3、アルラウネ町へ強制連行!?
『アルーナ!アルーナ!大変だよ起きて!』
「ん~?うん、うん。分かったからもう少しだけ寝かせてー」
『アルーナってば寝ちゃダメだよ!あっ!』
まだ眠いよ~。目が開かない~。
昨日夜空を堪能していたせいで、まだ眠くてたまらない。
焦るフワメリー達の声が小さくなり、アルーナはその意味に気づけないまま、もう一度眠ってしまった。
遠くでゴトゴトと音がする。
身体が不規則に揺れるのを感じた。地面で寝ていたアルーナがそんなものを感じる筈がない。
眠たいと訴える頭を何とか覚ましながら、目を開けた。
すると目の前一面にはフワメリー達の白い綿毛が広がっていた。
「えっ!?何事?」
「あ?何か声が聞こえたか?」
アルーナが困惑から出した声に、ダミ声の男の声が返ってくる。
知らない男の声に、叫びそうになる。
この何処かに向かっている振動。
良く考えれば、何処かに連れて行かれる最中のようだ。
アルーナの顔色が悪くなる。
『しぃーーーー!』
「・・・!?」
フワメリー達の声が聞こえてきた。それに首を必死で縦に降る。
手は口の上だ。開かないように抑えた。
「お前はビビリだな!んなもん聞こえねぇよ!」
「そうか?確かに女の声だと思うんだが」
「そんな奴がどこに居るって言うんだよ。
森ン中なら隠れててもおかしくねぇが。ここ草原だぞ、隠れるとこねぇだろ」
「だよなぁ」
男達の声に森から出てしまったことを知る。アルーナの顔から血の気が下がる。
まだ心の準備してないよ!?
後1ヶ月ぐらい森で生活しようと思っていたのに!?
まるでアルーナの心の中を悟った大いなる存在に、強制的に町に連れ出されそうだと思った。
動揺から擬態が解けそうになるが、フワメリー達が一生懸命宥めてくれる。
『アルーナ今擬態を解いたらダメだよ。ボクたちと離れ離れにされちゃうかもしれない』
「ひ、一人は嫌だ」
『うん、分かってるよ。だから頑張るんだよ!』
「うん・・・」
心が折れそうになりながらも、道中息を殺して擬態を保っていた。
外の声に耳を傾けると、町に入ってしまったようだ。
ガヤガヤと森の中とは違うざわめきに完全に慄く。
外に意識をやれば、他の植物達の声も聞こえてきた。しかも、町の中の植物はお喋りだ。
アルーナが返事を返す前に、次から次へと話し掛けてくる。
お陰で自分は今、商業地区といわれる場所を過ぎたらしい。職人街だと言っていた。
教えてくれた植物はやたらと自慢気に語っていた。
「おーい、じいさん。生きてるかぁ?今日の納品物はここに置くぞ」
「うるさいぞ、小僧!生きておるわい!」
「おー、おー。元気そうで何よりだ。これがフワメリーの白綿毛。しかも、取れたてホヤホヤだ」
「フーム。確かに色は悪くない」
色って何、一体何をしてるの!?
アルーナはできる限り目立たないようにと、体を小さくさせる。
「ほれ、これが今回の報酬だ」
「おお。色つきか!今夜は酒場で飲むぞ!」
「じいさん、サンキューな!」
「騒ぎすぎるなよ」
何かの取引が行われると、また持ち上げられる。家の中に入れられているようだ。
「さてと始めるか」
何がですか!とアルーナは心の中で叫んだ。
あれやこれやとおじいさんが作業をしていると、上下も分からない位グルグルと回される。
目が回るとアルーナがぐったりしていると、フワメリー達と布の中にぎゅうぎゅうと詰められたと思うと、何処かの棚のような場所に置かれた。
それでも大人しくしていると、おじいさんが何処かに行く音がした。
良い香りも漂ってくる。
辺りの気配をたどっても誰かいる気配は無さそうだ。
擬態を解かずに、意識だけ囚われている場所から飛ばす。アルラウネの得意な分身だ。
久しぶりの術に目線が違いすぎてたたらを踏む。
普段は大人の形を取っているのに、この姿だと、急に身長が縮んで幼女になるのだ。
棚の丁度届かない位置に、本体ともいえるアルラウネの種が入ったものが置かれていた。
アルラウネは基本的に植物の魔物。動いたり話したり、ヒト型植物型と色々な形へ変化させられるが、基本は一つの種子だ。
大切な種子から離れて遠くには行けない。
「これって・・・」
アルーナは驚いた。
ポカンと口を開けて固まっている。
目の前に置かれていたのは、可愛らしいウサギのぬいぐるみだった。
目がとても綺麗。ルビーの宝石があしらわれていた。
服もシルクが使われていて、光沢がある。
森に住んでいたアルーナにとっては、具体的な金額は分からないが、人間が着ていた服よりも上等な布でできているのは分かる。
いつの間にかアルーナは、とんでもなく高級な人形の中に入っていた。




