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アルラウネと魔王様  作者: 化猫


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9/17

9、アルーナ出仕


 次の日の朝。早速アルーナは魔王様の小間使いをすることになった。

 といっても1から10まで初めてのことばかり、服装すら自分ではどれが正しいのか分からなかった。


 見るに見かねた魔王様に全て用意してもらったのだ。

 むしろ、その手間を惜しんで小間使いを解任にならないかと期待していたので残念だ。

 嘆くアルーナに対して、アイビーは嫉妬の念を送ってくる。

 執務室にもご一緒できるのが羨ましいらしい。昨日は応援してきたくせに、それはそれこれはこれらしい。

 複雑な乙女心よ!と訴えてきた。


 結局あの後はいつも通りぬいぐるみの中で休んだ。てっきり部屋も変えられると思ったのにそのままだ。


 用意された服を着て、ぬいぐるみを持っている魔王様の元に行く。

 ウサギのぬいぐるみを持つ魔王様。

 美麗な魔王様だからこそ、違和感がすごい。


 アイビーは魔王様かわいいと興奮していた。これはこれで需要はあるらしい。


「魔王様、これで大丈夫でしょうか」

「良いな」


 ズルズルとした裾を持ち上げて見せる。

 足の方は足首が隠れる長さだが、裾が手が出ないほど長い。

 今はちょうど魔族が大人になるかならないか位の身長で、低いわけではない。

 魔王様の胸の高さぐらいはある。


 これで良いんだ。そういうデザインなんだろうか。


「外に出るときはフードも被っておけ。その方がアルーナも落ち着くだろう」

「はい、分かりました」


 アルーナのフードを持つと魔王様が被せてくれる。

 すごいなこの布。色々な付与魔法が施されている。

 目元まで覆っているのに、透過魔法で向こう側がしっかりと見えていた。


 これなら転けてしまうこともない。


「防護系も付与をしてあるからな。万が一何かあれば、それを着たまま丸まっておれば良い」

「魔王様がいらっしゃって、万が一なんてあるのですか?」


 万が一攻撃されたら、大事な証人であるアルーナは守って貰えるだろう。

 魔王様が守ってくれるなら、アルーナは絶対に傷つくことはない。

 他の絡め手は自分で気を付ければ何とかなる。


「・・・フッ、クク。無いに等しいだろうな」


 魔王様は一瞬驚いた顔をされると、フード越しに頭を撫でてくださる。

 魔王様はスキンシップが多いタイプなのは、理解したので全く驚かない。

 朝食を食べろとフルーツを魔王様の手から食べさせられたので、慣れてしまったのだ。

 隠れている期間を除けば、まだ会って間もないのに物凄い順応している。


「お前の本体にも結界を施したから、ここに戻っても安全だろう」

「ありがとうございます」


 ペコリと頭を下げた。

 アルラウネは火に弱い。ウサギのぬいぐるみには、一番防火の魔法が強く付与されていた。


「声はできるだけ出すな」

「はい」


 きっと魔王様なりの配慮なのだろう。逆恨みをされないように、できる限り私が誰なのか分からなくしてくれているのだ。


「さて行くか」


 魔王様は自然とアルーナを抱き上げると、移動魔法を使った。


 目を閉じて開く、その一瞬で部屋が変わっていた。

 机の上に書類が沢山乗っていた。


 ここが執務室か。

 インクの匂いが充満している。


 唖然とした視線がアルーナに向けられた。

鱗がある種族もいれば、首から上がないのも居る。

 目がなくても、凝視されているのが分かる。


 私は空気、私は空気と言い聞かせて、知らないふりをした。

 魔王様は当然見られた上で全く気にしていない。魔王様が側に居るだけで、安心感が桁違いだ。


「お前はこの椅子を使え、必要がある時はおれが命じる」


 首を縦に振って答える。

 魔王様の横に椅子を置かれて、その上に座らされる。


 ここであの声が誰かを聞き分ければ良いのだ。

 アルラウネとして、1日ジッとしているのは苦じゃない。

 魔王様の部屋に一輪だけ花が飾ってあるので、その子とおしゃべりをしていても良い。


「良い子だ」


 魔王様は、またアルーナの頭を撫でると、自分の仕事に取り掛かり始めた。 


「陛下」


 メガネを掛けた神経質そうな銀髪の男が机の前に立つ。この人も魔王様とは系統の違う美形だった。

 長い銀髪をおしゃれに編み込んでいる。


 この人の声じゃない。

 もっとダミ声でなんというか下品な感じだ。


「なんだ。ハウウェル」

「誠に失礼ながら、その者に関してお聞きしたいのですが」

「ああ、これは小間使いだ」


 物凄くシンプルに答えている。

 絶対それでは納得できないよね。


 魔王様の答えのせいで余計に視線が鋭い。

 美形な魔族は怒ると余計に怖い。


 完全に怖じ気づいているアルーナとは反対に、魔王様はまた意味もなくアルーナの頭を撫でている。

 銀髪の魔族はそれを見て、眉間にシワを寄せている。


 ひぃっ、これ絶対に怒ってるよ!


「昨日までは居なかったと記憶しておりますが」

「昨日見つけて、今日が初めてだからな。安心しろ城の経費ではなく、俺の私財から給料は出す」

「いえ、そんなことを考えているのではございません。それに以前は小間使いなど不要と仰っていたではないですか」


 銀髪の魔族が食って掛かるのを魔王様が面倒臭そうに見た。

 お願いだから頭から手を離してぇ。


「お前が言い出したのだから、探す手間が省けて良かろう。それよりもこの議題に関してだ」


 魔王様の話しは終いの合図に、銀髪の魔族がアルーナを睨み付ける。

 視線で氷漬けにされそうだ。


 アルーナはその視線にフード越しでも気づくが、全力で見ていないふりをする。

 怒れる魔族は触るべからずだ。


 アルーナは注目を浴びるのを、身体を小さくしながら耐えた。



「失礼致します」


 その声に少し顔を上げる。

 何回も色んな魔族が入ってきては出ていく。

 いい加減この注目に疲れてきた頃、ようやく目当ての人物が入ってきた。

 ダミ声の聞き覚えのある声。


 もう、遅いよ!


 机の下で、魔王様の服の裾を握る。

 すぐ側の椅子に座っているので、入ってきた魔族には、アルーナの合図は机の下に隠れて見えない。


 魔王様は、チラリと視線だけ動かして確認してきた。

 それに、こっそりと頷き、手を離す。


 襲撃の首謀者はこの魔族だ。

 魔王様の眼が一瞬爛々と輝き、獲物を見つけた獣に見えたのは、絶対に内緒だ。


 

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