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アルラウネと魔王様  作者: 化猫


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16/17

16、アルラウネと領地訪問


 仕事から部屋に戻ると、アイビーがコンコンとバルコニーの窓を叩いてくる。

 魔王様が戻ってくるまでのいつもの流れだ。

 魔王様が戻ってこれば、いつもの姦しさが嘘のような淑女蔦になる。


『で、進展はあったか!』

「何が」

『もちろん、魔王様とよ!あんな意味深な会話をしておいてもう半月だ!は・ん・つ・き!そろそろ進展しているだろ!』

「してないよ」

「嘘言うな!」


 アイビーがバシバシとバルコニーの床を叩いている。

 アイビーは魔王様との会話以来、断ったら赦さないわよオーラを漂わせてくる。


 なんせアイビーにとっては、スーパーイケメン・美丈夫・男前・有能男子・スパダリ・・・なんとからしい。

 最後の方は忘れたけど、魔王様をふるなんてあり得ないからと叫んでいた。


 それ以来、毎日進展はないのかと聞いてくる。


 正直鬱陶しい。なんせ本当に話せるようなことは何もない。

 魔王様が考える時間が必要だと言って、酒を飲みながら、ジッと見つめてくることが増えただけだ。

 それは魔王様の自室で行われるので、アイビーも当然知っている。


「何もないよ」

『クッ。意外とピュアピュアボーイな魔王様も可愛すぎる!』

 蔦がビチンっと床で跳ねた。


「キモい」

『そんなこと言うな!』


 アルーナは、一口果物を口に入れる。

 空は満月になっていた。日光浴が一番だけど、月光浴も良いな。


「あっ、そういえばハウウェル様が来たよ」

『あの魔王様より冴えない魔族か』


 顰蹙を買いそうな言い方。

 絶対にハウウェル様の耳には入れられない。ハウウェル様も美しい魔族には違い無いのだ。ただ、魔王様がずば抜けているというだけ。


『何だ。あの男に限ってはないとは思うが、嫌みでも言われたか?』

「それは全然、いろんな意味で応援された」

『なにそれ意味が分からないな』


 応援というか逃げるなよっていう念押しに近いかもだけど。

 魔王様が帰ってくるまで、夜中のお喋りは続いた。



 果樹園に向かうとハウウェル様が立っていた。真っ赤な実を手に取って見ている。


 つい先日どういうわけか突然変異をして、赤くなった実だ。

 樹に聞こうとすれば、疲れはてているのかテレパシーが通じなかった。

 それを捥いで手に取っているということは、ハウウェル様に差し上げたかったのだろうか。

 レノス様が取ろうとしたら、葉っぱを降らされていた。


 あとでどういう効果のものか聞いておかないと。


 ハウウェル様に近寄って挨拶をする。

 挨拶をするなり、書類を渡された。

 中身にざっと目を通す。

 想定外な内容にハウウェル様を見上げた。


「領地の訪問ですか?」

「ええ、そちらは細かい行程表、こちら正式な依頼書です」


 ハウウェル様から羊皮紙を渡された。

 中身を見れば、領地に向かう魔王様の世話係として小姓の仕事を任せる任命書だった。


 昨日魔王様が部屋でボヤいていた件だろう。


「決定事項ですか?」

「はい、決定事項です。こちらに魔王様の紋章印がございますでしょう」


 ハウウェル様が指差す場所には魔王様の魔力が籠った紋章が輝いている。

 これは嫌だは言えないやつだ。


「ここの管理は如何いたしましょう」

「そこはですね。レノス殿」

「おや、また来ていたのかい」

「ええ、お忙しい中、失礼致します。

一つお聞きしたいのですが、アルーナ様がここを抜けて保つのはどれくらいでしょう」


 ヒュンッ!

 その瞬間、樹の奥から硬い実がハウウェル様に向かって飛んできた。

 剛速球の小さな実をハウウェル様は難なく避けたが、当たれば怪我をする。


 アルーナは、地面にのめり込んだ実を見て、ツバを飲んだ。


 三人とも地面に突き刺さった実に注目している。一番早く復活したのは、レノス様だ。


「素晴らしい!」


 レノス様が目を輝かせながら、今の流れを見て、早速樹の中に戻っていこうとする。

 今にも樹に抱きつきに行きそうな勢いだ。


 これを感動できるのすごいな。絶対殺意が籠ってたと思うけど。レノス様の植物大好きっぷりはいつか自分の身を滅ぼしそうだ。


 ハウウェル様がすかさずレノス様の首根っこを捕まえて、また投げつけられた実を避けさせる。


 レノス様避けられるくせに、今豪速球の実を受けようとしていなかった?


 しかもさっきよりも一段と速くなっている気がする。


 そのままハウウェル様は、樹が聞こえないであろう場所までレノス様を引きずっていった。それにすら、抵抗してハウウェル様の手をなんとか剥がそうと抵抗していた。


 アルーナはそんなレノス様にドン引きしたまま、後をついて行く。


 レノス様が植物へのぶっ飛んだ愛に馴れるのはまだ掛かりそうだな。

 攻撃されないと分かっていても、あの中に飛び込む勇気はアルーナにはなかった。


 レノス様はハウウェル様の抵抗を諦めたところで、ようやく話ができる。


「そうだな。まぁしっかりと手引書を書いてもらって、保って二週間ぐらいだろう」

「二週間ですか。想定より短いですね。なるほど・・・まぁ今回の訪問には問題ないでしょう」

「私は彼らの様々な姿が見れて楽しいが、ストレスを与えすぎるのもよくないからね」

「アルーナ様とレノス殿は、二週間に引き継ぎができるように準備をしてください」

「承知しました」


 ハウウェル様も準備があるということで戻っていった。


「早速取り掛かるか」


 ・・・レノス様の目の輝きが、準備では無い方向に向いている気がする。

 ちょっと話が出るだけでも、樹達がああだったから話し方には工夫をしないとね。

 骨が折れる説得になりそうだ。


 無事調整を終えたアルーナは、魔王様の領地訪問に追従することになった。




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