名もどこからともなく銃を取り出した。しかも、それを使って、むやみやたらに、適当に撃ってきた。狙いは雑に撃っているが、飛んできた銃弾に被弾してしまう人も出てきた。騎士らも動いてはいるが、数人が被弾すると一斉に混乱が広がった。特に、市民らが助けを求めてしがみついたり、近づいたりしたこともあり、動けなくなったことが致命傷だった。指揮官級の指示も一部では届いていても、大半は届いていないようだった。逆に、届いていても行動できないところもあるようだ。
これ以上は、見てられない。
私の持つナイフでは、ナイフの届く距離に接近する前に撃たれる可能性がある。
投げナイフは、届かない。
銃は私はない。
近くで被弾した弓兵の弓矢は、私は使えない。
周囲を見渡す。
ボウガン、火縄銃を持つ騎士。被弾した騎士の持っていたであろうボウガンと銃。
無意識に行動を開始していた。あちこちに逃げようとする人の間を抜けていき、拾い上げる。
使ったことのないボウガンと、火縄銃。しかし、使用方法はなんとなく分かる。
近場にある建物の屋上に上がって、銃を構える。
敵は隠れもせずに狂ったように撃っている。もしかしたら、薬物を使っているのかもしれない。敵は、4人。銃を所持している。1人ずつ排除していく。
当然、スコープやサイトといった照準器はないため、アイアンサイトでの照準となるが、問題ではなかった。あとは、この銃が信頼できる品物かどうかという点だけだった。
アイアンサイトを覗き込み、照準を合わせる。
引き金を、引いた。
私が今まで手にしていた銃器とはまた異なる銃声と反動。
それでも、撃ち抜いていく。
銃の弾がなくなれば、ボウガンを使って敵を倒していく。
敵が残り2人となると。
「突撃!!」
ほぼ同時に騎士らは盾持ちに続き、敵に向かって走っていく。
一応、全員の無力化はしていなので、尋問とかには困らないだろう。
しかし、一番困ったのは私自身だった。
「そこの者! 今すぐ、屋根から降りてこい!!」
まぁ、そうなるよね。
弓矢、ボウガン,銃を向けられた。敵は既に拘束されているため、残りの脅威は私だけであろう。銃とボウガンを持つ私一人でも、脅威と認識したのだろう。一対騎士数十名か、もしかしたら数百名という構図だが。
「分かった。」
勿論、抵抗はしない。
銃とボウガンを屋根において、手を見える位置まで挙げた。抵抗の意思はないことを彼らに知らせる。抵抗の意思がないことを確認したためか、騎士の数名が屋根に登り、武器を回収した。
「動くなよ。」
銃などを向けられた状態で屋根から降りていく。地面に着いたと同時に、槍なども加わって向けられた。それほどに警戒するということは、私の射撃を脅威と認識をしたのだろう。騎士らの顔も怖い。
「貴様を連行する。異議は認めない。」
先程の老兵が言い終わるとほぼ同時に肩をつかまれて地面に膝をつかせられる。腕は左右にいる騎士につかまれて、抵抗できないように拘束された。すると、女性の騎士が後ろから現れて、ボディチェックを始める。
怪しまれる物しかないのだが。
予想通り。服などからじゃらじゃらと、ナイフとマチェットが何個も出てくるので、怪しさと疑いが増えていった。それらは証拠としてなのか、きちんと丁寧に収容されていた。ふ~ん。意外と丁寧にどうも。
幸運だったのは、小さいナイフは騎士らには見つからなかった。
「怪しいな、貴様。」
「よし、本部に連行だ!」
こうして私は後ろに手を回されてロープで拘束していく。しっかり解けないように、切れないように何重にも結ばれていった。しかし、それぐらいだった。あの敵らは、足にも拘束されて、ほぼ引きずるように運ばれているが、私はそんなことはなく歩かされた。助けてくれたお礼なのだろうか。 何しろ、それは感謝だった。
道中、市民らの視線が痛いくらいに突き刺さった。こういう光景は不思議なのだろうか。それとも、珍しいのだろうか? 謎は深まるばかりだけど、さっさと早く連れて行って欲しいと思う。大勢に見られるのは、慣れないものだ。
しばらく歩いていると、遠くから見えていて先程まで偵察をしていた城の門に到着した。厳戒態勢なのか、装甲ばかり身に着けた騎兵隊などが門と、門内に何人もいた。原因は私だけではないと思いたいが、ここまで厳重な警備だと、この国の元首は本当に、相当、重要な人物なのだろう。
