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アルラウネと魔王様  作者: 化猫


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5、アルラウネのお引っ越し


 あれ、ここどこ?


『アルーナようやく起きた~』

「ん?おはよう」

『おはよう、新しいおうちに到着したよ~』

『あの強い魔族のおうちだよ』


 フワメリー達がそれぞれ自由に話している。

 つよいまぞくのおうち?


 ・・・強い魔族のお家!?


 アルーナの寝ぼけていた頭が一気に覚醒する。あの物凄く強そうな魔族だよね。

 買われちゃったの!?


「つ、強い魔族のお家って・・・」

『アルーナが寝ちゃった時に来てた魔族だよ』


 嘘だと言ってという気持ちで聞けば、完全に違う可能性が無くなった。


 とても信じられないけど、あの魔族はウサギのぬいぐるみを買ったのだ。

 アルーナは茫然自失から立ち直るのに、数刻掛かった。


 ようやく立ち直って辺りの気配を辿れば、誰かが居る気配はしない。あのオーラが駄々漏れなあの魔族もいないのだろう。


 こっそり場所を確認するだけ。


 唾を飲んで、きっと大丈夫と自分に言い聞かせたアルーナは分身を作り出した。

 ベッドの上に座った状態の分身ができる。


 辺りをキョロキョロと見回すが、部屋にはあの魔族はいない。

 その事に安堵した。

 姿が見えなくても、居るとバレれば一体どんな目に遭うだろうか。

 食べられてしまうのかもしれない。

 アルーナは、自分がサラダになる想像をして顔色を悪くする。


 上品な部屋だ。落ち着いた印象の家具が並ぶが、どれもとても良さそうなものばかり。

 中には細かい彫刻が彫られているものまである。それにしても必要最低限なものだけ置かれた部屋だ。


 寝室を見渡しても、大きなベッド以外はぬいぐるみ以外特に目立ったものは無い。


 そんな中にあるウサギのぬいぐるみは、寝室のベッドの上に置かれていた。ウサギのぬいぐるみは、他の動物の形を模したぬいぐるみに囲まれて置かれている。

 どれも並べられているのは、あの店のものばかりだ。


 そこだけ部屋の印象に反する、可愛い空間になっている。

 場違い感がすごい。あの魔族は意外と可愛いものが好きなのだろうか。


 乱れて、前に出てきていた緑の髪の毛を横に流す。その手を伸ばした。


 ウサギ以外の他のものを触ってみると、フワフワとした毛の子と、さらっとした滑りが良い布を使っている子がいる。


 あの店主のこだわりなんだろうか。

 悪い想像を吹き飛ばすように、ひたすら撫でる。


 落ち着いたところで、大きすぎるベッドから降りた。

 アルーナは、今は完全に子どもの姿になっている。分身は精神年齢に直結していると、はは様は言っていた。

 アルーナはまだまだ成長途中なのだ。


 小さい身体では、この寝室は大きすぎる。


 机の上を見ようとしても、上にあるものを確認できない。


 不便すぎる!


 ウロウロと寝室を徘徊しながら、ドアの方へ向かう。

 ドアに耳を当てても、何も音がしない。

 防音魔法をかけている様子も無いので、きっと誰もいないはず。


 アルーナは、恐る恐るドアを開けた。

 うっすらと向こうの様子を伺うだけの隙間だ。

 隙間をシュッとなにかが動いた。

 アルーナは飛び上がると、分身をすぐさま消す。

 一瞬にも無い間だったが、心臓がバクバクと鳴っている。


 絶対何か居た!

 魔力を感じなかったのに、生きている何かが居る!

 生物には植物に至るまで、全て魔力を持っている。


 感知することに長けている筈のアルーナが存在に気づけないなんて。

 臆病なアルーナにとっては感知が生命線。寝ていない限りは、誰よりも鋭い自信があった。

 ウサギのぬいぐるみの中で落ち込んでいると、ドアが開く音がした。

 魔力の感じから、例の魔族だ。


 自分の感知が衰えているのではない事に安堵しながら、耳をそばだてる。


 衣擦れがした後、木の扉を開ける音がした。


 クローゼットだろうか。


 今度はベッドが重みを受ける音がする。

 てっきり昼だと思っていた。

 悩みすぎて時間が経っていたのかもしれない。今さらだけど、少しだけお腹がすいていた。


 アルラウネは燃費が良い生き物。

 数日間は抜いても平気だけど、アルーナは食べるのが大好きだ。

 あの魔族と会って以来、緊張していたからだろうか。エネルギーが一気に使われたせいで余計に何かを食べたくなる。


 お腹すいたなぁ。ひもじく思いながら、外の様子に耳を傾ける。

 しばらくすると、ふわりと身体が持ち上げられた気がした。

 絶対に動いてはいけない状況にアルーナが緊張していると、また何処かに置かれた。


 ウサギのぬいぐるみを置くと、その前にも何かが置かれた音がする。


「おやすみ」


 あの魔族の声が優しくぬいぐるみに掛けられる。

 チュッとリップ音がして、離れていった。


 ・・・あの魔族、ぬいぐるみに話しかけるんだ。

 別の衝撃を受けながら、魔族が寝始めたのを気配で感じる。


 ・・・今ならバレないかな。


 ドキドキしながら、分身を作り出す。

 作られた瞬間、テーブルが目の前に見える。

 ふんわりと良い香りがする。

 これ紅茶だよね?


 テーブルに近すぎて見えなかったのを一歩下がる。つま先立ちになって、テーブルの上を覗いた。


 ぬいぐるみのすぐ目の前にフルーツの籠と紅茶が置かれていたのが目に入った。


 えっ、すごく美味しそう!

 見たことの無いフルーツまであるよ! 


 興奮からアルーナの頭の上の葉っぱもピンッと立つ。

 椅子を一生懸命のぼった。


 嬉しさのあまり手を伸ばしそうになるが、待てよと一度ベッドの方を振り返る。

 ベッドは天蓋に覆われていて中の様子はうっすらとしか確認できない。

 一応人影は、ベッドに寝そべっているようだ。


 アルーナが机の上に座って、様子を伺っていることには気づいていない。

 気づかれていれば、すぐに不審者として捕まってしまうに決まっている。


 なら、ちょっとだけバレないように食べても良いよね。


 アルーナは目をキラキラとさせながらフルーツを見る。

 まず目についたのは、グレイプの実だ。


 グレイプの実は、枝から艶々とした紫色の実が沢山くっついている。

 これなら、一つ拝借しても分からないだろう。

 一番密集していて、取ったのが分かりにくそうな場所から一つとる。

 それをパクッと口に入れた。

 歯を立てるとジュワリと果汁が口にあふれでてくる。


 んー!美味しい!

 今まで食べた中で一番美味しいかもしれない!


 美味しさのあまり、もう一つ取ると頬張った。紅茶も分からない位の量を飲む。

 これはあの魔族のだったんだよね。


 空腹感で忘れていた罪悪感に襲われる。


 お腹がすいていたからって、勝手に食べちゃダメだったよね。

 きっとあの強そうな魔族の事だから、自分じゃなくて誰かがあの魔族の為には用意したものなのだろう。



 食べ終わると、机の上から降りる。

 ベッドの横まで行く。


「食べてごめんなさい。とても美味しかったです」


 すぐにパッと離れて分身を消した。



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