城内に入った後は目隠しをされて、数分。いや、数十分くらいは歩いた。気づけば周囲の音は静かになり、温度も低くなった。地下に入ったのだ。おそらく地下の牢屋にでも連行しているのだろう。にしては、静かすぎて不気味であった。
「しばらくここにいてもらう。」
目隠しを外されると、既に牢屋の中にいた。静かに牢屋のドアを閉められた。
牢屋の構造は、ドアがあるところには木造ではあるが完璧に、綺麗に作られており逃げることは難しそうだ。地下なので窓はなし。灯りは、基本的に蝋燭ぐらいだった。火事を起こさせないように、高い場所にあったり、おそらくガラスのような容器にあったりと騒ぎ、暴動、脱獄、逃亡などを防止する仕組みがよくなされていた。ただ、換気はしっかりなされていて清潔感があった。ベットも清潔感があり、寝心地は悪そうではあるが、綺麗だった。
中世や近世の牢屋は、換気がなく清潔感もないため、ほぼ死と隣り合わせだったというが。
部屋には、清潔そうなベット。固定された机。椅子。机にはメモ帳のような書けそうな紙。鉛筆。そして、灯り。
私の持ち物。隠し持っていたナイフは、押収されたが小型ナイフの1本は見つからずにまだ持っていた。あとは、まぁ着ている服ぐらいだろうか。
「さて、どう脱獄しようか。」
ピッキング道具は残念ながら持ち合わせてない。持っていても、鍵がある部分に手を入れて作業するにはまず無理な構造をしていた。地下であるため穴を作ることも難しい上に加え、道具も持ち合わせてない。警備状況も分からないため、上手く脱獄はできそうになかった。
「どうするかなぁ。」
こういう時こそ吞気な雰囲気にしてマインドセットをしていこうとした。
……いや、無理そうだった。正直、半分諦めている。あの混乱で、逃げればよかった。でも、あのまま放置するのも嫌だし。子供もいたわけだし。
……私は、考えるのを、やめた。
しばらく椅子に座って暇をしていると、ドアが叩かれて小さな窓のようなものが開く。
「ほら、食事だ。」
「あ、どうも。」
食事なんてないかと思っていた。
机に置いた。食事は、パンとスープ。スープは意外にも温かった。
捕まえた奴にも最低限の食事。人道的に扱っているようだった。
口にしようとしたが、毒が盛られている可能性も否定できなかった。他の牢獄には人がいない雰囲気であるため、もしかしたらと思いとどまり、口にはしなかった。空腹ではあるが、毒で苦しんで死ぬのは嫌である。
「もったいないけど。許して。」
数十分後。看守が食器らを回収しにきた。驚いた顔をしたのが隙間から見えた。
「食ってないのか。毒なんてないのに?」
「すみませんね。」
「……はぁ。」
すると看守はスプーンを使って、スープを一口飲んだ。パンも小さく一口。数分そこにいたが、様子が変わることなく立っていた。
「ほらね。冷めているが、食べた方がいい。」
そういって、また置いて立ち去った。
……怪しいが、あんなことをされたら食べるしかなかった。
「いただきます。」
そういって、食べ始めた。冷めているが、美味しかった。何日ぶりの食事なんだろうか。調べるために歩き回っていた時は、水と飲食店などに忍び込み、塩や食材を少し盗んでいたが量はなく、食べない日がほとんどだった。そういう意味では、冷めている食事でも十分だった。
そんな牢獄に収容されて、おそらく2日過ぎた。
3日目の……たぶん昼頃。足音が複数、こちらに向かっていた。
そして、ここの牢獄前に止まる。
「出ろ。」
鍵が開けられて、武装した数名の騎士が入ってきた。そして、私を拘束し牢獄を出て行く。今回は、目隠しはしなかった。
ここで問題なのが、牢獄を出てどこに移動しているかだった。尋問か、尋問のための拷問か、死刑台か、それともどこかに移送されるのか。
「逃げようと思うなよ。」
また歩かされるかと思いきや、馬車の前に止まった。
装飾は地味ではあるが、囚人などを運ぶような馬車ではなかった。どこかの貴族なのかは知らないが、私には関係ないだろう。
「乗れ。」
「は?」
そして有無を言わさずに馬車に押し込められた。
は?
なぜ、この馬車に乗るのか思っていると、騎士が乗ってきた。その騎士は先日いた老騎士とボディチェックをした女性騎士だった。彼らがこの馬車に乗ってくる理由も分からなかった。頭の回転が追いつかない上に、この状況と空気。逃げ出したいが、いつでも斬れると言わんばかりに女性騎士は剣の柄の部分に手を当てている。
混乱している顔をした私を見てか、目の前にいる老騎士が口を開いた。
「混乱も含めて、不思議に思うかもしれないが俺たちとしても、不思議に思っているのだ。」
「えぇ。本当に。命令なら従う他はないですから。」
「命令?」
命令ということは、騎士団の団長からなのか。軍の司令官か。それとも、また違う組織のトップか。
昨日は色々あったため、しっかりとは見られなかった2人の顔が見えた。
老兵は、整えられた銀と白い髪。整えられた髭。皺はあるが、それでも威風堂々とした背中と、顔つき。体もまだまだ動けそうな体であった。服装は、昨日とは異なって甲冑ではなく制服を着ていた。その制服からも体格の良さが分かった。俗に言うイケおじだった。女性騎士は、薄い桃色でシニヨンという丁寧に結ばれている。彼女はとても背筋がよい。ちゃんと教育されているのか、真面目なのかが分かる。甲冑姿もよかったが、制服姿もスタイルがよいため似合っていた。
共通点は制服という点よりも、ちゃんと剣で武装していることだろう。
「命令とだけ言っておく。あと、別に殺す場所に向かってはいないことだけは伝えよう。まぁ、貴様の返答によっては、変わるかもだがな。」
いや、普通に爆弾発言されても。隣の女性騎士も。うんうんって頷いているけどさぁ。
本当にどこに向かっているのだろうか。
本当に逃げ出そうと思い、隠し持っているナイフで拘束具をなんとかして逃げようかな。
そんなことを考えていると、馬車が止まる。
「よし、着いたな。降りろ。」
「ほら、さっさと歩きなさい。」
不貞腐れながら歩くと、女性騎士がどつく。それによって、馬車から降りるのに足場を踏んでいたが踏み外して転んだ。盛大に。
漫画のような音を出して、転んだ。
「いたぁ! 何するのよ!」
「うるさいわよ。ほら、立ちなさい。」
はいはい、と言いながら立とうとすると女性騎士から手を差し伸べてきた。
「え?」
まさか手を差し伸べられるとは思っていなかったので、何回目かも分からない間抜けな声が出てしまった。
目の前には、綺麗な手が差し伸べられている。今まで、見たことのない光景だった。
私は、無意識に手をつかみ、立ち上がる。
「ほら、行くわよ。」
老兵の後ろについていった。
彼らの後ろについていこうと、顔を上げた。
「……え?」
はい、間抜けー。
間抜けな声は出たけれでも、誰もが出すであろう。
目の前には、
巨大なお城があったのだから。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
感想等、お待ちしております。




